2018年インドの労働事情

2018年5月24日 講演録

インド労働者連盟(HMS)

アティンダー・シン・シダウ
青年委員会事務局長

 

1.労働情勢全般

 インドは世界最大の民主主義国家で、中国に次いで世界第2の人口をもつ。人口の60%が労働可能人口である。

  2016年 2017年 2018年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
6.5
(ビジネスタイムズ 2018年1月)
7.1
(ビジネスタイムズ 2018年1月)
6.7
(ビジネスタイムズ 2018年1月)
物価上昇率(%)
(出典元)
4.97%
(消費者物価指数)
4.28%
(消費者物価指数)
4.44%
(消費者物価指数)
最低賃金
(時間額・日額・月額)
(出典元)
□時間: 熟練-312
□日額: 未熟練-237
□月額: 半熟練-259
  (労働局長官)
□時間: 418
□日額: 341
□月額: 373
  (労働局長官)
□時間: 418
□日額: 332
□月額: 385
  (労働局長官)
労使紛争件数
(出典元)

(    )

(    )

(    )
失業率
(出典元)
3.46
(世界銀行)
3.43
(世界銀行)
3.4
(タイムズ・オブ・インディア2018年1月)
法定労働時間
(出典元)
8時間/日
(   )
48時間/週
(   )
時間外/割増率
(2倍)
休日/割増率
(2倍)

通貨名: ルピー(Rs)  66.66ルピー=1ドル(2018年5月4日)

2.労働組合HMSの直面する課題

 まず課題として挙げられるのが、小規模組合が乱立し、組合の財政基盤が弱く、政治化していることである。
 政府登録している5万の組合の内、ナショナルセンターに加盟している組合は16,000しかない。公務部門の労働者の90%が組織化されているのに対し、民間部門では30%にすぎない。産業構造の急速な変化にともない、雇用が組織化されたフォーマルセクターからインフォーマルセクターへ移行しつつある。総労働人口の約90%を占めるインフォーマルセクターは労働組合の対象範囲に入らない。
 インドの労働運動の重大な欠点は組合指導者が外部、政党から送り込まれてきたことである。組合が労働者の利益を守ることよりも、政治指導者に従う傾向がある。
 組織化の強化という面では、女性、若年層、家内労働者、移民労働者、さらに大きな産業であるIT関連部門の労働者の組織化が進んでいない。

3.課題解決の取組み

 解決策としては、1産業に1組合、組合内部での指導者育成、有給の専従者配置、組合財務状況の改善、労働者教育の向上、組合員福祉の向上などが考えられる。
 そのために、労働組合として、物価上昇抑制策の要求、労働法の厳格な適用、国民皆年金制度を求める活動をしている。

4.多国籍企業の労働事情

 多国籍企業の労働者は基本的な労働権は保障されているが、州毎に多くの制限が課せられている。組合リーダーが組合活動を理由に逮捕されたり、刑事罰に問われたりすることが起きており、ナショナルセンターとしては、労働組合の政府登録を促進し、組合活動が違法とみなされないようにすることを進めている。

2018年5月24日 講演録

インド全国労働組合会議(INTUC)

バグデヴィ・ラディ
テランガナ州女性委員会書記

 

1.労働情勢全般

 経済のグローバル化は労働組合にとって大きな課題となっているが、インドでは様々な形で、労働者に有利な雇用を生み出すチャンスにもなっている2011年から2017年にかけて、経済成長率は他の国に比べて高く、実際に、700万人の雇用が生まれた。特に、運輸、建設、貿易などの部門で雇用が伸びている。

2.労働組合INTUCの直面する課題

 最大の課題は、インドの人口の約90%が臨時雇用や自営業者などいわゆるインフォーマル経済に属し、個々の労働者が使用者と交渉できる立場にないことである。公務部門に比べ、民間部門の組織率が低いこと、女性や青年の組合参加率が低いことも問題である。
 労働法、特に最低賃金法の履行率が低いこと、小規模組合が圧倒的に多く、交渉力や財政基盤が弱いといった課題も抱えている。

3.労働法統合の動きと労働組合の対応

 インド政府は現在44ある労働関連法を4つの法典に集約しようとしている。労働雇用省は、社会保障および福祉に関する労働法典(Labour Code on Social Security and Welfare)の草案を発表した。これは現在の雇用者積立基金法(EPF)、労災保険制度法(ESI)法、退職金支払法、出産手当法、雇用者補償法などを統合するものである。政府はこれにより社会保障制度と行政制度が統合され簡素化される主張している。しかし、新たな法律ができると、現在の社会保障組織が一旦解散され、新法の下に設置される各州委員会を通じてすべての労働者に社会保障給付が提供されることになる。
 こうなると州政府の委員会がすべてを牛耳ることになり、数百万人の労働者がリスクにさらされる。労働組合はこのような労働者の利益に反する動きに反対している。

4.多国籍企業の労働事情

 多国籍企業は正規労働者を雇用せずに、契約に基づく臨時雇用とする傾向にあるので、新規雇用の創出という点では、マイナスの影響が出ている。