2019年 チュニジアの労働事情

2019年8月1日講演録

チュニジア労働総同盟(UGTT) 
ファーティマ シャブシューブ エプ エル フォージィ
(Ms. Fatma Chabchoub Ep El Fouzi)

UGTTスファクス県支部副支部長
ハーフェス レバイ(Mr. Hafedh Rebai)
UGTTベジャ県支部副支部長
アワテフ ベンモハメド(Ms. Awatef Benmohamed)
UGTTケビリ県支部副支部長

 

1.基本情報

 面積は日本の43%あまり(約16.4万平方キロ)、人口は約1,166万人でその98%がアラブ人である。政治体制は共和制をとっている。
 実質経済成長率は、2016年が1.11%、2017年が1.96%、2018年が2.48%(推計)である(IMFデータ)。物価上昇率は、2016年が3.63%、2017年が5.31%(推計)、2018年が7.31%(推計)であり(IMFデータ)、物価上昇傾向は高まってきている。一人当たりの名目GDPは自国通貨ベースでは2016年が7,875ディナール、2017年が8,382ディナール、2018年が9,061ディナール(推計)であるが、ディナールの暴落傾向が続く中、米ドルベースでは2016年が3,666米ドル、2017年が3,465米ドル、2018年が3,423米ドル(推計)となり(IMFデータ)、低落傾向となっている。失業率はこの10年間13%以下になることはなく、2015年以降は15%台が続いており、状況は深刻であり続けている。
 2011年のジャスミン革命以後、政治的改革のプロセスが進行する一方で、上で見たように、高失業率、物価上昇など革命の要因となった経済問題は依然として解決されていない。
 隣国のリビアの内戦の影響も受け治安情勢の悪化が見られたが、2016年3月を最後にしてテロ事件は発生しておらず、治安は回復している。このことが今後の経済の立て直しの好材料となっていくことが期待されている。
 ナショナルセンターはチュニジア労働総同盟(UGTT)であり、約100万人を組織し、国際労働組合総連合(ITUC)に加盟している。

2.労働を取り巻く現状と課題

(1)労働法制と社会保障制度

①労働法
 1966年に制定され、1994年と1996年に改正され、民間セクターおよび農業セクターにおける労働基準や労使関係を規定している。なお、公務・公共セクターについては公職法が適用される。
 労働法は、新規採用、雇用、女性および未成年者の雇用、労働関係、雇用契約、賃金、労働時間、休暇、就労条件、業務上の安全、健康、契約の解除、退職手当、個人および集団労使紛争、労働裁判、労働監査、罰則、外国人被雇用者、労働協約、労働組合、雇用労働者の代表など、労働に関するあらゆる事柄について定めている。
 なお、1994年の改正では、集団労使紛争の解決に関する規定が盛り込まれ、労働契約に関する修正が行われるとともに、男女平等、賃金の平等、産休や育休の保障なども盛り込まれた。

②社会保障制度
 社会保障については以下の3つの基金が設けられている。

  • 労働者社会保障国民基金:民間・農業両セクター労働者が対象
  • 年金社会保障準備国民基金:公務・公共セクター労働者が対象
  • 疾病保険基金:全ての労働者が対象
    ただし、国による資金の目的外使用が繰り返され、基金の財政は破綻に近い状態に陥ってしまった。そのため、UGTTは定年退職年齢の一律2歳引上げ等の新法整備を働きかけ、基金財政の立て直しに協力した。

(2)労使交渉の概要

 チュニジアでの労使交渉は、ア)公務・公共セクターについてはUGTTと政府との間で、イ)民間セクターについてはUGTTと使用者団体である「チュニジア商工業手工業連盟(UTICA)」との間で、原則、毎年行われる。
 労使交渉においては、ア)、イ)とも、賃上げ率、事業の維持・推進、経済の推進、社会における労働者の権利など、全産業、全労働者に共通する諸課題を俎上に載せる。
 イ)の民間セクターの交渉において、UGTTはすべての産業の労働者を代表し全国レベルの要求を行い、使用者との間で包括協定を締結する。協定は、賃金、キャリア形成、労働安全衛生、年次・特例休暇などをカバーする。多くの場合、この包括協定に基づき事業所レベルでの労使交渉が行われ、協約が締結される。事業所レベルの労働組合はより良い労働条件を勝ち取ることを目指し交渉に臨むことになるが、労使交渉にはUGTTの地方支部も参加する。

(3)不安定雇用問題

 労働法は有期雇用についての労働契約期間を、更新分を含めて最大4年と定めており、不安定雇用問題を惹起している。なお、有期雇用契約が認められるケースは以下のとおりである。

  • 会社設立や社内組織の設置に際しての初期段階の労働
  • 事業規模を大きく拡大するのに必要な労働
  • 休職中または停職中の正社員の代替労働
  • 事故の発生防止に必要な緊急業務
  • 季節労働
  • 期間の定めのない労働契約締結が慣習や労働の性質上できない労働

(4)経済をめぐる諸課題


 2018年の経済成長率は2.48%で前年より若干改善している。しかし、チュニジア・ディナールの対ユーロ、対米ドルレートは著しく下落しており、2018年のインフレ率については7%を超えている。全体として厳しい経済状況にあって、2018年の失業率は15.2%、2019年の第1四半期においては15.3%にも達している。とりわけ、若年層の高等教育終了者の失業率が非常に高く30%を超えている。
背景にある問題として、生産性の低下が挙げられ、各セクターで生産性はバラバラでバランスが崩れている。特に農業部門において不安定な状況が続いている。
 また、中小企業においては資金調達が困難になっていることや、インフォーマルセクターが拡大してきていることで生活水準のレベルが低下していることが状況を困難にしている。