2019年 ガーナの労働事情

2019年8月29日 講演録

ガーナ労働組合会議(GTUC)
ベルナルド アジェイ(Mr. Bernard Adjei)

ガーナ公務員労働組合 事務局長
マリー アコスア カリム(Ms. Mary Akosua Karimu)
ガーナ労働組合会議(GTUC)労働研究・政策副部長

 

1.労働情勢

 実質GDP(対前年増減率)は、2018年が6.3%であった。
 インフレ率は、2018年が9.4%であった。
 2018年の最低賃金は、時間額で1.21セディ、日額で9.68セディである。
 失業率は、2017年が7.5%であった。

  2017年 2018年 2019年(見通し)
実質GDP(%) 8.1 6.3 7.1
物価上昇率(%) 11.8 9.4 8.0
最低賃金(時間額)
    (日 額)
1.10セディ
8.80セディ
1.21セディ
9.68セディ
1.33セディ
10.65セディ
失業率(%) 7.5
労使紛争件数(件) 718 664
〔為替レート〕5.27セディ=1ドル(2019年8月16日現在)

2.ガーナの労働法制と社会保障制度

(1)労働法制

 ガーナの労働法制は2003年労働法が基本となっている。同法は20の部、179の条項で構成されており、公的雇用センターおよび民間職業紹介所、労働時間、安全衛生および労働環境、労働組合の結成、団体交渉、障害者雇用、女性の雇用、若年者の雇用などに関する条項が含まれる。
 また、社会的パートナーの行動指針となる制度的枠組みも定められており、全国三者委員会(NTC)や全国労働委員会(NLC)の設置もそれに含まれる。こうして、社会的対話と三者構成原則は労使関係の構造に組み込まれている。この三者とは労働者、使用者、政府の各側同数による構成である。

(2)社会保障制度

①年金制度
 年金制度は、2008年に制定、2014年に改正され、現在の国民年金法となっている。この国民年金法で定めた制度は、次のa)~c)に示す三層構造の拠出型年金制度となっている。財源は労働者の基本給の18.5%分を社会保障拠出金(使用者が13%、労働者が5.5%の負担割合)として積み立てる。うち、第一階層〔下記a)〕に11%分、第二階層〔下記b)〕に5%分が充当される。

  1. 確定給付型年金(DB)で、強制加入の基礎的国民社会保障である。これは、退職後に毎月支給される。また、けがや病気で働けなくなった時の保障、本人死亡時の遺族保障の役割も担っている。
  2. 確定拠出型給付(DC)の職業年金制度であり、加入期間に応じて退職時に一括支給される。
  3. 任意加入の個人年金であり、使用者と労働者がそれぞれ拠出金を積立て、制度加入者が定年に達した時などに一時金として支給される。

②国民健康保険制度
 ガーナ国民が経済的負担なく、良質な医療が受けられるようにするための制度として設けられた。財源の一部は、上記①で紹介した社会保障拠出金18.5%分のうち、年金制度に充当される分を除いた2.5%分が充てられる。国民健康保険制度の他の財源は税や他の加入者の支払う保険料などが充てられる。

3.不安定雇用の問題やインフォーマルセクター労働者の現状

 ガーナの労働法では、6ヵ月以上雇用する労働者に対しては労働契約を締結することが義務づけられている。この契約には賃金率、労働時間、年次有給休暇、解約通知の時期、社会保障制度の詳細などを明記しなければならない。しかし、こうした法規定にもかかわらず、多くの労働者、とりわけ臨時的雇用の労働者は労働契約の無い状態で雇用されている。こうした中で多くの民間の事業体においては、常勤労働者が外部委託、下請け、パートタイム労働など臨時雇いの有期契約雇用に置き換えられてきている。
 また、ガーナの労働市場の特徴の一つはインフォーマル性の高さである。現在インフォーマル経済は全労働者の約86%を雇用している。

4.労働組合が直面している課題と取り組み

  1. まず、組織率の低下が挙げられる。組織率は2010年の24%から2016年には20.6%に低下している。この背景としては、国が公共部門の新規採用をしなくなったこと、経済環境が厳しくなる中で、インフォーマル労働が増加していることが指摘される。こうした問題を解決する取り組みの一環として、私たちは、インフォーマルセクターで働く労働者の組織化に取り組み、彼らの労働組合を設立した。そして、この組織をガーナ労働組合会議(GTUC)のメンバーとした。
  2. ガーナ労働組合会議(GTUC)では、研究や教育活動にも力を入れている。労働組合のリーダーが、国の政策に影響を与えられるように、専門的な能力を身につけるためのトレーニングを行っている。
  3. また、若年層を中心とした失業率の増加が顕著にみられ、直面する大きな課題となっている。失業率は1999年の7.5%から2006年には3.1%に減少していたが、2013年には5.2%、2017年には7.5%に再び上昇した。失業率は若年層において特に顕著で、15歳~24歳の若年失業率は、2015年が14.4%、2017年が17.8%となっている。