UAWに対しイーロン・マスク氏が連邦上訴審で勝訴
10月25日のニューヨーク・タイムズと27日のウオールストリート・ジャーナルは「テスラ自動車工場のUAW組織化に従事した労働者の解雇を巡って、連邦上訴裁判所は会社側上訴を認め、マスク氏の言論の自由への勝利となった」と報じた。
2017年、テスラ自動車カリフォルニア・フリーモント工場の組織化に従事した従業員のオーティス氏は労働組合に反対する同僚複数の画面コピーをフェイスブックに投稿したが、調査官に対しては「どこで写真を入手したか記憶がない」と証言。後日に嘘をついたと認め、会社は嘘を理由に同氏を解雇した。これに対し労働関係員会(NLRB)は2021年に「真の理由は嘘の証言でなく、労働組合結成にある」と認定、復職と給与補償を命じた。
その間、2018年5月に同社イーロン・マスクCEOはツイッターに「カリフォルニア工場従業員の労組結成を阻止する何物もない。しかし、なぜ組合費を支払ってまで無償でストック・オプションを諦めるのか」と投稿。その後「マスク氏は組合員から諸手当を取り上げると脅迫しているのか?」と問われて「そうではない。そうしているのはUAWだ」と応答した経緯がある。
その後の2023年3月、ニューオーリンズの連邦上訴裁判所の3判事パネルはNLRB判定の「テスラは労組結成に従事した従業員を違法解雇した。またマスクCEOはツイッターへの投稿で、労働組合に加入する従業員のストック・オプションはなくなると不法に脅迫した」との認定を認め、オーティス氏の復職と給与補償、そして2018年の投稿削除を命じた。
これに対しマスク氏は上訴。
去る10月25日、フル構成の連邦上訴裁判所は9対8の判断により「NLRBはマスク氏に対し不当にSNS投稿の削除を命じ、権限を逸脱した。マスク氏のツイートは憲法に保障された言論である。NLRBは実際の解雇理由が虚偽の証言であり、反組合的敵意がないことを見逃した」としつつ、意見として「公共の関心事への民間人の論評削除にNLRBの権限はない」と述べ、差し戻しを命じたが、マスク氏の論評が労働法違反かどうかの判断はない。
他方、少数意見の8名の中のデニス判事は「多数意見は法律と事実を軽く見ており、論理的に矛盾を含む。私はNLRBによるマスク氏へのツイート削除命令がその広範な救済権限を逸脱、乱用していないとの意見だ」と語った。筆者調べではデニス判事はクリントン大統領の任命であり、民主党ないし共和党が選任する判事により法解釈、事実認識が分かれることを窺わせる。