2018年 チリの労働事情

2018年7月19日 講演録

チリ中央統一労働組合(CUT)
カミラ マカレナ ベルガラ ヴィルシェス
(Ms. Camila Macarena Vergara Vilchez)

労働安全衛生研究所労働組合 委員長

 

1.基本情報

 面積は75.6万平方キロ、日本の約2倍である。人口は約1,791万人、政治体制は立憲共和制をとっている。
 経済成長率(実質)は、長期にわたる高度成長時代を経てここ数年は1~2%台で推移しており、2014年が1.77%、2015年が2.30%、2016年が1.27%、2017年は1.47%(IMF)である。主要産業は銅、リチウム、食品、水産加工、鉄鋼、木材で、最大の産業は鉱業である。輸出品目に銅・鉄が占める割合は約55%にもなっている。とりわけ、銅については世界最大の産出国であるとともに、埋蔵量でも世界トップで、輸出量が多い銅がチリの財政に及ぼす影響は非常に大きく、銅の価格はチリの経済全体を左右するといえる。物価上昇率は、2014年が4.39%、2015年が4.35%、2016年が3.79%、2017年は2.18%(IMF)となった。また、一人当たりGDP(名目)は、2014年が約14,623米ドル、2015年が約13,552米ドル、2016年が約13,743米ドル、2017年は約15,070米ドル(推計)(IMF)である。
 失業率は2014年が6.32%、2015年が6.24%、2016年が6.49%(以上IMF)、2017年が6.6%(チリ中央銀行)である。最低賃金は、月額で2015年が241,000ペソ(2018年6月30日現在の換算レート「1米ドル=650ペソ」で換算した場合、約371米ドル)、2016年が264,000ペソ(同、約406米ドル)である。
 2017年12月17日に実施された大統領選挙では、決選投票の結果セバスティアン・ピニェラ元大統領が54.58%の得票率で、2010年以来2回目の当選を果たした。任期は2018年3月11日から4年間で、公約に掲げられたのは、法人税率の引き下げや大規模なインフラ投資計画などである。
 労働者を束ねる最大のナショナルセンターはチリ中央統一労働組合(CUT)で、約70万人の組合員を擁している。

2.労働を取り巻く現状と課題

(1)労働を取り巻く現状 - 労働基本権強化などを改正の柱とする改正労働法発効

 2017年4月1日、改正労働法が発効した。ILO条約87号「結社の自由および団結権保護」、98号「団結権および団体交渉権」と整合性を持たせるために、団体交渉の対象となる事項や参加者の範囲を拡大した。さらには、団体交渉合意内容の非組合員への適用についての変更が加えられたほか、組合役員への女性参加の仕組みなどが定められた。概括すると、労働基本権の強化に重点を置いた法改正となった。
 ピニェラ新大統領は2018年6月1日に行った国会での教書演説で、家族、教育、公共事業などの分野での改革を発表し、自営業や中小企業労働者の年金や社会保障制度の近代化、女性や高齢者に対する健康保険制度の平等化、年金制度改革、税制の簡素化などについても実施すると発表した。
 チリの経済は概ね順調に推移してきているが、所得格差が大きい社会となっており、労働者の大半が低い賃金水準での労働を余儀なくされている。

(2)直面する課題と解決に向けた取り組み - 鍵にぎるCUTの挑戦

①第11回CUT全国大会に向けて
  労働環境のさらなる前進に向けCUTは鍵をにぎる立場にあり、その挑戦に全力をあげなければならない。全国大会では2020年期までの闘争綱領について、次の3点が提起される。

ア)組合の自己改革-組合活動の量的、質的向上:結束と行動の強化
イ)ディーセントワークのための組合活動アジェンダ:集団および個人の権利、安全と生活防衛の権利
ウ)チリにおける新たな開発モデルとより多くの社会的権利:新たな年金制度、公的医療制度の強化、持続可能な発展に向けた新しいモデル、新憲法

 とりわけ、イ)との関係では、全国レベルの三者構成の社会対話の場として設置された上級労働審議会が発展し部門別、地域別の審議会の設立につながっていくことを期待している。ディーセントワークの確立に向けては労働時間の見直しが最重要課題であり、さらには貧困を克服できるような最低賃金を実現することが課題である。労働安全衛生に関しては関連するILO条約(第155号、第176号)の批准が課題であり、これを政府に働きかけていく。
 また、ウ)との関係では、連帯の原則に基づく新たな公的年金制度を提案していく。それは労使が同等に保険料を支払う制度で、民間の機関である「年金基金運用金融機関(AFP)」については廃止する必要がある。公的医療制度の強化に向けては保健事務局や保健審議会の設立を求めている。

②所得格差の是正に向けて
 多くの労働者が低い賃金水準で働くことを余儀なくされており、労働者の50%は最低賃金に近い35万ペソ程度の賃金で働いている。貧困ラインから抜け出すことのできる最低賃金を達成することが課題であるが、様々複雑な背景のもとでそれを達成することは難しくなっている。従って、CUTとしては賃金政策そのものの議論を求めていくことにしている。