2019年 南アフリカの労働事情

2018年8月29日 講演録

南アフリカ労働組合会議(COSATU)
ローズマリー テンジワ マハエ(Ms. Rosemary Thenjiwe Mahaye)

南アフリカ衣料・繊維労働組合 組織担当
南アフリカ組合連盟(FEDUSA)
マセレ ゴットフェイ セエレマトセラ(Mr. Masale Godfey Selematsela)

南アフリカ組合連盟(FEDUSA) 会長

 

1.労働情勢

 実質GDP(対前年増減率)は、2018年が0.79%であった。
 インフレ率は、2018年が4.62%であった。
 2019年の最低賃金は、時間額で20ランド、日額で160ランドである。
 失業率は、2018年が27.2%であった。

  2017年 2018年 2019年(見通し)
実質GDP(%) 1.42 0.79 1.2
物価上昇率(%) 5.27 4.62 4.96
最低賃金(時間額)    (日 額) (2019年以前は設定されていなかった) (2019年以前は設定されていなかった) 20ランド
160ランド
失業率(%) 27.7 27.2 (7月)29.0

資料出所:実質GDPおよび物価上昇率については、IMF-World Economic Outlook Databasesより引用、他のデータは報告者の所属ナショナルセンター作成データより引用

〔為替レート〕14.50ランド=1ドル(2019年8月1日現在)

2.南アフリカの労働法制と社会保障制度

(1)労働法制

 南アフリカには、新たに設置された雇用労働省(旧労働省)が管理する労働災害・疾病補償、技能訓練、雇用の平等、雇用の基本条件、最低賃金など数多くの労働法令がある。こうした労働法制の中で、労使の様々な側面に適用されるのが労使関係法(LRA)である。この法は、労働者の定義、雇用契約、休暇、懲戒手続き、団体交渉、などについて具体的に定めている。なお、同法の主要な規定の一つに、厳しい経済環境下や経営上の理由によって労働組合と協議した後に労働者を削減することを使用者に認める「第189条」がある。

(2)社会保障制度

 国は高齢者に対して基礎的な年金を毎月支給している。また、幼児の親や保護者が失業している場合は、幼児の親や保護者に対して未成年者補助金が毎月支給される。
 公共セクターでは、プライマリー・ヘルスケアおよび特定カテゴリー(例えば女性の不妊治療など)の保健ニーズに関する医療は無償で提供されている。また、最貧困層および非常に困っている人は無料で治療を受けられるようになっている。

3.不安定雇用の問題やインフォーマルセクター労働者の現状

 国の統計によると、450万人がインフォーマル雇用の状態にある。このうち280万人はインフォーマルセクターで働いており、その大部分が自営業者(露店およびインフォーマル店舗の商人、タクシー運転手、建設労働者、仕立て職人、靴職人など)である。
 雇用基本条件法(BCEA)などの重要法令では、フォーマル経済とインフォーマル経済を問わず全ての雇用者を対象としているが、政府にはインフォーマルセクターにおける法の遵守を監視する能力はほとんどない状態だ。
 なお南アフリカには、こうした不安定雇用を問題として捉えるのではなく、厳しい経済環境下で職を失った多くの労働者にとってインフォーマルセクターが重要な生計手段を提供しているとする見方も存在する。こうした中で、ILO勧告204号(インフォーマル経済からフォーマル経済への移行を促す一連のガイドライン)を採択した。
 現在、南アフリカの労働センターは全国経済開発労働評議会(NEDLAC)において、企業、政府、地域社会の後援者といった他の社会的パートナーとともに、上記勧告204号に定めるディーセントワーク・カントリー・プログラムに基づき、インフォーマルセクターのフォーマル化に取り組んでいる。

4.ナショナルセンターが直面している課題と取り組み

【南アフリカ労働組合会議(COSATU)報告】

  1. 南アフリカの組合は総じて、雇用の非正規化に関する課題に加え、労働協約を未組織労働者に拡げる労働組合の能力を無力化しようとする、団体交渉構造への攻撃を受けている。また、労働組合は賃金や失業に関する課題にも直面している。賃金は生活賃金に比べて非常に低いままであり、特に民間セクターで深刻である。そして、極めて高い失業率も生活に重圧をかけている。
  2. 私たちの労働組合(南アフリカ衣料・繊維労働組合)は、衣料・繊維・履物・皮革(CTFL)製造業で働く労働者を組織しているが、最大の課題は組合員の雇用の維持だ。他国から安価な輸入皮革(CTFL)が大量に入ってきており、この20年間で皮革(CTFL)産業では16万人もの雇用が失われた。私たちは、皮革(CTFL)産業が直面している課題に対処するための広範なキャンペーンを展開し、行動プログラムを策定している。

【南アフリカ組合連盟(FEDUSA)報告】

  1. 南アフリカの労働組合は、厳しい経済環境下で失業が広がる中、組合員数の減少による労働組合財政が大きく減少するという問題を抱えている。製造業では新技術の導入によってロボットが人に置き換わる状況も生じている。また、金融部門では、銀行の窓口業務を担う事務職員や警備員が大量に人工知能ソフトウエアに置き換わり、支店の閉鎖が生じている。
  2. 経費削減が民間セクターを荒廃させ、政府は公務員に対して早期退職パッケージや10%もの給付削減計画を一方的に提示している中で、最大の課題は既存の雇用を守ることである。労働組合は、上記1.「南アフリカの労働法制と社会保障制度」の(1)「労働法制」の項で紹介した労使関係法第189条の改正要求を検討している。