2024年 オーストラリアの労働事情(先進国チーム)
以下の情報は招へいプログラム「先進国チーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。
参加者情報
オーストラリア労働組合評議会(ACTU)
1.はじめに
現在、オーストラリアの労働組合運動は、より良い労使関係法の制定を求めてキャンペーンを展開している。この2年間に大きな前進を遂げ、オーストラリアの労働者の生活を改善するための新しい法律が制定された。
以下、本レポートは今回の参加者からの報告の要旨をまとめたものである。
2.オーストラリアの労働事情
(1)直近に発生した問題視されている労働問題
金融業界における事例である。
- 現状
オーストラリアではAIに関する規制がないため、企業は現在、実質的に自由にAIを利用することができる。AIの使用有無、また、どのようにAIを活用しているかを開示する義務は企業にはないため、労働者はAIの導入・使用について全く知らないという状況に置かれている。
- 主な問題
- AIの導入・使用について会社から全く説明がないこと。
- 解雇や、労働者の評価等、重要な意思決定においても、AIが関与する可能性があること。
- AIの導入によって労働者が余剰労働力とみなされ解雇される可能性があること。
- 金融部門労働組合の主張とそれに対する経営者の反応
労使交渉を通じて、企業別労働協約にAIの使用を管理する条項を盛り込み、労働者にAIの生産性向上分の利益を分配するよう求めている。現在、使用者は原則として無制限にAIを使用できるため、こうした条項に抵抗し続けている。オーストラリアでは、金融業全体で争議が続いており、AIの導入はいぜんとして喫緊の問題である。
(2)社会保障制度
オーストラリアの社会保障制度として、以下のグループに年金を支給している。原則、大きな資産や収入のない人に支給され、収入調査が行われる。
- 高齢者年金:67歳以上で離職した人
- 障害者支援年金:21歳以上の人(障害評価を実施)
- 子育て支援年金:14歳未満の子供を持つ独身者
- 介護者支援年金:障害のある人を介護している人
- 青少年手当:16~24歳のフルタイムの学生など
- 所得支援金:求職者
- 全国障害者保険制度:障害を持つ人に対して専門医療を提供
(3)労働法制
直近の労働法の改正により、以下の権利と保護が導入された。
- 職場代表者の権利
- 使用者の解雇権に対する制限
- 賃金未払いの刑事罰化
- 非正規雇用のていぎと正規雇用への転換の道筋の変更
- 労働者派遣の規制
- 職場における権利に反する労働契約の禁止
- 企業別労使交渉に関する変更
- 雇用の安定、男女平等、雇用の柔軟性に関する「職場における尊重」制度
- 有期契約に関する制限
- 派遣労働者の「同一労働、同一賃金」