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FIFAサッカー選手の移籍制限規約は違法、EU司法裁判所の判決

2024.11.01掲載

10月4日のニューヨーク・タイムズは「国際サッカー連盟が定めるサッカー選手の移籍制限規約について、EU司法裁判所は違法と判決した。これにより世界のサッカー・チームで高額で取引される選手の移籍規定に変更が迫られる」と報じた。

 

問題を訴えたのはフランスのラサナ・ディアラ選手だが、報酬に関するトラブルでロシア・チームからベルギーに移籍しようとした際に数百万ドルの罰金を課されたことで発生した。EU司法裁判所は43ページの判決文の中で「選手および移籍先チームに罰金支払い義務があると定めたFIFA規定は違法だ」と判決した。判決によりFIFA規定の変更が余儀なくされるが、サッカー選手の移籍はそれ自体が産業化しており、毎年世界を移動する数千人の選手と数千万人のサッカー・ファン、そして選手育成に携わる数百チームに影響を及ぼす。

 

今回訴訟に関係したのはベルギーのデュポン弁護士だが、同弁護士は10年前にもボスマン選手による「契約期限切れ後のフリー・エイジェント選手は自分が選択するチームに罰金なしに移籍する」との訴訟に関って判決を勝ち取り、権限をチームから選手に移行させて、トップスターたちの大型契約時代を築き上げた経験がある。ディアラ案件は当初提訴のベルギー裁判所に差し戻され、確定判決まで1年が予測される。

 

今回判決への反応としては、FIFAが「僅かな規約変更で済む」と述べるのに対して、デュポン弁護士や労働組合は「激動が起こる」と述べており、混乱は大きくなりそうだ。

FIFA法務部長は「今回判決による移籍既定の重要部分への変更はないが、これからも選手の育成や生活安定に配慮しながら、競合を損なわないよう必要な改定を行う」と表明したが、選手会労働組合のFIFProは「重要な決定であり、サッカーの全容に変化をもたらす」と言明した。

 

FIFAは、現在の移籍規定はEU委員会と協議のうえで作成されたと説明しながら、「今回ケースが認められると選手たちは罰金なしに大きなチームへ移動するようになり、小規模チームが担ってきた選手育成の意欲が阻害され、影響は大きい」と述べた。

 

他方、FIFAの独占に対立意見を持つ各界からは様々な声があり、サッカー開催の独占権に異論を唱える欧州サッカー・リーグは「移籍システムの如何なる変更協議にも参加を要求する。将来のサッカー市場に重大な影響をもたらす可能性があり、欧州リーグと選手会労働組合の参加が必須である」と声明した。

 

オランダに本拠を置く国際スポーツ法律協会のデュバル会長は「規約変更から大きな影響が出る。富裕チームに力が集中して、罰金なしに選手が移動する。今迄は移籍料による資金が小規模クラブや無名リーグにも配分されてポルトガルのSporting Lisbon、オランダのAjaxなども存続できたが、それが危なくなった。サッカー業界は全面オーバーホールの局面にある」と語る。