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メルセデス工場のUAW結成否決

2024.06.17掲載

5月17日のニューヨーク・タイムズ及びワシントン・ポストなどが「注目されていたアラバマ州メルセデス2工場におけるUAW結成投票が否決された」と伝えた。

先月のフォルクスワーゲン工場におけるUAW結成承認に続き、13日から行われていたメルセデス社のSUVとバッテリー工場2か所における投票結果について、17日、労働関係委員会は「有資格者5,075名からの投票で、賛成が2,042名の44%、反対は2,642名の56%として労組結成は不成立となった」と発表した。結成投票に当たり労組支援者は賃上げと突然変更の無い勤務スケジュール、労働条件低下についての労使協議制度を要求していた。

UAWは先月、困難視された南部州で初めてとなる労組結成を、テネシー州のフォルクスワーゲン工場で成し遂げていたが、今回の失敗は今後のヒュンダイ、やホンダ、トヨタやテスラでの労働組合結成の進め方の見直しを迫ることになる。
労働専門家は「VWでは2010年代に2度の結成失敗の経験があり会社が中立を貫いたのに対し、メルセデスでは会社が労働組合に強く反対した点が違いだ」と語る。
一方、UAWフェイン会長は「今回の労働組合結成はダビデとゴリアテの戦いだったが、最後にはダビデが勝利する」と述べて今後に自信を示した。また、AFL-CIO のシュラー会長は「失敗は痛いが、時として躓くことはある。(特に南部諸州では)労働法が労働組合に不利にできている。労組結成が一度で成功する事はない」と述べた。

UAWは数十年にわたり南部諸州での労働組合結成に取り組んできたが、メーカー各社や地元政治家の強い反対、それに加えて共和党優勢の各州が採用する、”労働権法”による「労働協約の適用を受けていても組合加入と組合費納入は従業員の自由意志とする法律」により、労働組合は劣勢に立たされてきた。メルセデスについては2013年にチャンスがあったが、投票への必要署名数を集められなかった。

メルセデス社は労組反対キャンペーンを繰り広げる中で、従業員を毎日会合に集めて、労働関係の弁護士や専門家から労働組合の弊害についての話を聞かせ、会社施設の内外には”労働組合反対”の看板や反組合資料を置いた。こうした会社行為についてUAWは既に労働関係委員会に不当労働行為を訴えており、「組合キャンペーンに従事した3名の解雇、勤務中に労働問題を話し合った従業員への懲戒、組合資料配布の禁止問題」への調査が開始されているが、会社はこれを否定している。

外部からは、アラバマ州の実業家やアイヴィー知事(共和党)など政治関係者がSNSを通じて「UAWは汚職組合だ。態度をコロコロ変え、寄生虫的存在だ」と宣伝し、南部6州の知事(共和党)も「UAWが出来ると仕事がなくなり、待遇も下がる」との警告を繰り返した。
南部諸州政府は数十年にわたり非組合企業への優遇減税や低賃金労働を約束し、1993年のメルセデス工場開設時にも2億5,300万ドルの優遇税制を供与している。なお、昨年のアラバマ州自動車労働者の時給はミシガン州を3.80ドル下回る。