2020年 カザフスタンの労働事情
国際労働財団(JILAF)では、ユーラシアチームとしてベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、生産性運動や雇用安定の取り組みなどについて学ぶためのプログラムを用意した。しかし、新型コロナウイルス禍の影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となった。
以下は、ナショナルセンターや参加者からの報告資料等を参考にまとめたものである。
カザフスタン労働組合連合(FPRK)
Pulatov Sherzod
カザフスタン労働組合連合(FPRK) 国際局長
1.カザフスタンの労働情勢
2018年 | 2019年 | 2020年(見通し) | |
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実質GDP(%) (出典元) |
104.1 (カザフスタン国民経済省統計委員会) |
104.5 (カザフスタン国民経済省統計委員会) |
97.7~98.0 (カザフスタン国立銀行) |
物価上昇率(%) (出典元) |
5.3 (カザフスタン国民経済省統計委員会) |
5.4 (カザフスタン国民経済省統計委員会) |
8.0~8.5 (カザフスタン国立銀行) |
最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
□月額( 28,284 ) (カザフスタン共和国労働法、「共和国予算に関する」カザフスタン共和国法) |
□月額( 42,500 ) (カザフスタン共和国労働法、「共和国予算に関する」カザフスタン共和国法) |
□月額( 42,500 ) (カザフスタン共和国労働法、「共和国予算に関する」カザフスタン共和国法) |
労使紛争件数 (出典元) |
データなし | 17 (カザフスタン労働組合連合) |
7 2020年9月10日現在 |
失業率(%) (出典元) |
4.9 (カザフスタン国民経済省統計委員会) |
4.8 (カザフスタン国民経済省統計委員会) |
6.1 (カザフスタン労働・社会保障省) |
法定労働時間 (出典元) |
8時間/日 (カザフスタン共和国労働法) |
40時間/週 (カザフスタン共和国労働法) |
時間外/割増率 1日2時間以下、重労働および有害危険作業は1時間以下。給与手当は雇用者の日給(時給)の1.5倍以上 (カザフスタン共和国労働法) |
休日/割増率 |
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2.カザフスタンの不安定雇用の問題やインフォーマルセクター労働者の現状
2020年の上半期の調査結果によると、国内の労働者約870万人のうち200万人以上が自営業者である。
また、雇用労働者においても所得水準が低いため、追加の収入を自営業などのインフォーマルセクターに求めざるをえない状況がある(賃貸住宅、自家輸送、市場取引、住宅・家電機器の修繕、在宅サービスの提供など)。
自営業者人口の比率の高さは、国の経済発展に対する最も差し迫った問題の一つであり、国民の貧困の要因でもある。なお、自営業者が最も多く働いている分野は農林漁業であり、こうした労働者の所得は低く不安定な傾向がある。
3.労働組合が直面している課題
労働法制の改善を求める労働組合の闘いは、過去も現在も継続して私たちの主要な仕事分野の一つとなっている。法規定を市場の現実に近づけることによって労働法制を緩和しようという開発業者らの懸命の努力によって、労働者の法的保護が弱体化してきた。その結果、多くの社会・労働問題は、立法の領域から団体交渉の領域に移され、今こうした問題の解決は主に交渉当事者のパワーバランスに左右されることになっている。労働協約や協定の締結に際し最も立場の弱い当事者は往々にして労働組合であることを踏まえれば、労働組合が十分な力をもっていなければ交渉結果がどうなるかは想像に難くない。当然のことながら、強力な労働組合運動の欠如と、労働者の利益を保護しない法令の存在は労働者搾取への道を開く。
加えて、国際労働機関(ILO)はポストコロナの回復へのアプローチを提示した。そこには4つの要素――経済と雇用の振興、企業・職場・所得に対する国家的支援、職場における労働者の保護、社会的対話――が含まれている。
行動の指針として、ILOは労働組合アジェンダに10項目の危機対応ポイントを策定している。ILOの勧告を考慮に入れ、カザフスタン労働組合連合はこれらすべての分野に取り組んでいる。
4.コロナ禍での労働組合の対応
労働組合の主要な目標は、労働者の社会的リスクを最小限にとどめ、労働者の利益の侵害や違反を防ぎ、労働者の職場とすべての必要な支払いを守ることである。
このことに関して、私たちは政府および使用者に対し、リスクの最小化と社会情勢の安定化に力を合わせて取り組もうと呼びかけてきた。具体的な呼びかけの内容は次のとおり。
- 労働者の大量解雇、賃金および社会保険料の未払、労働条件の不当な劣化を防ぐための対策を講じる。
- 労働者に個人防護具を提供し、作業エリアやオフィスを安全な状態にし、リモートワークスペースを設けることによって組織の活動モードを現状に合わせる。
パンデミックの発生以来、労働組合とその加盟組合は国民に対する経済支援を開始し、2020年6月の時点で3億テンゲ以上の資金提供を行っている。こうした資金は個人防護具や低所得者への必需品の購入、医師とその家族への物質的支援、検査所や病院での医療従事者への温かい食事の提供に使われた。
COVID-19パンデミックと闘う医療従事者の貢献を適正に評価するために、FPRKはこうした医療従事者に対する国の追加支援策の立法に関して、いくつかの提案を政府に提言している。