2018年 バーレーンの労働事情

2018年6月7日講演録

バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)
ジャファル ハリール エブラヒン イーサ
(Mr. Jaafar Khalil Ebrahim Isa)

副事務局長(広報担当)

フセイン アブドゥラ アブドゥルナビ アーメッド
(Mr.Husain Abdulla Abdulnabi Ahmed)

Foulathグループ労働組合(鉄鋼関係)会長

 

1.基本情報

 面積は769.8平方キロで東京都のおよそ3分の1の島国である。人口は140万人強、この内バーレーン人は約半数であり、残りの半数は外国人(労働者)で占められている。また、7割程度がアラブ人である。政治体制は立憲君主制をとっている。経済成長率(実質)は、2015年2.86%、2016年3.22%、2017年の見通しが3.15%となっている。(IMFデータ)失業率は、2015年3.36%、2016年3.70%、2017年の見通しで3.65%となっている。(IMFデータ)その経済構造は、石油精製・アルミ精錬などの工業、中東の金融センター、観光などによっている。ナショナルセンターはバーレーン労働組合総連盟(GFBTU)で約9000人を束ねている。

2.労働を取り巻く課題と紛争解決への挑戦

(1)直面する課題は賃金不払いや権利の侵害-根底にある失業率の上昇

 バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)が直面している課題は、1つには賃金の不払いや数カ月にわたる遅延であり、2つには一部企業における交渉の停滞であり、3つには社会保険評議会における労働者代表の不在であり、4つには労働者の獲得した成果に対する侵害、といった点が挙げられる。しかし、こうした課題の根底に上昇する失業率が潜んでいることを見逃してはならない。
 最近の研究によれば、バーレーンにおける失業率の実態は8%(2016年)程度とみられ、これは国のデータの実に倍近くの数値となっている。しかも失業者に占める青年層(19~25歳)の割合が28%となっており、深刻な事態である。特に医療分野では、専門の教育機関を出た医師や看護師が、その専門分野に就職できないといった状況がみられ、若年・高学歴の失業率が特徴的な問題として浮き彫りとなっている。もう1つ問題があり、それは、外国人労働者の方がバーレーン人労働者よりも多く、しかも賃金の高い高度な仕事がそうした外国人に占められているということである。これは政策上の優遇措置(柔軟な働き方を認めるブルーカードの取得で)であり、バーレ―ン人にとっては自国政府からのあからさまな圧力であり看過できない事態なのである。
 また、賃金不払い等に関する訴え件数も相当件数に上っていることが明らかとなっている。ジャミール・ホマインダー労働・社会開発相によれば、賃金の不払い等で同省が昨年受理した訴え件数は1769件であり、そのうち1032件は同省の監督下で経営側が賃金を支払い解決に至ったが、経営側の法律違反と記録された上、解決できず起訴に及んだ件数が737件に上ったと報じられた。

(2)紛争実例-その原因と途中経過

①ボーナス支払い拒否と年次昇給の凍結が紛争の発端に
 ここで今日まで続いている紛争の実例をみてみる。2014年頃までは労使関係は非常に良好であったところが、経営陣の交代とともにこれまでの労使成果をないがしろにする行動に出たことから紛争へと発展したものである。明らかなことは、新工場建設のための550億ディナールにのぼる銀行からの借金で財政難に陥ったという理由が、口実に使われたということである。
 労使対立の直接の原因は、会社側が年次賞与(ボーナス)の支払いを拒否したことと、年次昇給の凍結を打ち出したことに端を発している。当然ながら、数回の交渉の後、組合側は会社の基本規則や双方の交渉で成立した合意等に従い抗議を行っている。しかし、労使解決をみることができず、解決は紛争評議会に付託された。組合側の要求内容は、〇2013~15年下半期分のボーナス+1%、〇社内規則に基づき年次昇給をゼロから5%に、〇賃金合計に追加賃金を算出、というものであった。

②紛争をこじらせた新経営陣-厳しい攻防が続いた途中経過
 紛争に火をつけこじらせていったのは、先に触れた通り、非常に権威主義的な新しい経営陣によるものであった。経営側は、労使間で署名された団体協約の不遵守、労使間で署名された議事録や2者間協定の不遵守、労働法違反、基本規則や社内の取り決めに対する違反、労働側が獲得した成果や権利に対する侵害の継続など、解決を目指すより紛争発展を願うかの状況となった。
 もっとも、紛争前段の2014年交渉段階では、相互理解と真剣な姿勢が支配的であり、合意内容への全面的なコミットメントや要求に対する応答と対立への対策など、解決を志向する姿勢がみられた。しかし、時が進み新しい経営陣による対応は、交渉における合意事項への違反、交渉の議事録に記載された合意事項の改変、議事録への署名忌避、交渉における侮蔑的言葉遣いなど、様変わりの状況となった。具体的には、あらゆるライセンスの停止、年次昇給の停止、労働者基金の停止(会社割り当て分)、対立をあおるような第二組合導入等、厳しい対応となっていった。
 こうした中、組合側は、抗議集会の実施、ジャーナリズムやSNSの利用、声明の発表、職場の安全・衛生への異議申し立て、新たな要求の提示、財政・戦略に関わる経営側の決定への異議申し立てなどで対抗を図り、厳しい攻防が行われた。

(3)紛争実例-解決への道筋とナショナルセンターGFBTUの役割

①粘り強い話し合い努力が解決への道筋
 組合側は理不尽とも思える厳しい対応にもめげず、粘り強い話し合い努力の果てに解決を図るとの観点で、その道筋をつけるためあらゆるチャネルへの働きかけに全力を挙げた。まず、労使間の交渉を継続することを大前提に、それに加えて、労働省と組合側の二者間交渉、会長との面会、会社の理事会(株主各国代表)との会合、労働省と経営側との二者間交渉、組合側・GFBTU・経営側・労働省による四者間交渉、内閣への依拠、代議院の一部議員への協力要請、労働省紛争解決評議会への依拠、労働裁判所への依拠などの解決手段を講じた。

②紛争解決への環境づくりに役割を発揮したGFBTU
 ナショナルセンターと紛争当該組合との連携は欠かせない。紛争の現状は未だ決着をみていないが、「労使間の交渉の継続」、「経営側は労働者の権利を認める」、「暫定的な幾つかの解決策の提示」といったレベルには到達している。この間GFBTUは、書記長談話によるメディアを通じての立場表明、労働相との会見、内閣への問題提起、四者間交渉への出席、経営側との連絡を取り合って対立打開の仲介者として交渉など、解決に向けた環境作りに大いなる役割発揮ができたものと思われる。