2010年 東ティモールの労働事情
東ティモール労働組合連合(TLTUC)
マリアノ ダ コスタ(Mr. Mariano Da Costa)
東ティモール一般労働組合事務局次長
1.労働事情(一般)
東ティモールは2002年5月20日に独立を回復した。2004年の国勢調査によると総人口は約100万人である。総労働人口(18~60歳)は約40万人(総人口の35%)、失業率は約30%である。約60%は農業、商業を主とする最低生活水準の仕事に従事し、フォーマル経済(公共および民間部門)に従事する者はわずか10%に過ぎない。
毎年約2万5,000~3万人の若者が労働市場に参入するが、有効求人は約2,000人にすぎないため、毎年の約4~5%の失業率はこうした新規若年失業者によるものとなっている。
現政府は、新たな「国家開発戦略計画」を策定しており、この計画では失業率の削減を最優先事項の1つに掲げている。労働大臣は国家雇用戦略に関する新たな文書も策定している。この戦略は2011年度に実施されることになっており、改善を必要とする重要な課題として以下の3つを挙げている。
- フォーマル経済に対する投資、農村分野とりわけ最低生活水準部門に対する投資。
- 若者と失業者に対する市場の需要に関連した能力開発および職業資格、職業訓練提供者の強化、技術専門学校の設立。
- 失業者への雇用機会の提供、企業・労働市場情報センター・職業訓練提供者間の連繋の構築。
また、2009年に政府は三者協議を通じてディーセントワーク国家計画を策定した。
2.労働組合が直面する課題と解決に向けた取り組み
- 社会的保護スキームの欠如。
社会的保護に関する立法の支持を求めたキャンペーンや国会など当局へのロビー活動に取り組んでいるが、現在のところまだ話し合いの段階にとどまっている。 - 労働法制および関連法の執行機関の不備と実施の不徹底。 労働法制の確立を求めて政府や使用者団体との社会的対話やキャンペーン活動の推進に取り組んできた。その結果、閣僚会議で新たな労働法規改正案が提示されている。職場での労働法規違反を防止するため、組合は労働協約の強化を推進し、職場レベルでの労働者の権利の保護を図る取り組みを行っている。
- 組合員数の低迷。 現在までにTLTUCの組合員数はほぼ8,000人に達しているが、毎月会費を納付している組合員は25%しかいない。TLTUCおよびその加盟組合の目標達成に向けた最優先事項として以下のものがある。(1)職場の実地調査と組合代表の確立を通じて、既存組合員を統一する。(2)新たな企業において新規組合員を募集し組織する。(3)組織構造を国レベル、地区レベル、企業レベルで強化する。(4)組合の教育と組合代表および活動家の研修を企業レベルでより増進する。
- 職場における紛争の増加。 全ての職場における労働者の組織化、ネットワークの構築、組合代表の確立、労働協約締結を推進する。また、教育研修を通じて労働法規、労働者の権利・責任に関する労働者の理解を高める。
- 労働組合の人的資源と財源不足。 他の労働組合、GUFs、オーストラリアのAPHEDAや日本のJILAFといった組織とのネットワークと協力関係を確立し、組合教育や、さまざまな部門における組合確立プロジェクトへの支援を得ている。
3.ナショナルセンターと政府との関係
TLTUCは政府、国会、一部の政党と良好な関係を築き、労働者の権利尊重の推進を図っている。あらゆる労働政策・労働法制の策定において、三者協議が基本的な社会的対話の方法であることが労働法典に明記されている。TLTUCは国家労働委員会、調停委員会、最低賃金委員会に労働者の代表として加わっている。政府は、このことを尊重し、全ての三者協議において労働側、使用者側との関係構築に努めてきた。4.多国籍企業の進出と労使紛争の状況
多国籍企業の活動について特に大きな問題は抱えていないが、いくつかの部門では多国籍企業が活動している
海事・石油・ガス部門:ティモール海で活動する石油会社は国内法令を無視しているうえ、主に外国人を採用し、東ティモール人労働者に雇用機会を提供していない。
建設部門:主に政府間の共同プロジェクトで中国の建設会社数社が国内で活動しているが、この活動の大部分では、地元労働者を採用せず、中国から自国の労働者を連れてきている。