チームスター労組会長が共和党大会に出席、労働界に批判
7月16日と19日のニューヨーク・タイムズ(NYT)は「労働組合幹部が共和党大会に出席するのは稀有の光景だが、チームスター労組のオブライエン会長は同大会で『企業アメリカ』非難の姿勢を示しながらも、トランプ前大統領称賛の演説を行った」と報じた。
共和党大会初日の最後に登壇したオブライエン会長だが、同労組からの共和党大会出席は初めてだと述べつつ、「組合内部では多くの物議をかもした。左右両派から怒りや抗議の表明があったが、自分自身が民主、共和両党大会への出席を希望した」と述べた。共和党はトランプ氏の意見もありオブライエン会長の出席を受け入れたが、来月開催の民主党大会は招待者が未定であり、招待状も届いていない。
会長は、13日に起きたトランプ銃撃事件について「タフな野郎として証明して見せた」としてトランプ氏を称賛、その他にも共和党のミズーリ州ホーリー上院議員やニューヨーク州のマリオタキス下院議員にも称賛を述べたが、チームスター労組130万人の同感があるとはいえない。
一方、会長はアメリカ企業が米国への忠誠を欠くとして非難、「国民が労働組合結成に投票しても、労働協約を結ぶことが出来ない。また労組結成に努力する者が解雇される状況にある。これは最悪の形の経済テロだ」との苦言を呈した。
会長演説は、当初好感を持って迎えられ、特に共和党大会出席によって民主党から受けるであろう非難について語る中聴衆の沈黙は増し、他の登壇者との熱気の違いを見せた。見せ場とみられた場面でも僅かな拍手しかなく、聴衆の視線は徐々に演壇のオブライエン会長からトランプ氏を見るようになっていた。
労働組合関係者の多くが指摘するように、大統領としてのトランプ氏は労働組合に友好的ではない。これに対してバイデン大統領は多くの労働組合の要請に応えており、チームスター労組の年金基金破綻の際には360億ドルの救済援助を行った。ある組合員は「チームスター労組の真の指導者は如何なることがあっても共和党大会に出席すべきでない。年金基金を救ったのはバイデンであり、トランプではない」と語気を強める。
一方、アメリカ教員連盟(AFT)のワインガーテン会長は「オブライエン会長の、労働者擁護だけでなく貪欲なアメリカ企業による被害を直言したことは評価する。しかし大統領選挙はゲームではない。我々が直面するのは民主主義か独裁政治かという現実への選択なのだ」と述べる。
チームスター労組はバイデン大統領推薦を見送っている唯一の労組だが、労組関係者が懸念するのは、共和党を利するオブライエン会長の態度である。
大統領候補指名受諾演説の中でトランプ氏は、地球温暖化はないとして電気自動車移行に反対する持論から、これに賛同する全米自動車労組(UAW)フェイン会長の退任を要求したが、同会長は「問題なのは貪欲な企業と腰巾着のトランプだ。このスト破りの億万長者に踊らされてはならない」と応じた。