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アマゾン労組がチームスター労働組合に加盟

2024.07.01掲載

6月4日のワシントン・ポストは「2年前に結成されたアマゾン労組(ALU)が、チームスターズ労働組合への加盟を進める事になった。労働組合活動の活発化が期待される。」と報じた。

2022年5月、労働組合運動の高まりの中で全米の注目を集めながら、米国第2の企業、アマゾン社のスタテン島物流センターで最初に結成されたALUだが、会社側は選挙結果を疑問として協約交渉に応ぜず、近年中の解決の目途もついていない。

一方、会社では、コロナ時期の通信販売の繁栄期を過ぎて新規開店計画を縮小、今週にはワシントン州とカリフォルニア州の物流倉庫の閉鎖を発表した。また、労働災害訴訟も起こされて、バーニー・サンダース上院議員(独立)の委員会が調査に当たっている。

チャン・スモールズ委員長に対して「メディア向け旅行に組合費を浪費し、組合活動を疎かにしている」との批判があり、組合分裂と訴訟騒ぎに発展しているが、同委員長はこれを馬鹿げたことだと否定しつつ、「チームスターズ労組の元で纏まって活動することに意味がある。同労組は配送運転手の分野で最高の経験と知識を持ち、資金も豊富、全国各地に人材がいる」と評価する。

チームスターズ労組は歴史的にも配送運転手を代表する組織だが、2021年にはアマゾン部門担当に専任役員を据えて組合結成を目指している。昨年には巨大企業のUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス、約34万組合員)を相手にストライキ寸前で数十年来最高の協約を締結、パートタイムには5年間で48%の賃上げ、2重格差賃金も廃止させたが、オブライエン会長は「この力をアマゾン組織化に傾注する」と語る。

両労組の加盟合意書にはALU組合員の自治とチームスターズ組合員と同様の権利義務が記載されているが、チームスターズ労組への組合費の記述はない。スモールズ委員長によれば「先月、スタテン島、カリフォルニア、ケンタッキー、ノース・カロライナの各代表がワシントンでオブライエン会長と会談して合併について討議した。」という。オブライエン会長は2022年に改革派代表として数十年来続いたホッファ ファミリー支配を覆して会長に就任した人物である。

ALUには各労働組合が支援を表明しているが、特に全米郵便労組(APWU)、全米教員連合(AFT)、サンダース上院議員などの強い支援がある。しかし、組合の内部紛争が明らかになるにつれて外部からの資金援助は減少し、ニューヨーク州ニューヨーク市やオールバニー市での労働組合結成は失敗した。その一方、チームスターズ労組は今迄にケンタッキー州、イリノイ州、ミシガン州のアマゾン倉庫での不当労働行為を提訴している。
同様の抗議活動が各地大学に広がる中、UAWの教育分野における組織化は過去7年間にカリフォルニア大学、ワシントン大学、コネチカット大学、ニューヨーク大学、ハーバード大学などでUAW組合員391,000人の4分の1以上を占めるに至った。
ハーバード組織化担当でガザ運動を主導するマンシラUAW役員は「UAWの再建は戦う組合を目指すことだが、組合の組織化だけでなくヒューマニティーの実現を目指して戦う。野心的で広範な意味合いを持つこのような取り組みは従来とは違うものだ」と語る。しかし政治的意味合いの強いこのような取り組みにUAW内部からの反対も強い。

ニューヨーク大学のUAWローカルが、イスラエル軍によるパレスチナ領土占領と封鎖の即時解除と停戦を決議した時には強い反対が巻きあがった。また先月、下院共和党委員会がUAWニューヨーク・ローカル委員長を査問して、ガザ停戦決議の意図や反ユダヤ的主張の有無を質問したときには「これは魔女狩りだ」とする一派と「UAWを提訴する一派」が生まれ、その対立が際立ち、大学や一般国民との関係にも悪影響を及ぼしている。
なお、カリフォルニア大学については、学生の授業に修復不能な重大な影響があるとする大学側の指摘を受けて、6月7日、裁判所がストライキの一時中止を命令した。
このような状況の中、6月10日司法省監視官(モニター)が「UAWの会計処理に疑問を呈した幹部2名が不当な処罰を受けた」とする内部告発への調査を開始した。
告発者の1人は、2月に解任されたモック財政事務局長だが、財政監視責任上の不正行為があったとされる。しかし同局長は、会長室への費用支出を拒否したことなどへの報復だと主張する。2人目は、5月にステランティス担当を解任されたボイヤー副会長だが職務怠慢の責任を問われた。しかし、同副会長は、他の役員への不正な便宜供与を拒否した事への報復だと主張している。さらに、監視官からは執行部の協力や証明資料提出の遅れの問題が指摘されている。
なお、連邦監視官は数年前のUAW汚職事件に関連して2021年に司法省が任命したものであり、同時に、代議員選挙に代わり組合員直接選挙が同意され、その組合直接選挙によりフェイン新会長が選出されている。
以上のような状況についてフェイン会長は「監視官には充分な調査を期待する。またUAWの取り組みは、先人であるウオルター・ルーサー会長によるベトナム戦争反対、市民権運動支持、南アフリカの人種差別反対と同じ姿勢だ」と説明しているが、筆者は学生という新たな組合員を包含しつつ、守旧派との勢力争いを経験する新生UAWへの産みの苦しみを感じる。
他方、UAWは去る4月、ノース・カロライナ州ダイムラー・トラック労働者7,300名に4年間で25%の賃上げ協約、数日後には労組に敵対的な南部テネシー州のフォルクスワーゲン工場でのUAW結成に初めての勝利を得たが、5月のアラバマ州メルセデス工場のUAW結成には失敗した。