スペインが3年間で90万人の移民労働者に法的資格供与
11月22日のニューヨーク・タイムズは「スペイン政府が労働者不足を補うために、今後3年間に毎年30万人の不法移民に対する法的滞在と労働許可の発給を発表した」と報じた。
発給業務は来年5月から始まり2027年まで続くことになるが、対象者は今までスペインに最低2年間滞在した労働者とされる。この点についてサイズ移民大臣は「欧州でも最低の出生率という少子化問題を抱えるスペインの社会福祉を維持するためには、毎年最低25万人の外国人労働者が必要だ」と語る。
欧州各国では労働人口の減少が続いており、特に老人介護や農業、医療関係では慢性的な労働者不足に陥っているが、移民受け入れの枠は小さく、反移民感情の高まりから各国政府の動きは鈍い。スペインのサンチェス首相は「経済発展に移民労働者が欠かせないが、旨くやることだ」と述べる。
スペインには今年西アフリカなどから昨年から倍増の25,500人以上が移住してきているが、今回の法的資格付与の対象にはならない。専門家によると、スペインへの不法移民の多くは南米からの女性で、飛行機を利用して観光ビザで入国しており、スペイン語を話すことで就職のチャンスも大きいと言われる。しかし法的資格手続きは官僚的かつ煩雑なため、手続きを躊躇う企業も多い。また、今回でも居住許可取得には多大な努力が予測され、役所の担当者も少ないと言われる。
昨年のEU調査では、欧州人の70%が「人口減少により経済成長や競争力が失われる」と答えていたが、ロシア侵略後の400万以上のウクライナ移民は仕事を見つけることが出来た。EU全体での2023年の移民流入は2016年以来の最高を示したが、今年10か月の移民流入は昨年同期比43%に落ちた。しかし右派各党は移民への懸念を強めて国の同一性が失われると喧伝、過去10年間大量移民を受け入れたドイツでも学校や医療機関が受け入れ過剰を訴えた。
そのため最近、ドイツやフランスでは国境警備が強化され、来月にはオランダで同様措置、去る9月には移民に寛大だったスウェーデンが帰国する移民への現金支給を発表、欧州各国は資金を提供して亡命者を受け入れる外国を模索する状況に至っている。