2021年 南アフリカの労働事情

2021年10月8日 報告

 本報告はCOVID-19パンデミック禍で、2021年10月4日~8日にJILAFが実施した「オンライン・スタディ・プログラム」〔アフリカ英語圏チーム〕における参加者および参加者が所属するナショナルセンターから提出して頂いた各国の「労働事情報告」と本プログラムの中で実施した「JILAFによる労働事情収集」(上記「労働事情報告」に対するヒアリング)に基づいて作成した。なお、各国の労働事情は、「コロナ禍における最近の労使紛争とその取り組み事例」を主テーマとした。
 以下の「南アフリカの労働事情」は、南アフリカ労働組合連盟(FEDUSA)から提出して頂いた二つのレポート(①公共セクターにおける昇給の実施をめぐる労使紛争、②「南アフリカにおける労働環境の現状」〔教育組合の観点からの報告(本プログラム参加者のバジル ローレンス マヌエル氏の提出レポート)〕に基づいて作成したものである。
 なお、本プログラムには2つのナショナルセンターより各1名、計2名が参加した。

〔南アフリカ労働組合連盟(FEDUSA)〕

バジル ローレンス マヌエル(Mr. Basil Lawrence Manuel)
南アフリカ国立専門教師組合中央執行委員

〔南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU)〕

ゴチチ ノクビル チャバング(Mr. Nkotitshi Nqobile Tshabangu)
食品製造労組書記長
 

Ⅰ 公共セクターにおける昇給の実施をめぐる労使紛争の事例

1.労使紛争の概要と労使の主張点

 南アフリカの公共セクター(全公共セクター)において、団体交渉で合意していた2020年分の「昇給」が実施されず未払いとなった。この「昇給」は2018年の団体交渉において2018年、2019年、2020年の3年分の「昇給」を定めたものである。2018年・2019年の過去2年分は協定通り実施されているが、使用者側は3年目(2020年分)の「昇給」実施を拒否し、未払いとなったのである。労働者側は「昇給は団体交渉に基づく適法な合意であり、協約に基づいた権利として完全に実施すべき」と強く主張している。一方、使用者側は「合意を履行するための資金がない」と主張している。

2.労使紛争の経過と現状

 労働組合は政府に申し入れ、政府との交渉を進めてきたが調停のプロセスはすべて不調に終わった。そこで、労働組合は労働控訴裁判所に提訴したものの敗訴となった。そこで、この問題は憲法に関わる事案でもあることから、さらに憲法裁判所に提訴し、現在係争中である。

Ⅱ 南アフリカにおける労働環境の現状(「国立専門教師組合」報告)

1.教育関係者の団体交渉制度について

 南アフリカにおける教育関係者は約60万人いる。公務員の団体交渉は、団体交渉評議会として「公務員調整交渉評議会」(PSCBC)」があるが、教師の場合、これに加えて「教育労働関係協議会」(ELRC)があり、ここでは職務上の問題について団体交渉を行っている。なお、両協議(評議)会で採択した決議は、組合員であるか否かを問わず、全ての対象労働者に適用される。そのため、この二つの協議会に参加している労働組合は、協議会の範囲に含まれるすべての非組合員から賦課金を徴収し、徴収された賦課金は各労働組合に比例案分のうえ分配されている。

2.政府との関係と現状(公務員の場合)

 南アフリカ労働関係法では、政府と労働者間の関係は「交渉評議会を通じて定める」としている。政府との間には基本的に友好的な関係性を築いているものの、様々な公共サービス部門では時としてストライキが行われるなど関係が悪化することもある。
 最近では、「昇給」をめぐる労使紛争が起こり、この案件は現在、憲法裁判所で係争中である。〔この労使紛争事例は上記「Ⅰ 公共セクターにおける昇給の実施をめぐる労使紛争の事例」で紹介した事案である〕

3.教育現場で直面している問題

 教育現場は様々な問題に直面している。現在、教師や教育労働者が新型コロナウイルスに感染し、大量の欠員が発生している。こうした中、多くの子供たちが学校に登校できない状態も続いている。また、学校での破壊行為、10代の妊娠、ジェンダーを理由とした暴力も増加している。
 一方、明るい見通しもある。教師は一般的な他の労働者に比べて賃金が高く、社会的な保護の面でも権利が確立しているといえる。教師の大半は女性であり、労働運動における教師の役割も強化されている。