2021年 ウクライナの労働事情

2021年6月25日 報告

 本報告は2021年6月21日~25日にJILAFが実施した招へいオンラインプログラム(ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ)における、ウクライナの参加者から報告された「ウクライナの労働事情」および、同提出関連資料に基づいて作成した。なお、本プログラムにはウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)から4名が参加した。

労働経済の状況

 ウクライナの産業構造の特殊性として、旧ソ連の財産を引き継いで、民営化され、今は新興財閥(オリガルヒ)の持ち物となっている大企業コンビナート、鉱山などの大企業と2~3人で運営されている小企業のどちらかしかなく、日本で言う中小企業という概念は当てはまらなかった。だがそのような中にあっても、LEONIケーブル工場のような企業、IT産業など中規模の企業も活躍を開始している。ウクライナの未来はそのような企業にある。しかし他方では税務署が補足できない闇経済がはびこっており、一切の社会保障費を払わない「封筒での給与支払い」問題がある。さらに鉱山、医療など公的分野の給与未払問題はいまだ続いている。ウクライナの若者、技能を持っている者の多くは外国で働く道を探しており、移民する人々の数も多い。人口は減り、これを穴埋めするためにより給与の低い中央アジアからの移民が求められている状況だ。自由労働組合(KVPU)は、大企業コンビナートや鉱山に組織を持っている。ウクライナでも旧ソ連の労組の流れをくむ組合(FPU)があり、大多数の労働者はこの組合に加入している。

労働法改正

 労働法改革法案が2020年1月組合との協議なく国会に提出され、審議入りした。内容は、労働者の権利を全面的にはく奪するものとなっており、昨年秋大規模な抗議行動、国際連帯の力によって、法案提出はとりあえず却下されたが、今になって再び政府の側はこの法案を幾つかに分割し、形を変えて国会に上程した。ウクライナで雇用創出をより簡単にするという名目で、労働の規制緩和を進めようと言うのが今回の改正の意図だが、例えば、今回提案されている法案第5371号では、250人以下の職員を雇用する企業では、これまで労働条件は法で決まっていたが、これを個別の労使交渉で決めることになる。ウクライナ労働者の73%がこの範疇に入り、組合の力が弱い中、労使交渉でとなれば、経営側が圧倒的に有利となる。このような反労働者的、反組合的な法案が7本(参加者の講演では12本)国会に上程されているとのことだ。現在全ての労働組合がこれらの法案に対し反対運動を組織している。

 参加者が「特に問題」と述べるのは、法案2178-10で、今年7月1日から実施される。これは100ヘクタール以下の農業用地の売買を自由化するもので、「物価水準を考えれば、多国籍企業の餌食となるのは確実」と強い懸念を示していた。ウクライナは古くから「欧州の穀倉」と呼ばれ、土地は肥沃である。 農民は貧しく、借金を抱えているものが多い。多くの人々が郊外にダーチャと呼ばれる家庭菜園を持っているが、ここで栽培する果実や野菜にも税金をかけようとしている。さらに労働者の平均賃金は6000フリブナ(200ドル)、特に医療従事者が安く、看護婦の賃金が5000フリブナ(150ドル)という状況にある。

 参加者の話の中で、多国籍企業の悪辣な労務政策が糾弾された。すでに宅関野航空会社などで、使用者は指導者の解雇・組合承認の拒否で対抗した事例がある。裁判は全て組合側が勝ち、解雇された労組指導者は職場復帰を果たした。参加者の話では、外資企業の多くに組合が無いのは、このような労務政策によると言う。
 別の企業における地下ストライキは注目を集め、賃金上昇、国家監視局による査察などの結果を得ることもが出来た。だが労組のリーダーたちは起訴され、労働者側は「社会対話によっての紛争解決を学んでいない」と使用者を糾弾したが、21年5月に出た判決は、抗議そのものは合法だが、労働者の抗議活動は非合法とし、リーダー8名の行動は違法と裁定されてしまった。組合は解雇された8名の救援活動を行っている。

 なお、ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)は「労働組合として、議会内の政党と連携することが重要であり、組合と連携した議員を増やす必要がある」との考えで、現在では、バチュ―シナ(祖国)という党と連携し、ナショナルセンターの会長が国会議員となっているが、議員を増やし、もっと太い連携を作り出していかねばならないと言う。現在はスルーガナローダ(人民の奉仕者)というゼレンスキー氏が率いる党が70%の議席を占めており、労働法改正法案も国土を売却する法案も国会を通過してしまうであろう。議会内の力関係をかえていくことが重要だと参加者は語っていた。