2020年 ザンビアの労働事情

2020年10月30日 報告

 国際労働財団(JILAF)では、アフリカ英語圏チームとしてザンビア労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、生産性運動や雇用安定の取り組みなどについて学ぶためのプログラムを用意した。しかし、新型コロナウイルス禍の影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となった。
 以下は、ナショナルセンターの報告資料等の概要を参考にまとめたものである。

ザンビア労働組合会議(ZCTU)

ジョゼフ ンセバ ムワンサ
ザンビア労働組合会議(ZCTU) 青年委員会議長

ムワンガラ ムラコ
ザンビア基礎教育教師労働組合 中央女性コーディネーター

 

1.労働情勢(全般)

  2019年 2020年 2021年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
1.52
(財務省)
-3.51
(財務省)
2.35
(財務省)
物価上昇率(%)
(出典元)
9.8
(財務省)
15.7
(財務省)
6〜8
(財務省)
最低賃金
(時間額・
日額・月額)
(出典元)
□時間(   )
□日額(   )
☑月額(50~178米ドル)
(労働省)
□時間(   )
□日額(   )
☑月額(50~178米ドル)
(労働省)
□時間(   )
□日額(   )
☑月額(50~178米ドル)
(労働省)
労使紛争件数
(出典元)
(    ) (    ) (    )
失業率(%)
(出典元)
13.2
(   )
13.2
(   )
13.2
(   )
法定労働時間
(出典元)
8時間/日
(2019年雇用法)
48時間/週
(2019年雇用法)
時間外/割増率
時給1.5倍
(2019年雇用法)
休日/割増率
時給1.5倍
(2019年雇用法)

通貨名:ザンビアクワチャ(ZMW) 20 ZMW=約1ドル(2020年10月16日現在)

2.基本情報

 ザンビアはアフリカ南部に位置するイギリス連邦加盟国のひとつである。国土は75万平方キロメートル、人口約1700万人で首都はルサカである。公用語は英語でキリスト教が国教とされている。2018年度に世界平和度指数ランキングは第48位、アフリカでもっとも平和な国と言われている。ザンベジ川流域には世界三大瀑布のヴィクトリアの滝があり、野生の大小動物も多く大自然が残されている。かつては、ポルトガルとイギリスの植民地であったが1964年独立、東京オリンピックの開会式では東ローデシアとして参加、閉会式にはザンビアとして行進を行ったという逸話が残っている。独立以来、中国との経済的・軍事的な関係が強くインフラ整備にも大きな影響を与えた。しかし、1990年後半以降に鉱山労働にかかわる問題が多発して、国民の対中感情は悪化した。日本は経済協力に力を入れており、環境問題への支援などアフリカでの援助額が第3位となっている。
 主要産業は、銅やコバルトなど豊富な鉱物資源を背景とした鉱業が中心で、銅の産出量は世界第6位となっている。2019年の名目GDPは約700億米ドル、一人当たりの名目GDPは約1500米ドルとなっている。2000年代外国資本の増大により、銅の生産量も増加、経済成長率も6~7%の成長を続けたが、鉱物価格の低下と世界的景気の低迷、新型コロナウイルスの影響もありIMFは2020年GDP成長率をマイナス5.1%と予測しているが、ザンビア財務省の予測はマイナス3.51%となっている。失業率は2019年から12~13%台と高止まりを示している。最低賃金は約130米ドル。
 ナショナルセンターは複数存在し、ザンビア労働組合会議(ZCTU)が最大のナショナルセンターである。組織人員は360000人(女性は14万人で約40%)、鉱業・公務員・農業・商業・ホテル観光が主な産業別組織を形成、52の加盟単組を組織し、ITUCに加盟。

3.労働法制の法的枠組みと社会保障制度

 ザンビアの労働関連法制は、これまで「雇用法」、「労使関係法」、「若年雇用法」、「最低賃金法」、「雇用(特別条項)法」、「工場法」などに分かれていたが、2019年からこれらをまとめて新しい労働法制(レイバーコード)として施行している。

1)雇用法(2019年法律第3号)

 全ての雇用関係を定義し、最低賃金の見直しを規定

2)工場法第441条

 工場での安全で良好な労働環境を確保するための基準を規定

3)2010年労働安全衛生法

 すべての職場における安全衛生を確保するための最低安全基準を規定

4)労使関係法第269章

 労使関係の実施・運営の条件を規定

 年金制度には次の4つの制度があり、それぞれ労働者が退職した後の老齢年金としての役割を担っている。

1)国民年金制度

 NASPAと呼ばれる国民全員が加入する制度で政府が運営。これは公共部門と民間部門が双方共通する枠組みで、拠出金は労使でそれぞれ各人の基本給の5%を負担する。

2)公務員年金基金

 パブリックサービス、ペンション・サービス・ファンドと呼ばれる公務員のみが対象の年金制度である。労働者各人(公務員)が拠出する基金である。

3)地方自治体退職年金基金

 地方自治体で働く労働者各人が拠出する基金である。

4)民間企業における制度

 新しい制度で、民間企業がそれぞれ行う厚生年金的な制度である。政府は、現在この制度を普及すべく各企業に奨励している。

5)労災補償法(WCF)

 労災補償金(業務災害)の設置を規定

4.労働組合が直面している課題と取り組み

(1)インフォーマルセクターの労働者をめぐる課題

 ザンビアにおいては、インフォーマルセクターで働く人の割合は全労働者の85%にも及んでいる。彼らには社会保障制度が適用されず、賃金も極めて低い実態にある。また、インフォーマルセクターで働く人の大半が労働組合に加入していない。こうした中で、ザンビア労働組合会議(ZCTU)は、インフォーマルセクターで働く労働者に組合加入を呼びかける取り組みを行っている。

(2)ザンビアにおける労働組合組織の現況と課題

 ザンビアではナショナルセンターが複数存在し、こうしたことから企業別組合も同一企業内で分立している状況にある。そして、上記(1)で述べたようにインフォーマル経済が主流を占めていることも組織率が低い背景となっている。
 こうした状況を踏まえ、労働組合はまずインフォーマルセクターで働く労働者に組合加入を呼びかけるとともに、労働組合分立の状況の中で団体交渉を効果的に展開するため、組合を一つにまとめる取り組みや組合間で連携を強める取り組みを推進していく必要がある。今、そのためのキャンペーンを実施している。

(3)新型コロナウイルスの影響

 ナショナルセンター・産業別組織・単組・地方組織等は、新型コロナコロナウイルスの蔓延によって、組織化が困難な状況になっている。その原因として正規従業員が減少して有期雇用契約労働者が増加していることがあげられる。