2018年 コロンビアの労働事情

2018年7月19日 講演録

コロンビア労働組合連盟(CTC)
ラファエル エンリケ エレラ ロドリゲス(Mr. Rafael Enrique Herrera Rodriguez)

CTCボゴタ州支部 副会長
モニカ ザモラ モンテス(Ms. Monica Zamora Montes)
コロンビア銀行労働者組合 男女平等局長

 

1.基本情報

 面積は113.9万平方キロ、日本の約3倍である。人口は約4,865万人、政治体制は立憲共和制をとっている。
 経済成長率(実質)は、2014年が4.39%、2015年が3.05%、2016年が2.04%、2017年は1.77%(IMF)となっており、成長が続いている。主要産業は繊維、食品加工、石油、衣料品、飲料、化学品、セメントで、コーヒーについては有数の生産国(世界第4位)である。輸出品目は、原油・石油製品 51.4%、石炭 12.9%、コーヒー 3.2%で、輸出相手国としてはアメリカが 36.2%を占めている。物価上昇率は、2014年が2.91%。2015年が5.00%、2016年が7.51%、2017年は4.31%(IMF)で、高めのインフレ率が続いている。また、一人当たりGDP(名目)は2014年が約7,938米ドル、2015年が約6,048米ドル、2016年が約5,744米ドル、2017年は6,273米ドル(IMF)である。
 失業率は2014年が8.51%、2015年が8.36%、2016年が8.62%(以上、IMF)、2017年は9.4%(コロンビア国家統計庁)と、高い失業率が続いている。最低賃金は、月額で2016年が689,455ペソ(2018年7月18日現在の換算レート「1米ドル=2,891ペソ」で換算した場合、約238.5米ドル)、2017年が737,717ペソ(同、約255.2米ドル)、2018年が781,242ペソ(同、270.2米ドル)である(注:数字は報告者による)。
 2018年6月17日に行われた大統領選挙の決選投票の結果、民主中道党のイバン・ドゥケ氏が得票率53.98%で当選した。ドゥケ氏は41歳、米州開発銀行(IDB)や国連での職歴のほか、ウリベ政権(2002~2010年)で同大統領の国際顧問を務めた。選挙勝利演説でドゥケ氏は、国の統一に全力をささげ、汚職撲滅、安全保障、和平問題に力を入れると語った。特に和平については、サントス現政権と国内最大の左翼ゲリラ組織FARCが2016年に締結した和平合意を見直す姿勢を強調した。また、選挙期間中にドゥケ氏は、石油や石炭に頼った経済開発、大企業向けの免税などを提案していた。大統領就任式は8月7日。
 労働者を束ねる主なナショナルセンターは約86万人の組合員を擁する労働者統一連合(CUT)と、25万人を擁するコロンビア労働組合連盟(CTC)である。

2.労働を取り巻く現状と課題

(1)低い労働組合組織率

 組織率が4%台で非常に低い。その背景には、労働組合活動家であることが高いリスクを負う、ということがある。1928年12月にバナナ農園で8時間労働などを求めてスト中の労働者2,500人が撃ち殺されるという虐殺事件が起きたが、こうした状況が今も続いている。1984年から2018年までの間に2,800人の労働組合リーダーが殺され、1,296人のリーダーが職を失っている。軍と協力関係にある民兵組織が労働組合員を反政府ゲリラのシンパや予備隊と見なし攻撃の対象にしてきたと言われているが、組合対策のために多国籍企業がそうした民兵組織に資金提供をしていたという事例も判明している。そうした背景のもと、組合リーダーはたびたび殺害の脅迫に直面し、労使紛争中に、あるいは賃金・労働条件改善の運動中に殺されるということが起きている。
 現在、組織率拡大のために様々なキャンペーンを実施している。特に女性と若者の組合加盟に力を入れており、インフォーマル労働者や派遣労働者も対象とした組合加盟キャンペーンを行っている。教育の実施に際しては、組合員のみならず非組合員をも対象として実施し、組合に入るメリットの理解促進に努めている。
 また、組合幹部養成にも力を入れており、経済、財政、政治を含む総合的な教育を通じて、21世紀の組合運動の課題に対処できる新リーダーの育成に努めている。

(2)請負労働や派遣労働の増大

 雇用者全体に占める請負・派遣労働者の割合が高まっている。とりわけ、多国籍企業では、組合員である従業員が解雇され派遣労働者によって代替される事態が起きている。こうした労働者は正規労働者に比べ保障が少ないだけでなく、組合加入期間が短いないしは加入しないという傾向が強く労使関係の側面からも問題である。
 なお、コロンビアでは非正規雇用労働者の比率が高く、中南米諸国の中でも相当に高いことがILOからも指摘されている。国家統計局の数字によれば2012年現在の主要13都市における雇用形態別調査の結果は、51.2%が非正規雇用労働者であった。また、2017年のロサリオ大学の調査からはインフォーマル労働の割合が65%となっていることが分かっている。背景には高い失業率があり、失業後に就ける職業はほぼインフォーマル労働しか残っておらず、社会に生産年齢人口をカバーできるだけの雇用を生む力がないことが問題となっている。さらには、教育や訓練の不足や、年齢や性別が正規雇用を得るための障壁となっている。

(3)労働法規の実効性が不十分

 労働法規は広範であり様々な行為に適用されるものとなっているが、その実効性には問題がある。背景としては、労使紛争における訴訟事案が山積みになっており、法違反が処罰されない状況が生まれていることが挙げられる。また、多国籍企業では組合員の解雇を含む反組合的な行動が多くみられ、労使紛争が少なくない。