2019年 フィジーの労働事情

2019年6月27日 講演録

 国際労働財団(JILAF)では、将来を嘱望される各国(フィジー、インド、ネパール、フィリッピン、スリランカ)若手労働組合活動家を招へいし、それぞれの国の労働運動に活かしてもらう観点から、日本の労働事情や建設的な労使関係などを学んでもらった。そのプログラムの一環として、各国の労働を取り巻く現状や課題などの共有化を図るため、6月27日(木)に「労働事情を聴く会」を開催した。
 以下は、その報告の特徴的概要をまとめたものである。

基本情報

 フィジーは、オーストラリアの東側、南太平洋上に浮かぶ300以上の島からなる島国である。その国土は1万8千平方キロ(日本の四国とほぼ同じ広さ)で、日本からの距離は直線で7千キロ強、直行便で約9時間のところに位置している。人口はおよそ90万人、この内6割弱がフィジー系、4割弱がインド系の人たちで構成されている。政治体制は共和制(1987年立憲君主制から移行、一院制)である。1874年より英国の植民地となっていたが1970年独立、2011年フィジー共和国と改称した(それまではフィジー諸島共和国)。経済成長率(実質)だが、2011年以降の成長率は2%~5%台で推移し、2017年3.8%(世界銀行)と安定的である。主要な産業は、観光、砂糖、衣料である。その最大産業は観光で、オセアニア有数のリゾート地として渡航者がフィジー人口に迫る勢いである。砂糖産業は英国の植民地時代からのものであり、フィジー経済を支えてきたが、近年その機械設備の老朽化が課題となっている。物価動向(消費者物価指数の前年からの上昇率)は、IMFデータによれば、2015年1.38%だったが、以降は3~4%の推移となっている。(世銀データでは2017年物価上昇率3.0%)今回参加のフィジー労働組合会議(FTUC)はフィジーにおける主要なナショナルセンターである。組織数は約3万人(2018年3月)、1産業別組織、20加盟組合(2018年4月)から構成されており、ホテル産業・観光業、政府職員、工業商業、製糖、鉱業など幅広い業種をカバーしている。しかし、組合組織率はかなり低い状況である。
(注)基本情報の概ねは外務省情報。

フィジー労働組合会議(FTUC)
ラマン ナイル

自治体労働者連盟 書記長

 

労働を取り巻く現状と課題

1.抑圧される労働者の権利行使-カギ握る労働者の団結

 フィジー政府は反組合・反労働者という姿勢をとっており、労働者にとっては自分たちの権利行使が困難な抑圧された状況におかれている。この解決には労働者自身が団結によって力をつけることが不可欠である。そのため組合への認知と信任を高めることに注力しなければならない。まず抑圧の実相のいくつかをみておきたい。

(1)改善に消極的な全国一律最低賃金

 政府の姿勢は使用者の運営にも反映される。総じて最低賃金や雇用条件の取り扱いに消極的な対応となって現われている。FTUC加盟組合は、現状の最低賃金・時給2.68ドルでは家族を養うに不十分として、その水準を4ドルに引き上げるようFTUCのリードのもと政府に改善を求めている。また、政労使による第三者最低賃金協議会を設置し、地区の実情に合わせ地区ごとのレートを上げる取り組みも展開している。しかし、政労使協議で誠実な交渉は行われてはいない。

(2)認められていないストライキ権

 ストライキに関わる無記名投票の実施を申請するも、政府機関に拒否され、さらに担当大臣にもストライキは全て違法と言明されてしまっている。多くの産業が生活に不可欠な基幹サービス=公共サービスとみなされ、スト権行使ができない状態に持ち込まれており、かつての軍事政権下で行われたことがそのまま尾を引いている。多国籍企業における労働事情も同様で、労働者が自分の権利を行使をすることが難しい状況である。これは、明らかにILOの中核的労働基準に反するものであり、各組合はFTUCの支援を得て、より自由にストライキを行うことができる権利を求め闘っている。

(3)強制される個別契約

 政府は、公務員を対象とする団体交渉権および団体協約を認めず、労働者の唯一の交渉代表権者としての組合の権能・権限の完全無視を決め込んでいる。その上で、公務員に対して一本釣りをするような個別契約の強制を謀っている。こうした流れは次第に民間セクターにも忍び寄っており、その黒い影を除くため、使用者との雇用契約が団体契約であるとの認知を求めなければならない。各組合はFTUCの支援の下、雇用の短期契約を、例えば3カ月から1年に延

2.履行されない労働法改革-ナショナルセンター・組合に委ねられた改革への道筋

 労働者を取り巻く環境の不安定さの元凶は、結局のところ現状の労働法が機能していないところにある。そうした認識から、FTUCと使用者連盟とが協力して労働法制の見直し・改革をしようとした共同実施報告書および覚書があるのだが、政府はその約束を守ろうとしていない。その結果、2011年9月に基幹国営産業令(ENI)が出され、暫定軍事政権によって基幹サービス(Essential Services)に一部の産業が分類され、雇用関連での組合側の権利が機能しなくなってしまっているまま今日に至っている。(前項(2)に触れた通り)団体協約を結び賃上げ交渉するという当たり前のことが出来えていない。例えば、地方議会は独自の決定権を有しているはずだが、雇用に関する問題では当該の自治体ではなく国の自治省がいろいろ介入しており、自ら決めることが出来なくなっている。こうした一部産業の基幹サービスへの分類はやめるべきであり、政府の介入もとめられるべきである。実際、地方自治選挙が行われた最後が2005年で、以降今日にまで至っている。もちろん、当時から政府に対し地方選挙を行い各自治体がそれぞれの権利を政府の介入なく行使できる状態に戻すべきと主張してきた。改めてこうした考えを明らかにし、そのために必要な労働法の改革を解決の道筋として急がせねばならない。その役割がFTUCを筆頭とする組合に委ねられている。