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トランプ大統領が各省庁の労働協約破棄への行政命令

2025.04.02掲載

3月28日のワシントン・ポストは「連邦政府の縮小を進めるトランプ大統領が20数省庁における労働協約破棄の行政命令に署名した」と報じた。

ホワイトハウスは「命令は国家安全保障への懸念から団体交渉権を停止するもので、遅滞なく行動を進める必要がある」と説明したが、関係省庁には国防省、退役軍人省、国務省、司法省、国土安全省などのほか安全保障にはあまり関係のない健康、人事、内務、エネルギー、商務省なども含まれる。
行政命令から数時間後には8省庁がテキサス連邦裁判所に対して、行政命令を受けての労働協約無効宣言を申し立てたが、判断は同州のトランプ任命判事の手に委ねられる。

これに対しアメリカ政府従業員労組(AFGE 80万名)は訴訟に訴えるとしているが、連邦政府には230万人の職員が在籍し、組合員は125万人を数える。
これら公務員労組はイーロン・マスクが進める政府機構の縮小に強く反対して、各地の裁判所に訴訟を起こしており、ナショナル・センターのAFL-CIOもトランプ政権が進める労働組合潰しの「プロジェクト2025」を強く非難している。同プロジェクトの立案者は「公務員労組は歴史的に民主主義にはそぐわない存在であり、議会がその適性を審議するよう」主張している。

これについて民主党指導部は「トランプ政権はかつて見られない反労働組合主義にある」と糾弾しているが、トランプ側は労働協約破棄の権限は1978年の市民サービス改革法に定められた国家安全保障にあるとして、公務員権利の制限を財務省、環境保護庁、情報委員会、国家科学財団などにも伸ばしている。しかし警察官労組と消防士労組は除かれているが、両労組は2024年の選挙時にトランプを公式推薦した労組である。
この点についてコーネル大学のクレイトン部長などは「トランプは彼の地盤には迎合した。しかし、それ以外の公務員にはあからさまな報復を仕掛けており、組合は要らないと告げている」と指摘する。

トランプ政権への訴訟に対する判決からは幾つかの裁判所が差止命令を出しているが、それでも多くの公務員の現状は宙ぶらりんに置かれている。全国看護師労働組合のある幹部は「トランプ命令は我々に対する平手打ちだ。パンデミック患者の手当にあたった我々を今、国家安全保障への脅威と呼ぶ茶番だ」と呼ぶ。

公務員は従来から市民サービスの観点から各種の制限を受けており、ストライキや賃上げ交渉が出来ない。しかし、カーター大統領時代に労組加入の権利や団体交渉権が認められたが、これも市民サービスや国家安全保障への脅威とならないよう活動制限を受けながらも、公務員をフェアに取り扱うためのものであった。

なお、上述の行政命令に呼応する8省庁からの訴訟だが、これは労働組合の訴訟戦術に対応する動きとして、組合有利の判決の流れが固まる前に政権支持の裁判所に訴訟を起こして組合に対抗しようとするものだが、原告に有利な判決を期待しての判事ショッピングには立法界や司法界からも懸念の声が高い。
以上