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東海岸とガルフ湾岸労組のストライキで6年間62%の大幅賃上げ

2024.10.31掲載

10月3日と4日のニューヨーク・タイムズは「10月1日から始まった米国東部・ガルフ湾岸のストライキに介入を強めたバイデン政権だが、4日午後、海事各社を代表する米国海事連合(USMA)と国際湾岸労働者協会(ILA45,000名)とに合意が成立して、1977年来となる全面ストが中止された」と報じた。

 

賃上げは6年間で62%。現行最高の時給39ドルは63ドルとなり、米国西海岸労働者を僅かに超える額となる。協約交渉は来年1月中旬まで続けられるが、最大案件にはILAが雇用殺しと呼ぶ自動機械の導入問題があり、退職金改定と低賃金部分の引き上げもある。

港湾業務は他に代替えが利かない機能を持つだけにILAの力は大きいが、今回の賃上げはILAダゲット会長にとっても大きな勝利である。賃上げは当初40%が提案されたが、ILAは77%を主張、その後50%の提案から62%で合意した。

 

ストライキ当初には産業界からは1947年タフト・ハートレー法発動による職場復帰命令の要求も出たが、バイデン大統領は「団体交渉が必要だ。中間層や低所得層からの強い経済を造ることが重要」と主張して、スー労働長官を調停にあたらせた。

 

今回ストについては、多くの企業がそれを予測して準備を整えてきたため、物価などへの影響は小さいが、一部には今後のホリデイ・シーズンに向けて影響が出ると思われる。

しかし現在、港湾外には60隻の船舶が入港待ちにあり、作業開始となるとその増加が見込まれるが、2022年には100隻が待機したこともあり、輸送コストの増加が懸念される。

 

港湾労働者にカレッジ学位は必要ないが、数年経験者の60%の年収は10万ドルから20万ドルになる。労働組合は長時間労働と厳しい勤務環境からその額は当然だとしながら、更には2021年-22年のパンデミック時の貨物増加による利益配分も要求すると述べている。

 

問題は、1月までの交渉で自動化などに合意できるかどうか。現行協約には自動化を防止するために「人的接触を持たない設備の導入禁止規定」があるが、使用者が考える人間の指示なしにコンテナーを選別する大型クレーン導入の禁止規定はない。港湾作業効率化のために自動化は不可欠だとする会社側と雇用を守るILAとに、激しい対立が予測される。