2021年 コロンビアの労働事情

2021年9月24日 報告

 国際労働財団(JILAF)では、来日交流が新型コロナウイルス禍で困難なことから、「オンラインプログラム」により、日本の労働事情や建設的な労使関係について学んでもらう2年目の取り組みを行っている。中南米チームとの交流については、スペイン語部(アルゼンチン、コロンビア、チリ、パラグアイ、メキシコ)、ポルトガル語部(ブラジル)に分けての対応となった。
 以下は、参加国・参加者から提出されたそれぞれの労働事情報告の特徴的概要をまとめたものである。

基本情報

 コロンビアは南米の北西部に位置し、その広さは約114万平方キロ(日本の約3倍)、人口は約5034万人である。その75%が混血であり、他にヨーロッパ系20%、アフリカ系4%、先住民1%で構成されており、多様な文化・民族の国となっている。言語はスペイン語、宗教はカトリックである。政治体制は立憲共和制であるが、1980年代90年代には麻薬密売をめぐる戦争を経験し、当時世界で最も危険な国の一つとなっていた。しかし、21世紀に入り、生活面での様々な改善が図られるとともに、左翼ゲリラ勢力コロンビア革命軍などとの和平交渉などを経ながら、他の南米諸国と異なり、順調な成長を続け今日に至っている。主要産業は、農業でコーヒー(生産規模世界第4位)、バナナ、切り花(カーネーション及びバラの生産規模は世界最大)、その他にサトウキビ、ジャガイモなどがあり、鉱業では石油、石炭(南米最大の埋蔵量)、フェロニッケル、金、エメラルド(産出規模世界最大)などがある。コロンビアの経済規模(GDP)は2715億ドル(2020年)、実質GDPは▲6.8%(2020年-新型コロナウイルスの影響もあり大幅下落となっているが、次年度は反転回復の見通し)、物価上昇率は1.61%(2020年)となっている。しかし、失業率は15.9%(2020年)と高く、なお貧富の格差の大きな現状が続いている(国民の3分の1が貧困層)。
 労働者を束ねる主なナショナルセンターは約86万人の組合員を擁する労働者統一連合(CTU)と、25万人を擁するコロンビア労働組合連盟(CTC)である。

  • *主な概要は外務省情報による。その他にジェトロ情報、ウィキペディア、JILAF基本情報、報告者情報などを参考にした。

◇現場からの報告

[労働事情全般]COVID19パンデミックがもたらした不安定な労働環境

 パンデミックの影響は、何千もの中小企業の閉鎖による大量の失業者を生み出したことである。特に若者や女性に打撃を与え、雇用機会の欠如や賃金の格差など不安定な環境に追いやっている。しかし、2020年6月の失業率が19.8%(DANEリポート)であったのに、今年同月のそれは14.4%とパンデミック開始以来の最低水準であり、一見すると改善しているかに見える。だがこれは、失業者が非公式に働く労働者に転化したに過ぎない。こうした労働者は労働人口の51%にも達すると見られる。この流れを助長したのは政府の政令1174号に起因している。政令の目的は、「最低賃金以下で働いたり、不利な契約条件で働くことにより、健康、年金、労働災害などの社会的保護を雇用主から受けられない従業員に社会的保護を提供する」であるが、多くの雇用主がこれを逆手にとり、人件費節約のため、正規雇用者を解雇し、時間単位労働やサービス労働を強いる不安定雇用契約に切り替え始めたからというのが、そのからくりである。また、2019年9月に承認されたCircular049では、病気や障害を抱えた人の契約を雇用主側が解除できるなどとなっている。かくして、非正規労働者の割合が非常に高まり、労働者保護のセーフティ―ネットが綻び、労働者へのハラスメントが増加するなど、多くの労働者は不安定な労働環境に置かれているのが現状である。

[労使紛争の経過]紛争の発端はCircular049-全国ストライキ闘争へ

 コロンビアの労働危機は増加の一途を辿っている。先述したCircular049(障害及び/または病気〈一般的または職業由来〉の状態にある労働者の解雇)の承認が皮切りとなり、労働者は完全に保護されない状態で放置され、失業者が増加する結果となった。こうした国民の不安と不満を背景に、2019年11月中央労組をはじめとする団体(国内の3つの労働組合総連合とその他の社会組織)は、全国レベルの最大級の動員を導き、闘争が開始された。2020年3月中旬にはパンデミックが発生し、政府の無策から多くの中小企業の倒産を招き、大量の失業者が生み出された。こうした状況下で、政府の政令1174号が先述の通り8月発行されたが、その目的とは裏腹に多くの労働者を不安定な状況に追いやることになった。政府は2021年3月までに勤労中間層に深刻な損害を及ぼす税制改革を提案した。その内容は、全ての商品購入に19%の税金を課すことや、給与の5年間凍結などであり、加えて医療民営化による医療従事者の条件を不安定にする制度改革などの提案もあった。こうした全ての措置に対し、人々の不満は爆発的にふくらみ、全国ストライキ委員会の呼びかけで、2つの改革、並びに政令1174号と通達Circular049の撤回・解体を要求し、4月28日から1ヵ月以上にわたる強力なデモ(平和的な)・ナショナルストライキが行われた。しかし、強い弾圧を受け若者に死者が出るなど、恐怖状態に覆われることとなった。

[労働者の要求とその結果]税制改革や医療制度改革の阻止に成功-戦場は議会の場に

 主な要求の結果は次の通りとなった。①多くの労働者に影響を与える税制改革については、不承認を勝ち取ることが出来た。また、②民営化で人々を危険にさらし、適切な方法で医療制度の利用が困難となる医療制度改革についても、不承認となった。しかし、③全国ストライキ委員会が作成し、政府(行政)に提出した政令1174号の廃止を含む要求リストは拒否された。そこで、全国ストライキ委員会は立法府である議会(上院)に法案(10の法案-①緊急ベーシックインカム 貧困層への支援、②平和的な抗議活動に対する基本的権利の行使の保証、③2020年政令1174号廃止、④高等教育無償化、⑤零細中小企業活性化雇用創出支援、⑥2013年法律1622の改正〈若者の政治参加促進〉、⑦2021年政令569号の改正〈農業〉、⑧警察改革、⑨女性に対する暴力反対活動、⑩法律第194条及び第195条の改正〈国立病院関連〉)を提出し、戦場は議会の場へと移った。時あたかも選挙戦が始まろうとしており、多くの議員が悪いイメージを持たれないために、こうした社会性のある要求内容を承認してくれることを期待している。

[労組のCOVID19対策]保健省のバイオセキュリティプロトコルの遵守に尽きる

 COVID19対策は保健省のバイオセキュリティプロトコルの遵守に尽きる。組織としては、フェイスマスク(鼻、口、あごを覆う)の常備、抗菌ジェルの使用、人込みを避けた社会的距離の確保、恒常的な手洗いなどの徹底を図っている。また、各種活動にあたっては、公共の場ではマスクを着用し、10人以上の集まりには参加しない、可能であればバーチャルな会議を行う、アルコールを携帯し常に手を洗う、人から1.5メートル以上離れる、予防接種計画を実行する、などを行っている。