国際シンポジウム・ASEAN諸国における最低賃金動向

 国際労働財団(JILAF)は11月28日、国際シンポジウム「ASEAN諸国における最低賃金の動向―国民生活の向上のために労働組合は何をなすべきか―」を日本教育会館で開き、連合構成組織、行政関係者、研究者、経営者団体など約80人が参加した。
 このシンポジウムでは、①各国の最低賃金の状況②労働組合の取り組み――などについて、過去の招聘参加者を対象とした再招聘チームのインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの代表者6人が報告を行なった。
 ASEAN諸国はめざましい経済成長を見せる一方で、企業の利益が公正に労働者に配分されず、所得の格差は著しく拡大している。また、急激なインフレにより国民の生活は厳しさを増しており、賃金をめぐる労使紛争も多発している。
 このような状況の中で、ASEAN諸国の労働組合は国民生活をどのように守っていくかという課題に迫られ、最低賃金引き上げの動きが活発化していることなど、労働組合の最低賃金への取り組み状況について報告した。論議の中では、①都市部と地方との経済をはじめとしたさまざまな格差②法制度の施行状況③政府・経営者と労働組合との認識の差――など、日本をはじめとした各国の共通課題も認識した。また、各国に進出している日系企業は、法律に基づき最低賃金を適用しているが、多国籍企業の中には法定最低賃金を適用していない企業も多く、国内での法制度への対応の温度差、適用除外となる労働者に対する対応、最低賃金が低いことにより多くの労働者が生活困難な状況にあることなどの課題を抱えている。各国労働組合は、今後も政府に働きかけを続け、多くの労働者が最低限必要な賃金を受け取れることをめざしている。
 日系企業の生産拠点が中国からアジア地域にシフトしていくという見方もある中で、日本においてASEAN諸国の最低賃金の動向が注目されており、パネルディスカッションでは最低賃金の決定方法や適用状況などについて、活発な質疑が行なわれた。

シンポジウムの様子

参加者からの報告

パネルディスカッションの様子