2020年度労使紛争未然防止シンポジウムを開催

シンポジウムでの質疑応答の様子

 2021年1月28日(木)に「建設的な労使関係の確立で社会経済の発展と労働者生活の安定を」をテーマに、労使紛争未然防止シンポジウムをオンラインで開催しました。今回は、インドネシアの労働組合代表、インドネシアの日系企業の人事担当者、マレーシアの労働組合代表、使用者側代表、日本の有識者にご登壇いただき、日本の労働組合関係者、企業関係者、学識・研究関係者など、計56名に参加いただきました。

 JILAF南雲理事長の主催者挨拶の後、インドネシア及びマレーシア両国から、労働情勢も含めた労使紛争の現状と未然防止のための取り組み課題について報告を受けました。

【発言要旨】
<マレーシア労働組合会議(MTUC)>
 マレーシアでは労使関係は基本的に良好で、大きな争議行為は30年以上発生していない。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、労働争議となりうる事案、例えば、一方的な賃金引下げや人員整理、それに乗じた組合潰し、出稼ぎ労働者への契約終了前の本国送還、などが多数発生している。
 マレーシアは外国人労働者が多く、労働力人口の30%以上を占めている。不法労働者もその中に含まれており、MTUCでは、それらの組織化を一番大きな課題と考えており、外国人労働者も含めた組織化を全国的に進めている。また、政府と協力しながら職業技術教育訓練を行っている。
 労使関係を考える上で、相互の信頼と尊重が重要だが、そのためにも適正な採用や研修、キャリア開発、透明性のある双方向の意思疎通が必要である。さらに、有能な人事担当者と、理性的な組合代表でなくてはならない。

<マレーシア経営者連盟(MEF)>
 今までマレーシアはルック・イースト政策として、日本的な慣習である企業別組合が取り入れられ、70・80年代に組織率は急速に上昇していった。しかし、従来型の経済への課題が出てきており、ギグエコノミーなどの新しい働き方、サービスの提供の仕方が増えている。
 労使紛争防止措置については、加盟企業に様々なサービスを提供し、ルールや義務の周知に取り組んでいるほか、労働安全衛生に関しての講義や教育研修などを提供している。また、団体交渉や斡旋の場で、労働法の専門家とチームを組んでサポートを行っている。
 MEFは技能の向上や再訓練の他、労働者の多能化、マルチタスク化もねらっている。労働組合と協力して、雇用を減らさずにそれを進めていくことが必要だと考えている。
 さらに、長期的な目線で、大学とも協力をして、様々な学業的な資格を労働者に与える訓練も行っており、そういった取り組みによって、加盟企業内の労使関係をよくしていくことに貢献できると考えている。

<連合総合生活開発研究所 麻生氏による解説>
 マレーシアでは、多党制の下での二大政党連合で、近年、短期間のうちに2度にわたる政権交代があった。また、労働組合の規制が日本よりも厳しく、組合を結成して交渉を行うということに関して、国の承認も使用者側の承認も必要である。
 マレーシアは「中所得国の罠」が特徴としてよく言われるが、2021年以降はプラスに改善の見通しで、脱出も近いと言える。人口増加も順調で、2050年ぐらいまで人口ボーナス期が続く見込みである。マレーシア経済は、外国人労働者への依存が大きく、就業者全体に占める比率は15%程度、不法労働者も入れると30%以上とされている。また、賃金・収入面での問題として、民族間の格差が指摘されていたが、都市・農村間の格差が大きく出てきている。
 今後、自由貿易の進展のなかで労使関係の在り方がどう変化していくか注視する必要があり、今後の課題は、ギグエコノミーやインフォーマルセクターで働く労働者への対応や組織化である。

<インドネシア労働組合総連合(CITU/KSPI)>
 新型コロナウイルス感染症の影響により、インドネシアの労使環境にも大きな影響が出ている。完全失業率は増加し、インフォーマルセクターで働く労働者の失業が大幅に増加している。解雇が増えたことでそれに乗じた組合潰しや賃金問題なども発生している。
 政府は解雇を防ぐために対策を行っており、職業トレーニングや、企業への給与補助、医療従事者への奨励金、一部手当や賃金支払いの柔軟な対応などを行った。KSPIとしては、経営者側が有利になり、労働者へのメリットが少ないことなどから一部批判している部分もある。KSPIは、生産コストを削減しながら、賃金は同額で支払うことや、金融・財政対策、原材料の輸入手続きの簡便化、庶民を対象とした現金給付、影響の多い産業への給付金の給付などを政府に求めている。

<ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)>
 MMKIでは労使関係は良好で、組合代表者と経営陣とで月例会議、定期的な夕食会を行っている。また、従業員のモチベーションを高めるために、従業員間の関係強化の目的も併せて、従業員の集いと、従業員の家族の集いを行っている。福利厚生なども様々に整えている。
 良好な労使関係を背景に、プロジェクト立ち上げの協力の他、労働協約の策定など、労働組合は会社のあらゆる活動や方針を支援してくれている。また、部署別会議による内部関係の強化や、コロナ対策の周知徹底などにも労働組合の協力は大きい。
 良好な労使関係には、意思疎通のための透明性、情報の公開性がとても重要である。

 その後、参加者からの質疑応答を行いました。質問は多岐にわたりましたが、「技術革新が雇用に与える影響」「人材育成や良好な労使関係の構築に向けた取り組み」「今後の労使関係の課題」等について質問があり、各国労使の対応や、具体的な取り組みが語られました。

 最後に、JILAF塩田常務理事は、「コロナショックから企業経営が不安定化し、労使関係に影響を与えているという報告もあったが、変化する経済・労働環境の中で、経済活動の担い手である労使が、いかに雇用を安定させ豊かな社会を実現していけるかが問われている。労使関係の安定は、国や企業だけが取り組んでいるのではなく、一人ひとりが自分事として、日頃の活動や生活に取り入れていくことが、大きな前進につながると考えている。」と述べ、シンポジウムを終了しました。


※なお、質疑応答のうち、通信不調により中断せざるを得ず回答が不十分になってしまった部分については、別途文書で回答を入手し、参加者にはメールで送付しました。

質疑応答の様子②