アップル・ストア労働組合が初めての労働協約締結
8月6日のニューヨーク・タイムズは「メリーランド州トーソンのアップル・ストアで同社最初の労働組合が協約交渉を開始して1年半、漸くにして労働協約が締結された」と報じた。
今回の妥結についてアップル本社は「合意できたことを喜んでいる」と言明したが、長引く交渉で他店の組合運動は勢いを失った。この協約は、2022年6月に国際機械工組合(IAM)に加盟しているトーソンの店舗の組合員85名が対象となり、今後3年間で10%の賃上げを受けると同時に、今まで組織化されていない店舗だけに支給されてきた各種手当と退職手当を受け取る。
交渉が行き詰まっていた理由には他店と同様の諸手当の支給、全国適用の会社規則の変更、パート労働者の採用方針問題があったが、制度が改定されると数名の労働者がそれぞれの事情で退職せざるを得ない状況があった。
トーソン労組は会社に譲歩がない場合のストライキを言明、5月にスト権を確立した。こうして両者は先月末に至り、最近実施分と改定部分の諸手当の支給、新規諸手当については導入時に即時に交渉を開始することで合意したが、新協約により組合員は今年4%、その後の2年間はそれぞれ3%の賃上げを受ける。
アップル社では、トーソン店に続いて2022年10月にオクラホマ・シティでも労働組合が結成され、全米通信労組(CWA)に加盟したが、その後の労組結成は尻つぼみとなり、ニュージャージー州ショート・ヒルでのCWA労組結成も失敗した。トーソン労組では「今回の協約締結により、労働組合が出来ると諸手当を失うという労働者の心配が減る。会社は、労働組合が出来ると全てを失い、ゼロ・スタートになる。労働協約が実行されることはないと宣伝してきたが、今回の妥結で他の店舗でも労働組合結成が進む」と期待を述べる。
この点について、サンフランシスコ州立大学のローガン教授は「今回の協約締結は、いくらか助けになる。労働組合結成に伴う解雇や減給の恐怖は大変大きい。その恐怖が少なくなれば、他のストアでも力になる」と語る。
上記のオクラホマ・シティでは、交渉担当者が「トーソンの協約締結に大きな力を得た。今月以内にもスト権を確立したい」と述べて、数か月以内の協約締結を目指している。IAM労組の関係者からも「早速、南東部のストアから、労組結成の問い合わせが入った」と語った。