2018年スリランカの労働事情

2018年5月24日 講演録

セイロン労働者会議(CWC)

ラジャラム・モーケン
青年コーディネイター

 

1.労働情勢全般

  2016年 2017年 2018年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
4.4
(中央銀行報告)
3.1
(中央銀行報告)
4.2
(中央銀行報告)
物価上昇率(%)
(出典元)
3.7
(中央銀行報告)
2.8
(中央銀行報告)
4.1
(中央銀行報告)
最低賃金
(時間額・日額・月額)
(出典元)
□時間(91)
□日額(930)
□月額(21,900)
   (賃金協定)
□時間(91)
□日額(930)
□月額(21,900)
   (賃金協定)
□時間(91)
□日額(930)
□月額(21,900)
   (賃金協定)
労使紛争件数
(出典元)
102
(労働省統計報告)
110
(労働省統計報告)
93
(労働省統計報告)
失業率
(出典元)
4.7
(中央銀行報告)
4.4
(中央銀行報告)
4.2
(中央銀行報告)
法定労働時間
(出典元)
8時間/日
(労働争議法)
56時間/週
(労働争議法)
時間外/割増率
労働規則
(労働争議法)
休日/割増率
労働規則
(労働争議法)

通貨名: スリランカルピー  157.83スリランカルピー=1ドル(2018年5月4日現在)

2.労働法制、社会保障の特徴

 労働者災害補償法の目的は、就業中に傷害を負った労働者に補償金を提供することである。就業中または雇用に関わる傷害を負った労働者や、事故にあった場合の補償をする。仕事が原因と考えられる感染症など職業病に罹患した労働者も対象となる。ただし、対象となるのは雇用関係があることが証明される場合だけである。

3.労働組合の直面する課題

 プランテーション労働者は長年農園の中の長屋で暮らしてきた。これは農園経営者が所有する住居となる。退職後はこの住宅から出なければならなくなるという問題がある。さらに、農園での労働による収入が不足しても、農園での仕事を失うことを恐れて農園外に別の仕事の機会を求めようとしない。子供の教育や病院に行くこともできない。
 農園によって管理関係が異なり、政府からのサービスについても、自分の暮らす農園の管理者の確認が必要な場合がある。住居以外にもさまざまなインフラサービスが農園管理者から与えられるものという形になっている。

4.課題解決のための労働組合、CWCの取組み

 まず、農園労働者の賃金を引き上げる必要がある。労働省、プランテーション会社レベルでの交渉が必要である。CWCは隔年でセイロン使用者連盟(EFC)と協議している。
 教育を受けた若者が雇用を見つけやすくするために、CWCは政治的影響力を通した解決策を模索している。若者に自営業に関する研修を提供し、零細企業を立ち上げるための定額月分割払いの銀行融資を行っている。

5.移民労働者

 スリランカの雇用労働力は800万人、失業者は36万人。経済状況は悪いにも関わらず、逆に労働不足となっている。特に不足しているのは、未熟練労働者で、建設業やサービス業で不足している。
 その原因の1つとして、スリランカから100万人以上が出稼ぎ労働者として中東などで働いていることがあげられる。逆に、中国、インド、ネパール、ミャンマーからの労働者がスリランカで働いている。

2018年5月24日 講演録

スリランカ全国労働組合連盟(NTUF)
スリランカ農園関連労働組合(LJEWU)

シンドゥ・カナガサバイ
執行委員

 

1.労働情勢全般

 スリランカの労働可能人口は約1,000万人、その内、実際に就業している人口は約830万人である。労働組合の組織率は、25~30%と見られている。

2.労働法制、社会保障制度の特徴

 英国統治下のセイロンで、インドからのプランテーション労働者を管理するために様々な法律が作られたのが始まりである。労働組合もインド人労働者の組合から始まった。
 スリランカでは7名集まれば労働組合を結成できる。労働組合は結成後、登録する必要がある。登録されれば、労働組合と名乗ることができ、労働裁判所や産業裁判所において労働者を代表し、政府機関と連絡をとることができる。現在登録されている組合は、管理職組合が27、従業員組合が2,118ある。公務員、軍人、刑務官は労働組合を結成できない。
 労使紛争法では、使用者は労働組合を認めなければならないと規定している。労働者の40%以上の要請により、代表者が団体交渉を行うことができる。団体交渉を求める労働組合を使用者が認めない場合は不当労働行為とみなされる。
 スリランカには単一の社会保障制度がない。政権が変わる毎に何度も統一制度の確立を目指してきたが、成功していない。現在、公務員には中央年金基金がある。国会議員も5年務めれば年金受給対象となる。民間部門と半政府部門には従業員積立基金があり、毎月の給与総額の労働者8%、使用者12%を拠出する制度で、積立残高の金利は労働者のものになる。女性50歳、男性55歳になると受給資格がある。

3.労使交渉の事例

 2016年10月に、ランカ・ジャシカ・ステートワーカーズ・ユニオン、セイロン労働者会議(CWC)、ジョイント・プランテーション・トレード・ユニオンセンターの3つの組合が22のプランテーション企業の使用者が加盟するセイロン使用者連合との間で労働協約を締結した。この協約は労働大臣によって承認され、その後政府公報に掲載された。主な内容は生産性に基づき給与を支払うとするもので、対象となる産業は紅茶とゴム栽培になる。

4.労働組合の課題

 組合の組織率が低いこと、若年層の参加が低いこと。住宅確保の問題、移民労働者の増加、基本的な労働契約の問題などがある。

2018年5月24日 講演録

スリランカ・ニダハス・セワカ・サンガマヤ(SLNSS)

サラ・ペレラ・リヤナゲ
青年関係書記

 

1.労働組合の抱える課題

 まずは、組合員の減少である。主な原因は、第三者請負、非正規化、有期雇用契約など非正規雇用が増えているためである。
 法律の不備により、女性労働者への産休付与に関して、ホワイトカラー労働者とブルーカラー労働者間で差別がある。3人目出産の時は休暇が減らされるという問題もある。
 退職年齢が公務部門は60歳、民間部門は55歳と異なっている。民間部門の定年は50年前に決められたもので、当時は64歳だった平均寿命は現在75歳まで伸びている。収入を得られる雇用がないままで20年間過ごさなければならないことになる。
 民間部門の年金基金はスリランカ中央銀行が管理している。最近、年金基金の管理に深刻な不正が発覚した。

2.課題への対応

 労働組合として、現在新しい法律を政府に提案している。それは、企業のビジネスに不可欠な仕事は正規職に相当し、これに第三者を通じて労働者を雇用することを禁じるものである。
 労働組合の運動の結果、産休に関しては、すでに法案が政府に提出され、近い将来議会に提出されると見込まれている。
 退職年齢については、使用者から強い反対があり、退職年齢の延長は若年雇用に悪影響を与えると主張している。使用者は低い退職年齢の社会経済的な影響を理解しておらず、話し合いが続いている。
 年金基金に関しては、三者構成委員会を設立し、基金の管理・監督を行うことを提案している。

3.多国籍企業の労働事情

 スリランカで活動する多国籍企業の数は多くないが、かなりの中国企業が経済の主要分野に参入している。最近、南部に建設された主要な港と国際空港が中国企業に解放された。
 公式失業率は4.2%と低くなっているが、これは実情を表していない。未熟練労働力は非常に不足しており、その結果多くの外国人労働者を受け入れるようになっている。その一方で、教育を受けたスリランカの労働者が仕事に就けない状況がある。