労使紛争未然防止セミナーを開催
国際労働財団(JILAF)は、9月26日、「海外労組トップリーダー・有識者聞く!~アジアで増大する労使紛争を未然に防止するために~」をテーマに、労使紛争未然防止セミナーを開催し、労働組合、企業、行政、研究者、学生など約150人が参加した。
開催冒頭、JILAF髙木理事長は「近年アジアに進出する日系企業で、労使紛争が起きている。現地の法律・ルールに沿っていない事業運営をした場合にトラブルが発生することが多く、現地の事情を理解することが重要だ。本日はインドとインドネシアの労働組合ナショナルセンター役員にお越しいただき、また、ベトナムの事情に詳しい会川氏からも現地の事情をご報告いただく。3国の労使関係は異なり、本日のセミナーを通じ、多様なアジアの労使関係についての理解を深め合いたい。」と挨拶をした。
次に大阪女学院大学香川孝三教授より、「アジア諸国の労使紛争の現状について」をテーマに基調講演が行なわれ、おもにインド・インドネシア・ベトナムにおける現状と課題について詳細な報告がされ、良好な労使関係を確立するためには相手国の労働慣行、宗教、文化に十分な認識と理解を持ったうえでの意思疎通が欠かせないと強調した。
続いて行われたパネルディスカッションでは、インドネシア労働組合総連合(CITU)サイード・イクバル会長、インド全国労働組合会議(INTUC)R.D.チャンドラシェカール青年労働委員会主査、(株)会川アジアビジネス研究所会川精司代表より、インド・インドネシア・ベトナムにおける労使関係・労働争議の最新事情などについて報告がされ、参加者との質疑・意見交換が行われた。
報告の中で、イクバル氏は、インドネシアの労働者は生計費を満たしていない最低賃金で働いていることや、派遣や請負などのアウトソーシングの問題等について言及した。また、チャンドラシェカール氏は、インドにおける労使紛争が外資系の自動車産業で多いこと、同じ仕事をしていても正規・非正規で労働条件が違うこと、職業訓練を受けられない問題があることなどの報告があった。会川氏からは、ベトナムにおける日系企業の労働組合づくりの問題や、部外者であるアウトサイダーが労働者へ賃上げ要求をするよう仕向けることからくる混乱などの問題点について指摘がなされた。
最後にJILAF團野専務理事は「今、世界経済は大きな構造変革が始まっており、その中でもアジア地域の発展は大変重要な意味を持っている。建設的な労使関係の構築が急務であり、そのためにJILAFはアジア各国で労使関係セミナーを開催してきた。そうした経験を踏まえ本日のセミナーを企画したが、参加された方々にとって参考になれば幸いである。」と、まとめの挨拶を行なった。