2018年フィリピンの労働事情

2018年5月24日 講演録

フィリピン労働組合会議(TUCP)

ロネール・ウセロ
SMP教職員連盟 青年委員会共同議長

 

1.労働情勢全般

 ASEANマクロ経済研究所の統計によると、フィリピンのGDPは着実に増えている。しかし、物価上昇率が非常に高いので、実質GDPは伸びていない。賃金は据え置きのまま、物価だけが大幅に上昇している。
 最低賃金は非常に低く、平均的な5人家族が暮らしていく上で十分ではない。失業率が高く、上昇傾向にあるため、最低賃金を下回る賃金で多くが働かざるを得ない状況がある。本来であれば、不当な労働状況を当局がチェックすべきであるにも関わらず、このような企業の行動をチェックしていない。
 TUCPの調査によると、労使紛争は件数上減っているが、これは決して良い傾向ではなく、労働者が解雇を恐れて口をつぐむ心理状態になっているからである。

  2016年 2017年 2018年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
6.9 6.7 6.8
(ASEANマクロ経済研究所)
物価上昇率(%)
(出典元)
1.78 3.07 3.02
(ASEANマクロ経済研究所)
最低賃金
(時間額・日額・月額)
(出典元)
☑日額(491 )
 
☑日額(512 )
 
☑日額(   )
国家賃金生産性委員会
労使紛争件数
ストライキ
(出典元)
722(2015-16年)
(   )
報告なし
(   )
低下
(TUCP)
失業率
(出典元)
4.7% 5% 増加
(フィリピン統計局)
法定労働時間
(出典元)
8時間/日 40/48時間/週 時間外/割増率 休日/割増率

通貨名:ペソ  52.47ペソ=約1ドル(2018年5月14日現在)

2.労働法制、社会保障の特徴

 フィリピンには労働法上、労使関係を定める法律がある。現在、労働組合は雇用関係や労働条件を契約化することを求め、労働法の改正を要求している。それは、多くの使用者が6ヵ月の試用期間を繰り返す雇用方法を悪用しているからである。しかし、政府を初め国会議員の多くがこのような改正に無関心である。

3.労働組合の直面する課題

 まず、フィリピンでは労働組合や労働組合活動に対する偏見がある。それは共産主義の一貫として労働組合があるという思い込みである。それが。特に若年層に労働組合運動に対する人気がない原因となっている。
 若い労働者の場合、学校教育を通じて得られる技能レベルは企業の求めるレベルにない。フィリピン経済では、出稼ぎ労働が非常に大きな収入源となっているのが現状である。出稼ぎは単純労働以外の専門職にも多く、頭脳流出を生み、国内に専門職能力やノウハウが蓄積されない。

4.課題解決のための取組み

 TUCPとして、若年雇用のための技能訓練プログラム、特に失業者と自然災害被災者を中心とした労働者の所得増プログラムなどを実施している。
 継続的に係争中の訴訟の進展状況を監視し、新たなケースを裁判所に訴える文書作成を行っている。
 インフォーマル・セクターで働く人たちが政府の管轄する健康保険に入れるようになった。TUCPとして、健康保険加入を奨励する活動も行っている。