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港湾労働組合支援に回ったトランプ次期大統領

2024.12.28掲載

12月12日と14日のニューヨーク・タイムズは「トランプ次期大統領はオートメーション反対のストライキを示唆する東海岸・港湾労組への支援を表明した」と報じた。

 

国際港湾労働組合(ILA 45,000人・ダゲット会長)は東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者を代表する組合だが、大統領選挙では民主党ハリス支援の代わりに、トランプ氏を応援した。

そのILAは去る10月1日に賃上げとオートメーション導入を巡ってストライキに入ったが、経済への影響を懸念したバイデン大統領の仲介もあり3日に終了、賃上げは6年間で63%というブルーカラーとしての米国最高給を獲得しつつ、オートメーション問題は来年1月15日までを交渉期限に持ち越された。

 

オートメーションは人的操作無しにコンテナを積み下ろし、トラックに積載する半自動化クレーンなどの設備を導入するものだが、ILAは雇用を減らすとして反対。トランプ氏も「自動化節減の経費と労働者の受ける苦痛とは比較にならない」として港湾労組への同情を示し、大統領当選への応援に回った労働組合への支援を明らかにした。これについてダゲット会長は「我々のために、オートメーション化を進めて利益を本国に送金する外国資本の港湾業者に対し、トランプ氏が立ち上がってくれた」とコメントした。

 

ILAは米国コンテナ輸送の5分の3を担うだけに、ストライキは海上輸送の大規模麻痺、産業界への過大な損失、製造業者への重要部品確保の困難、供給網の麻痺を招く。加えて輸送運賃の上昇とインフレ、トランプ関税に伴う混乱は深まるばかりとなる。

 

これに対し、オートメーションにより協力的な労働組合の西海岸港湾では、既に大きな成果が上がっており、貨物量も大きく増加している。自動化が最も進んだロングビーチ・ターミナルでの年間扱い量は他の港湾を大きく抜いた成長を記録、東海岸でも自動化を導入したバージニア港では成長と雇用の増加が示された。この点について経営側の海事協会は「我々は導入設備の安全性向上と効率、生産性と能力の向上を主眼に努力している」と述べたが、ILAは容易には妥協しないと見られる。

 

しかしストライキが起きた場合の事態は一変、トランプ氏は職場復帰を命令する1947年タフト・ハートレー法を行使する可能性がある、との指摘が共和党議員からある。去る10月の港湾ストの際には、下院運輸委員会議長を務めるミズーリ州のグレイブス共和党議員からTH法の要求が出ている。

またイーロン・マスク氏と共に政府効率化省長官に指名されたラマスワミ氏はツイッターXに「革新を止めようと組合員に迎合する組合ボスたちは結果的に国全体を貶める」と投稿、マスク氏もダゲット会長がヨットを持っていたとことを揶揄している。