2019年 ケニアの労働事情

2019年8月29日 講演録

ケニア労働組合中央組織〔COTU(K)〕
ボニファス ムティ カブヴィ(Mr. Boniface Mutie Kavuvi)

ケニア商業・食品組合 事務局長

ロザリン ンジョキ カミナ(Ms. Rosaline Njoki Kamina)
ケニア教職員組合 シニアエグゼクティブオフィサー

 

1.労働情勢

 実質GDP(対前年増減率)は、2017年が4.9%、2018年が5.7%であった。2019年は5.8%と予測されている。
 インフレ率は、2005年~2019年の平均で9.52%である。直近の2019年は6.27%となっている。
 2018年の最低賃金は、ナイロビと他の2都市で月当たり13,572ケニア・シリング(135ドル相当)である。

2.ケニアの労働法制と社会保障制度

(1)労働法制

 ケニアにおける労働条件は各種労働法令に準拠する。主な労働法令には、雇用法、労使関係法、安全衛生法、労働災害給付法、労働制度法などがある。これら現行法は全て2007年法である。
 なお、結社の自由と労使関係における労働者の権利についてはケニア憲法に定められているが、上記に示した2007年労使関係にも規定されており、これによって労働者は使用者から不当労働行為を通じて権利を否定された場合に争う法的根拠となっている。

(2)ケニアにおける労使関係

 ケニアの労使関係は二者間および三者間協議を基本としている。二者間では、個別労働組合と使用者または当該使用者団体間で協議する。三者間では、政労使(労働組合、使用者、政府)がILO第144号条約の精神で労使関係に関する問題を話し合うことになる。この政労使レベルでは、ナショナルセンターのCOTU(K)が、ケニア経営者連盟(FKE)および政府(労働省)と協議している。

(3)社会保障制度

 ケニアの社会保障制度は、「国民社会保障基金(NSSF)」、「国民医療保険基金(NHIF)」の他、高齢者、社会的弱者および障害者のための基金を通じた社会的扶助制度などがある。
 「国民社会保障基金(NSSF)」への労働者の拠出額は、月当たり400ケニアシリング(これは最低の拠出ランクで約400円相当)以上となっている。ケニアにおける平均寿命は男性が63歳、女性が69歳となっている。定年年齢は60歳である。この60歳定年後に社会保障として給付を受けることになる。
 一方、「国民医療保険基金(NHIF)」への労働者の拠出金は、月当たり1,700ケニアシリング(最少額)以上となっているが、常に雇用されていない、つまり雇用が不安定な労働者は500ケニアシリングとなっている。この国民医療基金に加入していれば、国立または軍の病院で治療を受けることが可能となる。

3.不安定雇用の問題やインフォーマルセクター労働者の現状

 ケニアの労働人口は約2,000万人であるが、うち86%がインフォーマルセクターで働いており、インフォーマルワーカーは現在も増加を続けている。また、これらの労働者のほとんどが労働組合に加入することができないため、労働組合の保護を受けていない状態にあり、労働組合員が得られる権利も享受できていない。

4.労働組合が直面している課題と取り組み

  1. ケニアでは貧困率が高く、かつ上昇を続けている。インフォーマル経済の急成長に伴って、カジュアルワーカー(臨時的・一時的雇用)や非正規雇用も増えている。このカジュアルワーカーの1日当たりの収入が日本円で300円程度と極めて低く、貧困率の高さの背景ともなっている。
  2. ケニア政府は労働組合に対してけっしてフレンドリーではないといえる。労働組合に対する政治的介入も見られる。そして、政府による御用組合の登録も非常に増えてきている。
  3. ケニアの教職員組合に加入している教員が深刻な問題に直面しているので取り組み事例として紹介しておく。それは、高い資格の取得や大学院(修士課程、博士課程)で学んでも、2013年以降全く昇進が行われていないという案件である。この問題について労働組合は裁判所に提訴し、裁判所でも「昇進させるべき」との判決を出したが、今日までその教員を昇進させるに至っていない。なお、この問題は国会でも解決すべき課題として取り上げられている。