フランス農業組合による道路閉鎖、政府が妥協案提示
1月31日のワシントン・ポスト(WP)、2月1日のニューヨーク・タイムズ(NYT)などが「フランス農家が政府政策に反対して1週間。各地でトラクターによる道路閉鎖を続けてきたが、政府が妥協案を示したことから、2大農業組合が道路閉鎖の停止を呼びかけた。」と報じた。
1万人の農家がトラクターや干し草を使ってフランス全土の100個所で道路閉鎖を行っているが、この組合からの呼びかけに応じるかどうかは未だ不明である。最大組合の全国農業経営者組合連合(FNSEA(*1))の会長も「道路閉鎖は終わっていない」と語る。
(*1)1946年に32万社(Jil資料)
問題は燃料や肥料の価格高騰にあるが、ウクライナからの安値農産物、それにEU農業政策と環境規制も重なる。隣国のベルギーやポルトガル、ドイツ、ギリシャ、ハンガリーでも、数千人の農家が卵や爆竹を警官に投げつけるなどの抗議活動が展開されている。
この中で、フランス政府は救済策として、畜産農家への1億5千万ユーロの補助、人工肉規制についてのEU規則の明文化、農薬使用規制の一時停止、農薬使用の外国野菜の輸入禁止などを発表した。
マクロン大統領は「欧州の農業は多くの問題に直面しているが、パンデミック、ウクライナ戦争、温暖化で問題が巨大化した。EUにはフランス法と同様の規約改正を求めながら、農家/食品業/小売業による価格交渉機関の設置を提案した。また、域外諸国からの輸入にはEU同様の環境・衛生基準に基づく自由貿易規約が必要だ」と述べている。
EU規則の煩雑さには不満が強いが、フランス第2の若年者 農業組合(JA(*2))のガイヨー会長は「早急な変更の望みは薄い。20年から25年の間違った決定が10日で直る訳がない」と述べ、FNSEAのルソー会長も「将来は欧州に掛かっているが、それにしても官僚的なEUは理解出来ない」と語り、ワイン農家、穀物農家、畜産、野菜や果実農家なども面倒な環境規制や書類手続きへの不満を口にする。
こうした事態にフランス新任のアタル首相は「EU規則の早急な実施は国際競争に不利になるから行わない。また法律には ”フランス食品の優位性”を明記する。フランス農業を優遇するのは金銭面だけでなく、フランスの誇りとアイデンティーの問題だ」と表明した。
また政府は、フランス製と表示する製品の大規模チェックを行うこと、小売業/配送業との価格交渉から農家が正当な報酬を得ているかのチェックも実施することを言明した。
その他、スタート・アップ農家への補助金、若年世代への譲渡時の減税も決められた。
また、ブリュッセルで開かれた欧州委員会では、EU農家の怒りの的となったウクライナ農産物に対して、穀物には輸入制限の強制セーフガード、一定数量以上の卵、鶏肉類、砂糖には関税の賦課が提案された。
一方、フランス政府の農薬規制緩和には環境主義グループから「農業世界に毒物を贈呈する許されざる反動だ」との強い反発があるが、農業組合からは歓迎の声が強い。しかし、JA組合のガイヨー会長からは「対策が遅れるようだと再度の全国的な反対運動が起きる」との警告も出ている。
(*2)筆者調べだが、32万社が加入すると言われるフランスの農業組合は農業や酪農に携わる農民や農民組織で構成され、トラクターやコンバインの共同利用など、相互扶助を目的に運営されているようだ。