フォルクスワーゲン社が労働協約を破棄、大量解雇を意図
9月10日のニューヨーク・タイムズ(NYT)は「一週間前、売上げ低迷とコスト上昇を理由に、ドイツ工場の閉鎖を言明したフォルクスワーゲン(VW)社が人員整理を意図し、労働協約の破棄をIGメタル労組に通告した」と報じた。
同社は先週「欧州での需要低下と、中国からの競合激化で企業立て直しが必要にある。そのため、会社87年の歴史上始めての手段として、ドイツ工場1-2か所の閉鎖などを考えなければならず、12万人対象の労働協約からの離脱を労働組合に通告する。会社はコストを削減して新技術と新製品への投資に備えねばならない現状にある」とした。
IGメタル労働組合の労働協約はVW社などの自動車企業始め他の重工業を網羅し、1994年から存続するものだが、現在の協約は2029年まで有効であり、会社側は3か月の事前通告で破棄できる。そのため協約は今年末まで有効だが、他協約との関連からレイオフは2025年6月から始まる。これに対しVW社の労働者協議会のカバロ労働代表は「労働協約を断固として守る。この歴史的な労働者への攻撃にはあくまでも抵抗する。我々にレイオフは起こさせない」と言明した。
同社は6.5%の利益率確保の目標に向けて、2026年に100億ユーロの原価削減を目指すことになるが、中国や欧州各国の電気自動車攻勢に遅れをとっており、特に中国には過去4年間で6%の西欧市場シェアを失っている現状について、自動車専門家は破滅的敗北の懸念さえ述べている。
自動車研究センターのウイスバート教授は「各種労働協約を破棄しなければならない状況は、ドイツ工業の技術の高さの上に築き上げてきた数十年のブランドイメージの現状が如何に深刻かを示す。VWは低価格車の分野で”メイド・イン・ドイツを武器に戦ってきたが、伸張が止まり競争が激化する市場では通用しなくなった。」と語る。
開始される労使交渉では、IGメタルは7%の賃上げと操業継続を要求する。しかし合意が成立しない場合、2005年以前に採用された労働者は20年前の賃金と諸手当に戻ることも考えられ、数百万ドルが節約できるが、それでも目指す採算性は確保できず、会社はレイオフが不可避だと言う。
VWは世界に65万人を雇用し、ポルシェやアウディなど10ブランドを持つが、会社は先週、Q8モデルを生産するブラッセル工場に2025年以降の生産停止を通告した。閉鎖により3,000名が解雇の危機にある。