2023年度国際シンポジウムⅡ
11月30日(水)13:30から、ベルサール神保町(東京都千代田区)3階Room4および5にて、~「ビジネスと人権~責任あるサプライチェーン~」を主題として「JILAF2023年度国際シンポジウムII」を開催しました。シンポジウムでは、基調講演、各国報告、パネルディスカッションが行なわれ、これに39名(会場、オンライン計)が参加しました。
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開会挨拶で相原理事長は、「世界各国が直面する『複合的リスク』下にあって、産業高度化の一方でインフォーマル層が固定化している。この困難は、政労使ほか関係ステークホルダーの協働なくしては乗り越えられない。本日の本題もそのひとつである」と開会挨拶を行い、続いて行われた基調講演では、そのⅠでILO田中プログラムオフィサーから「ビジネスと人権~労使対話によってつかむ好機」と題して、労働組合がとるべきアクションとしての方針策定と実施の各プロセスにおける対話と情報開示の要求、さらに、これを中小企業にビルトインし、「明日からでも始められること」として、関係ステークホルダーのレビューやマッピングの必要性が投げかけられました。基調講演のそのIIでは、厚生労働省中村課長より、「グローバルサプライチェーンにおける人権尊重~現在の政策対応と今後の方向性~」と題して、推進に向けた現状について、どこから着手してよいかわからないとする人が多い等の背景とともに、わが国が進める本題に関する国際協力・国内事業に関する政策や取り組みが紹介されました。
各国報告では、米国からは現政権下での政策展開と労働組合の国際的連帯活動について、英国からは新たに制定されたデューデリジェンス法の内容や通商・経済政策との連関について、またイタリアからは、企業の社会的責任に関する欧州主要国の法体系の概観、日本からは本題にかかる最近の各セクターの動き等がそれぞれから共有されました。
パネルディスカッションでは、企業行動と社会的責任について、ガイドラインが持つ拘束力の一方で、実際の適用の場面、特に進出先で不十分、未達などの面で苦労があること、非正規労働者の組織化や効果の波及は、国を問わず共通課題となっていること、労働組合やNGOなどは国際的ネットワークによる大きなうねりでマーケットに空気を醸成する動きを作れることなどの課題や見解が示されました。一方で、日本では、公共調達や経営者に対するガイダンスを中心に取り組みが進んできており、ノウハウの広範化等の取り組みを進めていることについて共有されました。
また、わが国の状況に関する見解として、労使や政労など、セクターを越えたえた協力や、労働組合の国際連帯によってマーケットへのインパクトが持てる、等の示唆が示さるとともに、会場から寄せられた質問・意見では、企業による「公正な移行」をはじめ、「ビジネスと人権」をめぐる新出課題への対応や、受発注の力関係の中で受注側へのインパクトのために、企業に求めたい対応に関して挙げられました。
最後に、矢木専務理事の閉会挨拶で、現場における適用の場面で役割を発揮する主体である労働組合によって、その現場での高い納得感をベースにした取り組みが今後も進められるとよいのでないかと述べ、シンポジウムが終了しました。