活動報告 各国の労働事情報告

2024年 台湾の労働事情(先進国チーム)

以下の情報は招へいプログラム「先進国チーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

1.はじめに

中華民国全国総工会(以下、CFL)は、台湾人と外国人労働者の権利保護に尽力している。70年以上の歴史を持つCFLは、台湾で歴史のある労働組織であり、現在42の加盟組合で構成されている。近年、CFLは台湾の外国人労働者の労働権保護の問題に取り組んでいる。台湾の出生率が急速に低下し、労働力が不足しているため、多くの外国人が台湾で雇用・採用されているが、低賃金や劣悪な生活環境など、様々な問題を引き起こしている。CFLは、台湾の労働者を保護し、平等な待遇を受けられるようにする法律をより適切に計画および実施するために政府と継続的に協議している。

以下、本レポートは今回の参加者からの報告の要旨をまとめたものである。

 

2.台湾の労働事情

(1)直近に発生した問題視されている労働争議

外国からの出稼ぎ漁船員に係る最近の労働争議では、外国人漁船員のグループが雇用主に対し、未払い賃金と劣悪な労働条件を訴えて勝訴した。外国人漁船員らは、1日18時間以上、休憩も食事もほとんど与えられず、賃金は契約で合意された額よりはるかに低いと主張した。何か月もの交渉の後、地元の労働組合の支援を得て、裁判所に提訴した。裁判所は外国人漁船員側に有利な判決を下し、雇用主に未払い賃金の補償と船上の労働条件の改善を命じた。この訴訟は、台湾の漁業における外国人労働者の搾取であるとして、新たな注目を集め、より強力な労働者保護とより透明性の高い監視を求める声を引き起こした。この解決は、弱い立場の労働者にとって集団行動と法的救済の重要性を浮き彫りにした。

 

(2)社会保障制度

台湾の社会保障制度は、国民に経済的保護と福祉サービスを提供するために設計された包括的な枠組みであり、制度には、医療、所得保障、退職、社会的弱者への支援に取り組むことを目的としたさまざまなプログラムがある。

  • 国民健康保険:国民および台湾居住者全員にユニバーサルヘルスケアを提供する公的医療保険制度である。病院での治療、外来診療、予防医療、処方薬など、幅広い医療サービスを保証している。この制度は、雇用主、従業員、政府が支払う保険料の組み合わせによって資金が賄われている。
  • 労働保険:労働者にさまざまな給付を通じて所得保障を提供しており、退職年金、障害および遺族給付、出産および失業給付が含まれる。
  • 国民年金制度:労働保険に加入していない個人(フリーランサーや自営業者など)に対して、退職後の基礎収入を保障する。また、障害年金や遺族年金も支給される。
  • 公的扶助と社会福祉:低所得世帯、高齢者、障害者に経済的援助を提供している。これには、住宅補助、教育支援、生活手当が含まれる。政府はまた、先住民族や恵まれない環境の子どもなど、特定のグループを対象としたプログラムも提供している。
  • 長期介護サービス:高齢化社会のニーズに対応するために長期介護サービスを導入している。この制度は、高齢者や障害者に在宅介護、施設介護、地域ベースのサービスを提供するもので、政府は、社会保障政策の一環として、この長期介護サービスを継続的に拡充している。

台湾の社会保障制度は幅広いニーズをカバーしているが、持続可能性を確保するため、人口の高齢化、出生率の低下、所得格差が課題として議論されており、継続的な改革が必要とされている。

 

(3)労働法制

台湾は国連に加盟していないが、労働法制を守ることに尽力している。包括的な人権政策を確立し保護を強化するため、2022年5月、国家人権行動計画(2022-2024)を導入した。この計画は、LGBTIの人々、ホームレス、移民労働者、高齢者、女性、子ども、障害者、難民などの恵まれないグループに特に重点を置いている。この取り組みは、政府が国際人権義務を果たす意欲を示すとともに、国連が加盟国に行動計画の策定を奨励していることと一致しており、台湾の人権基準を継続的に引き上げている。