2024年 トルコの労働事情(トルコ・パキスタンチーム)
以下の情報は招へいプログラム「トルコ・パキスタンチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。
参加者情報
トルコ真正労働連盟(HAK-IS)(以下、HAK-IS加盟組織)
-サービス産業労働組合(Hizmet-IS)
トルコ労働組合連盟(TURK-IS)(以下、TURK-IS加盟組織)
-トルコ協同組合・商業・事務職労働組合(KOOP-IS)
-トルコ建設労働組合(YOL-IS)
基本情報
人口: 85,279,553人(2022年、トルコ国家統計庁)
宗教: イスラム教(スンニ派、アレヴィー派)が大部分を占める。
政体:共和制
主要産業:サービス業(52.7%)、製造業(22%)、工業(31.1%)、農業(5.6%)(対GDP比(%)2021年世銀)
GDP:9,055億ドル(名目、2022年トルコ国家統計庁)
経済成長率:5.6%(2022年トルコ国家統計庁)
失業率:10.3%(2022年トルコ国家統計庁)
2.トルコの労働事情
- トルコ真正労働連盟(HAK-IS)
トルコの労働組合は公務員組合、労働者組合に分かれ、公務員組合は11産業、労働者組合は20産業の労働組合が存在する。労働組合の設立自体は数人集まれば設立可能であるが、当該労働組合が単一事業所において団体交渉権を得るためには、当該産業における労働者の1%以上の労働者数を有する事が条件であり、活動の大きな妨げとなっている。
トルコの労働組合の組織率は15.22%である。HAK-ISは1976年アンカラで設立され、21の産業別労働組合が加盟しており、組合員は約90万人である。女性委員会、青年委員会、障がい者委員会など11委員会で活動を展開している。
HAK-ISは資格試験及び資格取得センターを有し、労働者が資格を取得するためのサポート活動を展開している。また、労働組合の組織化に関して、大学レベルの学術的な研究を普及させる為に、高校生や大学生を対象にした研修制度を導入した。
トルコでは、労働者の26%(4人に1人)が社会保障を受けることができない「無記録雇用」と呼ばれるインフォーマル労働者として就業している。中でも、農業分野におけるインフォーマル労働者数がもっとも多く、労働者の80.7%を占める。特にコロナ禍において、社会保障を受けることができない労働者の存在は大きな社会問題となった。HAK-ISは組合員全てが社会保障を受けることができるよう、活動を行っている。
トルコでは、労働者の雇用の保障がいくつかのステータスに分かれ、公務員労働者は雇用が手厚く保障されているが、民間産業の労働者の雇用の保障はなく、何らかの理由での解雇は常にある。また、法で禁じられているが、組合員であることを理由に解雇されるケースも多数ある。
トルコでは約1000万人の女性がなんらかの形態で仕事に従事しており、内、約400万人が被雇用者である。約45万人が労働組合に加入し、内、約25万人がHAK-ISに加入し、国際労働組合総連合(ITUC)及び欧州労働組合連合(ETUC)に女性代表を立てている。
HAK-ISは1万8500人の家事労働者を組織化し、ILO第189号条約「家事労働者の適切な仕事に関する条約」批准に向けた戦いを続けている。ILO第190号条約については、批准はされていないが、家事労働派遣事業者との団体交渉の場に持ち込み、労働協約に「暴力とハラスメント撤廃」に関する項目を盛り込むことに成功した。
HAK-ISの活動の主な目的は、暴力に対して一切容認しない政策の実現、ディーセントワークの実現、女性の負担となっている介護の責務を社会が担うことで軽減させることである。加えて、インフォーマル雇用(無記録雇用)をなくす活動を展開している。
- トルコ真正労働連盟(HAK-IS)加盟サービス産業労働組合(Hizmet-IS)
Hizmet-ISは1979年にトルコの自治体労働者をベースに作られ、一般・サービス業におけるトルコ最大の組合である。組合員数は約30万人でHAK-ISと国際公務労連(PSI)に加盟している。
- トルコ労働組合連盟(TURK-IS)加盟トルコ協同組合・商業・事務職労働組合(KOOP-IS)
トルコの労働協約は、団体交渉権を有する労働組合と使用者側の間で執り行われ、団体交渉の期間は、最初の会議が行われた日から60日間である。
使用者側は労働者を差別することはできない。賃金以外の労働条件、例えば、休憩時間や年次休暇の利用などの規定は、労働者が組合員であるなしに関わらず、全ての労働者に適用される。この10年間の活動において、外資であるアディダス、ナイキと労働協約を締結することができた。現在、多くの労働者がワークライフバランスを確保する為にも、一週間の労働時間が40時間で、一週間に2日の休暇が必要であるとして活動を進めている。
- トルコ労働組合連盟(TURK-IS)加盟トルコ建設労働組合(YOL-IS)
土木産業に関する下請けは、下請け企業が専門的なスキルや知識、技術をもつ労働者を提供するのが一般的であるが、実際は、雇用関係を隠し、税金や社会保障の支払いを逃れるために、下請けが利用されており、労働災害に対する未保障、給料の未払いが起きている。YOL-ISは2010年にこれらの労働者を対象に組織化を開始し、1万人以上の下請け企業の労働者の組織化に成功した。