活動報告 各国の労働事情報告

2024年 パキスタンの労働事情(トルコ・パキスタンチーム)

以下の情報は招へいプログラム「トルコ・パキスタンチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

パキスタン労働者連盟(PWF)(以下、PWF加盟組織)

-家事労働者労働組合

-パワードビル労働組合

-ファイサラバード支部

-繊維工場労働組合

-バルチスタン州支部

-ヒンド州支部(加盟)タイトル市支部農業関係労働者組合

技術教育・職業訓練庁(TEVTA)

-職員労働組合

基本情報

人口:2億4,149万人(2023年、国勢調査)

宗教:イスラム教(国教)

政体:連邦共和制

主要産業:農業、繊維業

GDP:3765.3億米ドル(2022年、世界銀行)

失業率:6.4%(2022年、世界銀行)

 

2.パキスタンの労働事情

  • パキスタン労働者連盟(PWF)加盟家事労働者労働組合

2007年に労働組合組織の申請、2014年に労働合設立、2019年に法律に基づき正式認可された。

大きな課題としては、家事労働は経済的に大きな役割を果たしているが、社会的に低い立場で一方的な解雇がなされることであり、長時間労働、低賃金、衛生状況が考慮されないことが問題である。家事労働者にも、労働者に備わる権利が尊重されるよう、資料やパンフレットを作成し、未成年者を雇ってはいけない事などを周知し、改善することができた。また、これまでは家事労働の給与に関して基準となる額が無かったが、最低賃金として月給32,000ルピーと定められた。

  • パキスタン労働者連盟(PWF)加盟技術教育・職業訓練庁(TEVTA)職員労働組合

技術教育・職業訓練庁(TEVTA)は若年層が技術を身に付ける目的で設立され、約500の学校を有する。2・3・6ヵ月・1年コースがあり、様々な技能を身に付けることができる。

TEVTA職員労働組合の現行課題は、非正規労働者の正規化である。このうち、手当について、正規職員と同様に受け取ることができるよう要求していたが、支給されないため、ストを実施した。2007年に36日間続く長いストを実施し、うち、6日間は議会事務所前でデモを実施した。その後も交渉を続け、2016年に手当の課題が解決した。非正規労働者の正規化について、引き続き活動を進めている。

  • パキスタン労働者連盟(PWF)加盟パワードビル労働組合

2008年に労働組合が設立された。

課題は労働者の正規化である。経営側に交渉したが、経営者側が断ったため、結果として2010年にストを起こした。その2日後の労使交渉で決着し、全てのメンバーが正社員になったが、その間、工場の生産が減少し、労働者も影響を受けた。この経験は、労使双方にとって良い教訓となり、その後の諸手当の給付や、福利厚生の一環として、労働者のための食堂、労働者の子供のための保育施設を作ることなどにつながった。この他、1ヵ月以上の仕事を継続した労働者に、1日の給料に当たるボーナスが給付される等、様々な施策が経営者側からとられた。結果として、生産性が高まり、労使共に利益を享受することができた。

  • パキスタン労働者連盟(PWF)加盟パキスタン全国運送労働組合ファイサラバード支部

運送業はパキスタンにとって重要な日常生活の基盤であるが、運送業に携わる労働者の待遇は劣悪である。パキスタンの失業の課題は深刻で、高学歴な者も運送業の仕事に就くケースが多い。仕事は見つかり易いが、給与などの水準は低い。また、児童・高齢者が運輸業に就業する例が極端に増加している。パキスタンでは14歳未満の子どもの就業は法律違反であるが、厳しい経済の中で仕事をさせざるを得ない状況にある。ITF(国際運送労連)がILOと協働し、ILOパキスタン支部がパキスタン政府に対し、運送業に関する規制を設ける働きかけを行う予定である。

  • パキスタン労働者連盟(PWF)加盟繊維工場労働組合

1975年に社内の企業別労働組合として設立された。

コロナ禍、250名の労働者が職を失い、解雇された。材料(全て輸入品)が輸入されない為に、深刻な解雇となった。経営者側と交渉し、1年半後に210名の労働者を復帰させる事に成功した。その後、パキスタン労働組合連盟(PWF)に加盟し、残り40名の復帰を要請し、結果31名が復帰した。残り9名については裁判を行っている。

  • パキスタン労働者連盟(PWF)バルチス

パキスタン・バルチスタン州はパキスタンで最も面積が広く、人口は最も少なく、700㎞以上の海岸線を有する。バルチスタンでは、52種類の様々な天然資源(金、銅、石炭、大理石、天然ガス等)がある。

労働者は、最低賃金(給料)が32,000ルピー、公営企業、民間企業、産業特区の3分野で働いている。民間企業の多くの労働者は、炭鉱、レンガ造り、漁業と農業に従事しているほか、産業特区で働いている労働者もいる。

課題の多くは労働者の安全衛生である。鉱山労働者の作業中の事故は日常的で、毎年約200人の労働者の尊い命が失われ、約300人以上が重傷者となり、2024年は5カ月間で60人以上の労働者が命を落としている。鉱山労働者は衛生的な飲料水などの提供もないなど、劣悪な労働条件の中で就業している。レンガ造りでは、児童労働と強制労働が最も深刻な課題である。

パキスタン労働者連盟(PWF)バルチスタン州支部は、これまで組織化が進んでいなかった産業の組織化を推進してきた。漁業やレンガ造り業において労働組合を結成し、州内で初めて、当該産業の労働組合が労働法に基づいて認定・登録された。また、女性労働者を組織化し、バルチスタン州支部加盟家内工業組合及びが設立された。

気候変動(大雨・洪水)の為に、数万人が家や食を失い、数多くの人々が命を落とした。PWFは被害を受けた地域で、ILO及びITUC協力の下で、「仕事の報酬を現金で」(CASHFORWORK)という活動を行っている。

  • パキスタン労働者連盟(PWF)加盟農業関係労働者組合

パキスタン・ヒンド州はパキスタンの南側に位置し、西側は山々、東側はインド国境と接する。農業が主産業であり、生活日常品や、野菜の生産で有名な地域である。タイトル市は人口240万人であり、パキスタンでは5番目に大きい、中心的な市である。

直面する課題は①労働者の基本的な人権が無視されている、②現場の労働者に必要な各国・組織の支援物資や保護具が届かない、③政府内に貴重な設備があっても利用されない、④2020年の大洪水の影響が続いている、⑤労働者が権利を認識・理解していない、⑥労働者の技能訓練が必要である、ことである。

課題を解決するために、経営者側と話し合い、やるべきことのリスト化を行った。リストをもとに引き続き活動を行っていきたい。