2018年 タイの労働事情

2018年6月28日 講演録

国際労働組合総連合タイ協議会(ITUC-TC)
エカラット スムラムジット(Mr.Aekkarat Sumruamjit)

〔タイ労働会議(LCT)〕青年委員

ニチャカーン サトゥーズ(Ms.Nitchakarn Satsuze)
〔ダイワセイコー(タイランド)労働組合(NCPE加盟)執行委員〕

サリア ペクピラ(Ms.Sariya Pecthpila)
〔インターナショナルゴム部品労働組合(TTUC加盟)執行委員〕

アネック マイプロン(Mr.Anec Maiprom)
〔国営企業労働連盟(SERC)青年委員〕

タイ産業労働組合総連合(CILT)
ガーンピチャヤ タングサンスワン(Ms.Ganpichaya Tangsangsuwan)

〔極洋タイ労働者組合 女性委員会委員〕

タイ自動車労働組合会議(ALCT)
シラウット ブランリュウ

〔サイアムデンソー&サイアムキョーサン労働組合 委員長〕

 

1. タイの労働情勢

  2016年度 2017年度 2018年度(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
10.2%
(国家経済社会
開発委員会事務所)
9.4%
(国家経済社会
開発委員会事務所)
7.8%
(国家経済社会
開発委員会事務所)
物価上昇率(%)
(出典元)
△0.9%
(同上)
0.7%
(同上)
0.8~1.0%
(同上)
最低賃金
〔通貨:バーツ〕
(出典元)
日 額:310 
時間額:9,300
(労働省)
日 額:310
時間額:9,300
(労働省)
日 額:320
時間額:9,600
(労働省)
失業率
(出典元)
1.0%
(国家統計局)
1.21%
(国家統計局)
1.2%
(国家統計局)

注)1バーツ=約0.03ドル(2018年6月20日現在)

2.労働事情報告

A.【国際労働組合総連合タイ協議会(ITUC-TC)】

(報告1)〔タイ労働会議(LCT)〕

(1)労働組合が直面している課題
 タイの労働組合全体の状況に関し、活動を展開するうえでの根本的な問題として、組合員(役員も含む)の労働組合に関する基礎知識の低さが指摘できる。これは、結成当初から準備不足の面があり、人材、予算、研修なども十分ではなかったと認識している。
 上記の根本的な問題にも起因して、直面している課題として、組合の組織化にあたって障害となる問題、方針や活動の企画策定にあたって障害となる問題、予算および財政問題、組合員の活動への関与(協力)の問題、組合研修に関する問題、組合活動に関する介入や妨害の問題、などが指摘できる。

(2)タイ労働会議(LTC)と取り組み
 タイ労働会議(LCT)は、全国レベルで結成されたタイで初めてのナショナルセンターである。特定の産業ごとには分かれていない。結成以来、労働者と社会の利益のために闘ってきた長い歴史がある。労働者が良い生活をおくる機会と期待が持てるよう組合の安定を築き、団結を促進しながら運動を強化している。
 具体的には、組合員教育の面、労働法の適用の面、就労の安定の面、外国人労働者の雇用の面、社会経済や政治の面、などの分野についてそれぞれの目的を達成するために取り組みを推進している。

(報告2)〔ダイワセイコー・タイランド労働組合(NCPE加盟)〕

(1)労働組合が直面している課題
所属組合が直面している最重要課題は次の3つである。

  1. 労働組合役員、組合員の活動に関する知識や理解がまだ不十分であること。
  2. 労働組合やその関連事項に関する理解を深めるための研修やトレーニングを行うにあたっての活動予算が十分でないこと。
  3. 正規従業員と非正規従業員の福利厚生及び社会保障の面で格差が存在していること。

(2)上記課題に対する取り組み
 ①、②について、必要な研修を行うための予算に関しては、予算策定にあたっての政府の基準が明確でないことが指摘できる。また、毎年のセミナーについてどのようなテーマについて行うのか、どう評価するのかなども曖昧な面がある。労働組合の委員会などでテーマや具体内容等について明確にしていかなければならないと考えている。なお、セミナーなどへの労働者の参加の機会が十分には開かれていない。政府が労働者の権利や利益に関して正しい知識を与えていくよう労働組合としてサポートしていくことが必要だ。
 また、③に関して多国籍企業における外国人労働者は社会保障や福利厚生面で非常に不利益を被っていることが指摘できる。このことが、タイ国内の労働者にも大きな影響を及ぼしており、重要な取り組み課題となっている。

(報告3)〔インターナショナルゴム部品労働組合(TTUC加盟)〕

(1)労働組合が直面している課題
 労働組合が直面している題は次の点である。

  1. 組合員が労働組合の意義や権利、義務について理解が十分でないこと。
  2. 若い世代の労働者の労働組合活動への興味や関心が薄いこと。
  3. インフォーマルセクターの労働者が厳しい状況に置かれており、政府の保護も十分ではなく、多くの権利が侵害されていること。
  4. 外国人労働者の問題も大きな課題である。多くの法規制があるが、これが逆に困難の要因になっている面も指摘できる。国家間で覚書を結んで受け入れ等について定めても、実際には覚書が継続されにくい実情があり、密入国や不法滞在といった労働が存在している。
  5. 同一労働同一賃金に関する裁判の判決をめぐる問題についても指摘する。法では同一労働であれば同一賃金、あるいは同一福利厚生となっているが、実態はそうなっていない。裁判所に提訴しても解決までには相当時間がかかる。

(報告4)〔国営企業労働連盟(SERC)〕

(1)公務員の労働組合と活動
  国営企業で働く労働者は、タイの総人口6,800万人のわずか1.6%程度である。 その中には、地方公務員、国家公務員がおり様々な職種で働いている。
 インフォーマルセクターの人々を含め、公務員は労働組合をつくることが法で認められていない状況であった。1975年制定の労働法は、国営企業、民間企業の双方に対して同内容の定めとなっていた。ところが、1991年に発生したクーデター時に国家安全秩序委員会が国の統治を行うことになり、労働組合をつくることが出来ない状況となった。その後、2000年に国営企業向けの労働組合法が公布され、それから、現在の国営企業労働連盟(SERC)の活動が行われるようになった。
 国営企業労働連盟(SERC)は様々な活動を行っているが、最近では、派遣労働者など非正規労働者を正規職員として雇用させるよう取り組みを推進している。

B.【タイ自動車労働組合会議( ALCT)】

(1)労働組合が直面している課題
労働組合が直面している題は次の点である。

  1. 生産拠点の他国への移動に関する問題について
    タイの賃金が相対的に上昇しているため、多国籍企業が安い労働力を求めて生産拠点を隣国等に移している状況がある。例えば、繊維産業やエレクトロニクス分野で顕著にみられる。このことによって、その企業で働いていたタイの労働者の失業を招く結果になっている。
  2. 近隣諸国からの外国人労働者をめぐる問題について
    政府が近隣諸国からタイに働きに来ている外国人労働者の登録制度を作った。登録後に働けるようにするものだが、この手続きが面倒だという理由で一部の労働者が自国に帰国する現象が起き、この分野で労働力不足が発生している。
  3. 使用者と労働者間の相互理解が十分に取れていない現状について
    外資系企業の経営者側に労働組合への理解が不足している。こうした企業では、弁護士など法律家を雇って組合対策にあたる傾向がみられ、お互いの意思疎通が無いまま労使紛争に発展することが起こりがちである。

C.【タイ産業労働組合総連合(CILT)】

(1)女性委員会の活動
 現在、私はタイ産業労働組合総連合(CILT)加盟のTEAM(タイ電子・電気機器・自動車・金属労働者総連合)の女性委員会で活動している。
 TEAMの委員(役員)の女性比率は約30%である。
 女性委員会の中で議論し、目標を掲げて活動している。それは、女性の出産休暇を120日間付与し、その間の賃金保障を100%とすることであり、政府に要求を提出している。そして、国際女性デー(3月8日)、メーデー(5月1日)、ディーセントワークの日(10月7日)にデモ行進などのキャンペーン活動を行っている。
 また、女性委員会プロジェクトとして、11月25日には女性への暴力禁止デーということで取り組みを行った。