2020年 ガーナの労働事情

2020年10月30日 報告

 国際労働財団(JILAF)では、アフリカ英語圏チームとしてガーナ労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、生産性運動や雇用安定の取り組みなどについて学ぶためのプログラムを用意した。しかし、新型コロナウイルス禍の影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となった。
 以下は、ナショナルセンターの報告資料等の概要を参考にまとめたものである。

ガーナ労働組合会議(GTUC)

エリック アモアドゥ ボアテング
ガーナ労働組合会議(GTUC) 組織局長

ジョイス マクー アッピア
公共事業労働者組合(PUWU) ジェンダー・コーディネーター

 

1.労働情勢(全般)

  2017年 2018年 2019年
実質GDP成長率(%)
(出典元)
8.1
( IMF )
6.3
( IMF )
6.1
( IMF )
物価上昇率(%)
(出典元)
12.4
( IMF )
9.8
( IMF )
8.0
( IMF )
最低賃金
(時間額・日額・ 月額)

(出典元)
□時間(1.10 )
□日額(8.80 )
□月額(    )
(GTUC)
□時間(1.21 )
□日額(9.68 )
□月額(    )
(GTUC)
□時間(1.33  )
□日額(10.65 )
□月額(    )
(GTUC)
労使紛争件数
(出典元)
( 718 ) ( 664 ) ( ― )
失業率(%)
(出典元)
7.5
(GTUC)

(    )
6.78
( 世銀 )
法定労働時間
(出典元)
8時間/日

( 2019年労働法)
40時間/週

( 2019年労働法)
時間外/割増率
時給 倍
( 2019年労働法)
休日/割増率
時給 倍
( 2019年労働法)

通貨名:ガーナセディ(GHS)5,22ガーナセディ=1ドル(2019年平均値) 1円=0.053GHS

2.基本情報

 ガーナはアフリカ大陸西側に位置し、国土は約23万平方キロメートルで日本の約3分の2、人口は2980万人で首都はアクラである。公用語は英語で、宗教は7割のキリスト教を中心にイスラム教信者が多い。現在はイギリス連邦加盟国であるが、かつてはイギリス領ゴールドコーストと呼ばれていた。1957年に独立を果たしたが、1970年代には軍事政権によるクーデターが頻発して国政は不安定な時代が続き、1992年軍事政権から民政に移管され民主化が進められた。
 主要産業は、かつては金・ダイヤモンド、カカオの産地として世界的に有名であったが、2010年以降、沖合油田での原油・ガス生産が始まり、英語圏であり政治が安定していることから、海外資本が流入して国際的に注目されている。名目GDPは約650憶米ドルを超え一人当たりの名目GDPは2200米ドルである。産業の形態は、農業と鉱業に依存する一次産品依存型で、そのため天候や国際市況の影響を受けやすい。労働者の半数は農業人口である。石油の生産が始まると実質GDP成長率は急激に伸長したが、原油価格の下落によって経済は大きく後退した。その後、IMFの支援プログラムによって財政が改善され近年は安定した成長を維持している。貿易国としては、中国、アメリカ、インドが中心となっているが、日本のODAや日系プロジェクトの進出などにより良好な関係を維持している。
 ガーナ労働組合会議(GTUC)は、組織人員約27.5万人で女性組合員の割合は30%、主要な産別組織は鉱業、商業、教職員、農業食品、石油化学が中心で、ITUC加盟である。

3.労働法制の法的枠組みと社会保障制度 

(1)労働法制

 ガーナの労働法制は2003年労働法が基本となっている。同法は20の部、179の条項で構成されており、公的雇用センターおよび民間職業紹介所、労働時間、安全衛生および労働環境、労働組合の結成、団体交渉、障がい者雇用、女性の雇用、若年層の雇用などに関する条項が含まれる。
また、社会的パートナーの行動指針となる制度的枠組みも定められており、全国三者委員会(NTC)や全国労働委員会(NLC)の設置もそれに含まれる。こうして、社会的対話と三者構成原則は労使関係の構造に組み込まれている。この三者とは、労働者、使用者、政府の各側同数による構成である。

(2)社会保障制度

①年金制度
年金制度は、2008年に制定、2014年に改正され、現在の国民年金法となっている。この国民年金法で定めた制度は、下記の三層構造の拠出型年金制度になっている。財源は労働者の基本給の18.5%分を社会拠出金(使用者13%、労働者5.5%の負担割合)として積み立てる。うち、第一階層に11%分、第二階層に5%分が充当される。

  1. 確定給付金型年金(DB)で、強制加入の基礎的国民社会保障である。これは、退職後に毎月支給される。また、けがや病気で働けなくなったときの保証、本人死亡時の遺族補償の役割も担っている。
  2. 確定拠出型給付(DC)の職業年金制度であり、加入期間に応じて退職時に一括支給される。
  3. 任意加入の個人年金であり、使用者と労働者がそれぞれ拠出金を積み立てて、制度加入者が定年に達した時などに一時金として支給される。

②国民健康保険制度
ガーナ国民が、経済的負担なく良質な医療を受けられるようにするための制度として設けられた。財源の一部は、上記の社会保障拠出金18.5%分のうち、年金制度に充当される分を除いた25%分が充てられる。国民健康保険制度の他の財源は、税や他の加入者の支払う保険料が充てられる。

4.労働組合が直面している課題と取り組み

(1)不安定雇用やインフォーマルセクター労働者の現状

 ガーナの労働法では、6か月以上雇用する労働者に対しては労働契約を締結することが義務づけられている。この契約には、賃金率、労働時間、年次有給休暇、解約通知の時期、社会保障制度の詳細などを明記しなければならない。しかし、こうした法規定にもかかわらず、多くの労働者、とりわけ臨時雇用労働者は労働契約の無い状態で雇用されている。こうした中で多くの民間の事業体では、常勤労働者が外部委託、下請け、パートタイム労働など臨時雇いの有期契約雇用に置き換えられている。
 また、ガーナの労働市場の特徴の一つはインフォーマル性の高さである。現在、インフォーマル経済は全労働者の約86%を占めている。

(2)ナショナルセンターの課題と取り組み

  1. ガーナ労働組合会議(GTUC)の課題は、一つに組織率の低下が挙げられる。組織率は2010年の24%から2016年には20.6%に低下している。この背景としては、政府が公共部門の新規採用をしなくなったこと、経済環境が厳しくなる中で、インフォーマル労働が増加していることが指摘される。こうした問題を解決する取り組みの一環として、GTUCはインフォーマルセクターで働く労働者の組織化に取り組み、組織化をした。
  2. GTUCでは、研究や教育活動にも力を入れている。労働組合のリーダーが、国の政策に影響を与えられるように、専門的な能力や知識を身につけるためのトレーニングを行っている。
  3. 若年層を中心とした失業率の増加が顕著にみられ、直面する大きな課題となっている。
    失業率は1999年の7.5%から2006年には3.1%に減少したが、2013年には5.2%、2017年には7.5%に再び上昇した。失業率は若年層において特に顕著で、15歳~24歳の失業率が2015年に14.4%、2017年に17.8%となっている。