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ベルギーのセックス労働者に出産休暇など新労働基準

2024.12.27掲載

12月2日のニューヨーク・タイムズやCBCは「ベルギーの赤線地帯のセックス労働者について、搾取や暴力からの保護、社会保障を目的とした世界に無い労働法が発効した」と報じた。

 

ベルギーは2022年に欧州で最初のセックス労働合法化を認めた国だが、去る5月に成立して12月1日に発効した新労働法では、セックス労働者が公式雇用契約を結ぶかどうかを選択できることになる。雇用契約により労働者は他業種同様に、性別を問わず、社会保障や労働基準法、出産や病気休暇、失業補助、年金資格を取得できる。

 

新労働法はまた、日常のセックス業務について労働者の合意を必要とし、雇用契約に署名した労働者は顧客の拒否や特定行為の拒否が使用者からの罰則無しに出来ることになる。

労働場所の安全については顧客との会合部屋への緊急ボタンの設置、違法解雇や搾取からの保護、更には過去にセックス労働者に関してレイプや殺人、人身売買や暴力事件などで起訴された者の関与を禁ずる。清潔な布類やコンドーム、衛生用品の常備も義務化される。

 

しかし、これら労働者の多くが合法居住許可を持たずにいることから、弱い労働者たちは雇用契約を結べず、保護を受けられない現状がある。また独立の売春労働者も多い。

新労働法に反対する団体からは「法律は搾取的な売春を仲介、正当化するものだ。彼ら労働者の多くが、他に仕事が見つかればこの仕事はしたくないと話す。売春の人々の実態からかけ離れた法律だ」との指摘がある。

政府関係者も同感で「好んでセックス労働についている人は少ない。しかし法的保護を如何に周知させるかも難しい。セックス労働を止めたい人には、そうさせてあげたい」と語る。

 

一方、セックス労働の合法化は売春を通常経済に切り開くものになるが、過去3年間法律制定に協力したセックス労働者組合、UTSOPIでは「ベルギーには8,000人から26,000人のセックス労働者が存在する。この法律が無ければ、彼らは年金もないため70歳年代も働き、妊娠中の仕事の強制、出産費用も自己負担、収入証明もないため銀行口座も開けず、ごみ袋に貯めた現金で家賃を支払う状況だ」と語る。

 

また「人々は古代からセックスを売り買いしてきた。世界最古のこの職業に保護の手が差し伸べられたが、他の職業同様に少なくとも病気休暇と年金が必要だ。セックス労働は良い仕事でないだけに、強い労働保護が要る。他の仕事と同じとは言わないが、他の仕事と同じ保護は必要だ」と語る。

 

世界にはこの他、ニュージーランドにも同様の法律が成立したが、カナダでは売春は合法、買春は不法とされ、第3者による売春の宣伝や便宜供与も違法だが、これら法律の憲法上の妥当性について現在、最高裁で審議中である。