活動報告 各国の労働事情報告

2024年 韓国の労働事情(先進国チーム)

以下の情報は招へいプログラム「先進国チーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

1.はじめに

韓国労働組合総連盟(以下FKTU)は、2024年下半期に政府の労働政策と闘うため、「闘争と交渉」の両立に焦点を当てている。社会的対話を通じて議論されている主な問題は以下の通りである。

  • 労働市場の二重構造
  • 気候危機と産業転換の中での雇用の安定
  • 少子高齢化の課題への対応
  • 脆弱な状況にある労働者の保護と権利の確保

FKTUの3つの主要立法優先事項の一つ目は、「労働組合・労働関係調整法(第2条および第3条)の改正」である。これらの法律は第21回および第22回国会で可決されたが、大統領によって2度拒否権が発動された。「黄色い封筒法」とも呼ばれるこの法律は、ストライキ中に発生した損失に対する労働組合への損害賠償請求を制限し、労働関係における「使用者」の定義を拡大することを目的としている。二つ目は、「社会連帯法」である。これには、従業員5人未満の職場への労働法の適用、プラットフォームおよび特別契約労働者の保護、同一価値労働同一賃金の確保などが含まれる。三つ目は、「年金制度の劣化防止」である。FKTUは、国民年金制度が50%の所得代替率を保証すること、年金受給資格年齢に合わせ定年を65歳に延長すること、医療・介護の公的制度を強化することを要求している。加えて、FKTUは週4日制の導入、賃金滞納の撤廃、差別的最低賃金適用の廃止、労働者を中心とする産業の公正な移行を推進している。

以下、本レポートは今回の参加者からの報告要旨をまとめたものである。

2.韓国の労働事情

(1)直近に発生した問題視されている労働争議

FKTU加盟の韓国金融産業労働組合は現在、週4.5日制(週36時間労働)を求めて闘ってきた。使用者との20回にわたる交渉の後、労働組合は交渉決裂を宣言し、ストライキを決行することとした。2024年9月、韓国金融産業労働組合と使用者側は2.8%の賃上げと幼い子供を持つ従業員のためのフレキシブルな始業時間を含む暫定合意に達した。その結果、労働組合は予定していたストライキを中止した。両者は来年、労働時間短縮の影響に関する共同調査を実施することで合意した。

 

(2)社会保障制度

韓国の社会保障制度は、「社会保険」、「公的扶助」、「社会福祉サービス」で構成されている。社会保険は、労働災害、失業、疾病をカバーするもので、個人、使用者側、政府からの拠出金で賄われ、高所得者ほど拠出金が高くなる。基礎年金や社会福祉サービスのような公的扶助プログラムは、子ども、高齢者、障害者などの社会的弱者を対象としており、基本的な生活水準を維持するための支援を行っている。

政府は保険料の引き上げと支給額の削減という世論に逆行する年金改革を進めており、FKTUはこれに反対している。国民の56%が年金給付の強化(所得代替率50%、拠出率13%)を支持しているが、政府案は拠出率を13%に引き上げる一方、所得代替率を42%に引き下げるものである。さらに、失業手当の変更も提案されており、5年以上繰り返し受給している人については、支給額を最大50%減額するというものである。

こうした社会保障改革に対しFKTUは、社会保障制度に逆行する改革に反対し公的年金、健康保険、失業保険を維持するよう主張している。主な要求には、年金の所得代替率50%の成文化、退職年齢と年金受給資格の整合化、基金ベースの退職年金制度の導入、所得に基づく普遍的雇用保険の確立などが含まれる。

(3)労働法制

 韓国の主な労働法には、最低労働基準を定める「労働基準法」と、集団的労働関係や紛争を規定する「労働組合・労働関係調整法」がある。しかし、従業員5人未満の企業で働く労働者は、不当解雇防止や時間外労働手当などの重要な規定の対象外となっている。FKTUは、現在労働法の保護範囲から外れているプラットフォーマーやフリーランサーを含むすべての労働者に、これらの保護を拡大するための改革を求めるキャンペーンを行っている。具体的には、労働基準法を従業員5人未満の職場に適用すること、労働組合・労働関係調整法(第2条および第3条)を改正すること、定年を65歳に延長すること。また、団体協約の拡大、労働組合活動のための休暇制限の廃止、週4日制の導入、賃金滞納の撤廃、最低賃金の差別的適用禁止などの改革も主張している。