ボーイング労働者がストライキ
9月13日と14日のニューヨーク・タイムズ(NYT)は「ボーイング社の民間機を生産するワシントン・オレゴン州の労働者33,000名が、労使が暫定合意した労働諸条件を不服として、16年ぶりのストライキに入った」と報じた。
先日8日に合意した労使協定は、4年間で25%の賃上げ、医療手当と退職手当の改善などであったが、批准投票では96%の組合員が反対票を投じた。米国最大の航空機メーカー、ボーイング社は国内に15万人、世界では17万人を雇用するが、ストライキをしている労働者はシアトルやポーランド地域で働く国際機械工・航空労働組合(IAM)の751地区とW24地区に所属する労働者である。
労働者が不満としたのは、過去に譲歩した年金減額回復の40%引上げ要求が満たされなかったことなどがあるが、昨年のUAWなどによる大幅な労働条件改善に刺激された面も強く、更には、最近のボーイング機の事故から品質改善を叫ばれる状況に労働者が要求を強めたともいえる。
労働組合が一般組合員の考えを理解できなかったことについて、751地区のホールデン委員長は「批准投票で組合員の要求内容を理解した。組合の力は組合員あってこそだという事を忘れてはならない」反省を述べた。組合員の最低賃金は、アマゾンの配達労働者と同じ時給20ドルと2008年と比較すると25%高いが、物価は44%高騰している、シアトル地域の物価はとりわけ高い。
勤続6年の労働者の年間賃金は、現在の102,000ドルが4年後には130,000ドルになるが、それでも組合員からは40%の賃上げの声が強い。ストライキ手当は第3週から支給されるが金額は週に250ドル、長期間のストライキは重い負担となる。
ボーイング社での前回のストライキは、2008年の50日間だが、今回も同期間となると損失は30億ドル、2025年への増産計画に重大な影響をもたらす。さらに同社は、2018年と2019年の事故に加えてパンデミック、そして、今年にはアラスカ航空のパネル剥奪事故での品質・安全検査での生産遅延を余儀なくされており、同社社債の格付けは下位近くまで落ちているが、コーネル大学のカッツ教授は「ボーイングは衣服会社のような厳しい競合にはさらされてはいない。長期的には強い立場にある」とコメントする。