2019年 ラオスの労働事情

2019年12月12日 講演録

ラオス労働組合連盟(LFTU)
パトゥムトン ルアンヴィライ(Ms. Pathoumthong Luangvilay)

LFTU国際局副局長

フォンカム クンヴィカム(Ms. Fongkham Keungvikham)
LFTU評価・表彰局表彰課課長

サオワリー スリントン(Ms. Saovaly Soulinthong)
LFTU財政部長

フォンフェット ポンピュー(Ms. Phonephet Pongphiou)
LFTUサイニャブーリー県支部行政部副部長

カンミー チャンタヴォン(Mr. Khammy Chanthavong)
LFTU国際交流局・国際交流課係員

パイリン ラッサブ(Ms. Phaylin Ladsabouth)
LFTU労働保護局労務課副課長

 

1.ラオスの労働情勢(全般)

  2016年 2017年 2018年
実質GDP(%) 7.5 7.3 7.7
物価上昇率(%) 1.76 0.66 1.97
最低賃金(キップ) 時間額:4.326
日 額:34.615
月 額:900.000
時間額:4.326
日 額:34.615
月 額:900.000
時間額:5.228
日 額:42.307
月 額:1,100.000
労使紛争件数 115 75 196
失業率(%) 4 2 2

〔法定労働時間〕8H/日、48H/週
〔時間外割増率〕時間外割増率(平日):150~200%、休日割増率:250~350%
 注)為替レート:8.62キップ=1米ドル(2018年現在)

 詳細は上記表の通りである。
 2018年のGDPは対前年比7.7%増でこの3年間大きな変化はない。なお、2019年の予測は6.9%である。

 労使紛争の件数は、2017年は前年に比べて減少しているが、2018年は大きな増加を示している。この要因として、ラオス労働組合連盟(LFTU)が地方や会社を訪問し、2017年に改正された労働法や労働組合法について報告・説明を実施していることもあって、労働者の権利に関する認識が高まり、対使用者への労使紛争となって現れてきていることが挙げられる。
 最低賃金については2018年に大幅な引き上げを行ったが、労働者の生活はまだ苦しい状態にあり、来年はもっと引き上げるように政労使三者の構成による委員会で議論をしている。
 2018年の失業率は前年と同じ2%であるが、地方での失業率は相対的に高くなっている。LFTUは、各地方における経済の特徴を活かした経済開発や職業訓練の実施などを進めるための支援や指導を行っている。

2.ラオス労働組合連盟(LFTU)の組織と役割

 2018年10月時点の組合員数は222,280人、加盟組織数は4,624組合である。地方組織
数は145組織で、主な産業別組織として公務、電力、情報・郵便・運輸、鉱山、衣服が挙げられる。ちなみに、ラオスの産業構成は農業が65.3%と際立って高く、工業が11.4%、サービス業が20.4%となっている。なお、タイなど外国への出稼ぎ労働者は2万人を超えている状況だ。
 LFTUはラオス労働者の代表組織であり、その主な役割は、①労働者および組合員の連帯と権利・任務についての認識を高めるため科学技術や生産性向上についての広報や育成促進、②労働者の権利の保護、③社会・経済発展への寄与と政府機関の運動管理・監査である。
 なお、LFTUの組織は、次の4段階体制で運営している。
 第1段階:ラオス労働組合連盟(中央)
 第2段階:ビエンチャン首都の労働組合、県レベルや各省庁の労働組合
 第3段階:郡および保健所の労働組合、代表的な大学や国営・民間大手企業の労働組合
 第4段階:規模100人未満の小規模の企業別労働組合

3.ラオスの労働法制と社会保障制度

(1)労働法(2017年改正労働法とその取り組み)

 ラオスの労働法は国内外企業・機構の雇用主、正規・非正規雇用の全ての労働者(公務員、民間企業、国営企業で働く労働者など)が適用を受ける。以前の労働法では非正規労働者に関する定めが明記されていなかったが、2017年に労働法が改正され、非正規労働者への適用が明示された。なお、労働法の中で、政府・労働組合連盟・商工会議所それぞれの役割と権限も規定されている。また、労働に対する監督の権限・役割も規定され、この労働法に基づいてラオス労働社会福祉省の労働基準監督担当が工場などの現地視察や調査を行うなど監督・監査を強めている。こうした中、LFTUは、企業や地方に出向いて改正労働法の内容や労働者の権利、労働組合の役割などについて説明を行い、その周知に努めている。

(2)社会保障制度

 ラオスには、労働者の権利と利益の保護、必要な最低限の生活条件を保障することによって国の安定した経済発展への参加を促すことを目的とした社会保険法がある。この法は雇用主、労働者(被保険者)およびその家族、自営業者および社会保険への任意加入者が適用される。社会保険・共済制度には、健康保険、労災保険、失業保険、短期共済、長期共済などがある。なお、社会保障当局とLFTUは多くの企業や工場に対して社会保険料の拠出を強く促している。
 社会保険料の労使の拠出は次の料率(月例賃金比)となっている。
 公務員:政府8.5%、公務員8.0%
 民間企業:雇用主6.0%、労働者5.5%
 自営業者、任意加入者:任意加入者9.0%

4.非正規雇用やインフォーマルセクター労働者の現状

 民間企業および外資系企業における雇用は、概ね1~3年契約の短期雇用で、かつ、低賃金で退職金もなく、社会保険にも加入していない場合が多い。なお、非正規労働者は労働者全体の7割程度を占めていると推測される。
 また、ラオスではインフォーマルセクターで働く労働者(無契約労働者)も多い。中小企業などで職場を転々と移動している労働者、家族経営の商店などで働いている労働者、農閑期だけ働く季節的労働者などが該当する。また、地方から都会に出稼ぎに出ている労働者や外国へ出稼ぎに行っている労働者も多い。彼らは、総じて低賃金で、労働時間についても1日8時間を上回っているのが常態だが、上回った労働時間に対する支払いもない状態である。また、インフォーマル労働者の場合は労働契約が締結されておらず、社会保険に加入していないケースも殆どで、この場合病気になっても自己負担を余儀なくされることになる。

5.ナショナルセンターが直面している課題

 次のような課題認識を持っている。

  1. 民間セクターや外資系企業における労働組合の結成が重要な組織課題である。工場のマネージャーと直接会うことが極めて困難であるため、労働者の大半は労働組合の役割と責務、労働組合法や労働法の内容を知っていない場合が大半だ。
  2. ASEAN諸国や他の外国の労働者と比べても、労働者の学歴や熟練度が相対的に低い。
  3. ラオスの最低賃金は低く、日常の生活費には不十分である。また、一部の企業や工場では昨年改定された最低賃金額が守られていない。
  4. 使用者の労働法遵守状況に対する政府の監督が不十分である。

6.ラオス労働組合連盟(LFTU)の特徴的な取り組み(事例報告)

  1. 全ての労働者の権利と利益を保護するために日常的に様々な課題に取り組んでいる。例えば、労働協約の締結促進に向けた指導、労働者から寄せられた様々な苦情の処理、労働争議の仲裁、賃上げの取り組み、法律相談、最低賃金引き上げのための調査と政府への働きかけ、労働安全衛生に関するキャンペーン、国営・民間企業における労働組合結成、政府・労働組合・使用者団体による三者協議への参加、などが挙げられる。
  2. 政府に対して労働技能センターまたは職業訓練センターを国内に拡充するよう要求している。また、使用者に対しても技能を高めるための研修計画の策定と職業訓練の提供を要求している。
  3. 最低賃金が労働者の生活に適したものとなるよう、政労使による三者委員会の場を通じて政府に働きかけている。
  4. 各企業に対する労働法と最低賃金の遵守状況などの監督を強化するよう、政府に要求している。
  5. 政府に対して、地方の労働者に雇用を提供するよう要求するとともに、外国投資を増やしてより多くの雇用機会を創出するようラオス国立商工会議所(LNCCI)に求めている。