活動報告 各国の労働事情報告

2023年度 タイの労働事情(タイ・ベトナムユースチーム)

以下の情報は招へいプログラム「タイ・ベトナムユースチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

ITUCタイ協議会(ITUC-TC)

  • 民間産業労働組合会議(NCPE)
  • 国営企業労働連盟 (SERC)
  • タイ労働組合会議(TTUC)

タイ産業労働組合総連合(CILT)

タイ自動車労働組合会議(ALCT)

基本情報

  • 人口:6,609万人(2022年)(タイ内務省)
  • 宗教:仏教 94%、イスラム教 5%
  • 政体:立憲君主制
  • 主要産業:農業、製造業、観光業
  • GDP:4952億ドル(名目、2022年、タイ国家経済社会開発委員会)
  • 経済成長率:2.6%(外務省令和5年11月29日更新)
  • 失業率:1.2%(2022年第4四半期、外務省令和5年11月29日更新)

はじめに

タイでは、注目される労働法に、「労働関係法」と「労働者保護法」がある。労働関係法は、タイ初の労働法として、雇用主と従業員の間で福利厚生を交渉するプロセスを平和的かつ秩序あるものにすること、雇用と仕事に関連する利益を求め保護するために両当事者間の良好な関係を促進することとして1975年に制定された。労働保護法は、1998年に制定され、雇用主が雇用条件を定めた法律を遵守することを保証するために、今でも一般的に使用されている。急速に変化する経済的および社会的状況に合わせて、追加修正が加えられ、都度のニーズに合わせて調整されている。他方、国営企業の労働者はストライキをする基本的な権利を行使することができていない。依然として、公務員、軍人、警察、非公式部門の労働者など、あらゆる部門の労働者の基本的権利がカバーできていない。労働組合を結成し、団体交渉ができるようになる法律の改善を目指した関係法の起草は、依然として国際労働機関(ILO)条約第87号および第98号の原則に沿ったものではなく労働組合を組織することは依然として困難といえる。

以下、本レポートは今回の参加者からの報告要旨をまとめたものである。

タイの労働事情

タイの労働力人口は約4,000万人で、そのうちインフォーマルセクターに属する労働者のほとんどが農業およびサービス部門に従事しており、今後も増加する可能性がある。また、約500万人の移民労働者がおり、臨時雇用、定額雇用、短期雇用といった不安定な雇用が増加している。組合員はわずか1.5%、約60万人である。

 

(1)ナショナルセンターの現状の問題意識と取り組み

現在の労働法は、労働者保護法と国営企業労働関係法の両方において、依然として国際原則に基づいていない部分があり、団結する権利などの労働プロセスの原則に準拠していない。不当雇用の原則・国営企業の民営化など、これらの問題はできるだけ早く調整・解決されなければならないが、修正案には国内の労働代表の意見が反映されていない。国営企業労働関係法は国際労働機関(ILO)条約の基本原則と矛盾して、労働組合の組織化は以前と何ら変わりなく困難である。

(2)  社会保障制度

  • 社会保障制度の現状

  社会保障法制度に基づいて被保険者となっている労働者は 1,200万人で、被保険者は社会保障基金と補償基金の2つの基金から給付を受ける。病気、出産、障害、死亡、養育費、老齢、失業に関する給付金が含まれる。

  • ナショナルセンターの現状の問題意識と取り組み

現在、社会保障制度は運用を変えつつある。その内容は、社会保障委員会で議論される。社会保障制度の見直しに向けて2023年12月に、社会保障制度の下で働く労働者にとって、社会保障制度をより適切に管理し、福利厚生のガイドラインを設定するために労働者から代表者を選ぶことができたのは良い傾向といえる。

(3)直近発生した問題視されている労働争議

  • ケース1 ~電子部品製造会社の安全靴をめぐっての紛争~

雇用主から安全靴の配布に対し変更の提案がされ、労働組合との協議なしに年間1足の配分から3年に1足の配分に変更された。労働側はこの変更に対し、職場の安全を確保するために反対であると主張し、使用者側は、コストを抑えたいことと安全靴は強くて丈夫で壊れにくいため1年に1足は必要はないと主張。紛争の結果、労働者側、使用者側、政府部門の三者協議が行われ、安全靴が破損した場合は交換可能となり、安全靴の配布期限の制約は持たないという結果となった。

  • ケース2 ~食品福祉に関する繊維会社に対し、毎月の食事手当をめぐる訴訟~

労働側は雇用の安定と生活の質の向上を望むが、管理部門側は、使用者の判断での労務管理や福利厚生をコントロールしたいと主張。第1回の交渉では同意に至らなかったが、再交渉では、州労働局から使用者に対して、労働者への手当の支払いを命じた。しかし、雇用主は未だにそれに従っていない。その後、従業員はこの問題を労働裁判所に提起している。今月(2023年12月)末に裁判所からの判決が出る予定である。

  •  ケース3 ~自動車部品会社による下請け契約による解雇の発生~

正社員と下請け社員は、同じ仕事に就いているにもかかわらず待遇が不平等な実態にあり、雇用における不平等が生じている。雇用を安定させ、より良い生活の質を得ることを訴える労働側に対し、経営者は人件費を削減したいことを主張。現在、両者間の交渉はまとまっておらず現在進行中である。