活動報告 各国の労働事情報告

2023年度 トルコの労働事情

報告者

トルコ労働組合連盟(TURK-IS)

  • TURK-IS法務局次席担当 Ms. Elif Cansu Ikiel
  • TURK-IS渉外部門アシスタント・コーディネーター Ms. Selen Keklik
  • TURK-IS財政局次席担当 Ms. Seyma Irem Tekin
  • TURK-IS組織局主任 Mr. Emre Cesur

トルコ真正労働連盟(HAK-IS)

  • HAK-IS地方組織労使関係専門家 Ms. Elif Yildrim
  • サービス業労働組合労働協約専門家 Ms. Gulsum Hilal Tiryakioglu
  • HAK-IS地方組織法律専門家 Ms. Hatice Kubra Tok
  • サービス業労働組合労働協約専門家 Mr. Osman Sari

基本情報

労働組合のナショナルセンターは民間部門と公務部門で分かれており、民間部門においてはトルコ労働組合連盟(TURK-IS)が131万人、トルコ真正労働連盟(HAK-IS) が85万人、トルコ進歩労働組合連合(DISK)が16万人を組織している。最新の統計に基づく民間部門の組織率は14.76%となっている。公務部門についてはトルコ公務員労働組合連盟(KESK)など4組織が分立している。なお、ここに記載した4つのナショナルセンターについては国際労働組合総連合(ITUC)に加盟している。

労働を取り巻く現状と課題
  • 労働法制

現在の労働法は約30年振りに改正された2003年の「労働法第4857号」である。労働法は使用者および労働者間の雇用関係を規定しており、雇用、労働関係、労働条件に関する権利・義務、契約解除、女性・未成年者の雇用、労働裁判所、裁判手続き、罰則について規定している。

労働安全衛生については「労働安全衛生法第6331号」が2012年に施行され、職場の労働安全衛生の確保と改善に向けての使用者と従業員の義務、権限、責任、権利について規定している。

また、2012年に施行された「労働組合及び労働協約法第6356号」が、労使それぞれの組合や連合の設立、管理、機能、業務、監督について、更には労働協約の締結、紛争の解決、ストライキとロックアウトに関する原則と手順について規定している。

なお、公務員を対象とする法律については別立てとなっており、1965年発効の「公務員法第657号」と、2001年発効の「公務員の労働組合・労働協約法第4688号」が施行されている。

  •  労働法制や労働問題をめぐる労働組合の取り組み

①産業別セクターに関する規定の改定

民間部門の労働組合は産業別に組織されている。労働組合及び労働協約法により、全産業は20に分類されており、産業別組合はこの20セクターのうちのどれかに分類される。この内の「一般労働者」セクターに関する規定が改定され、2023年5月12日付け官報で「部門に関する規則の改定に関する規則」として発表された。但し、労働組合はこの改定に反対の意思表明を行ってきていた。労働組合はこの改定には問題があると受け止めており、この改定により今後紛争が生じ、労働組合組織の弱体化、団体交渉における秩序と職場の平和・安定の悪化につながるであろうと危惧している。

②公共枠組議定書についての合意

公共部門で働く者は「公務員」と「労働者」に2分類される。「公務員」には公務員法が適用され、「労働者」には労働法や労働組合及び労働協約法が適用される。「労働者」は民間部門労働者を組織化しているTURK-ISやHAK-ISの傘下の「サービス業労働者」の産業別労組に結集している。そこで両組織は共同の取り組みを通じて、公共部門で働く「労働者」の社会的・経済的権利(賃金、一時金、福利厚生、社会的扶助など)を改善するための公共枠組議定書(労働協約)について、使用者側(TUHIS:トルコ重工業・サービス業・公共事業主組合)との間で合意するに至った。

約70万人の公務「労働者」がこの議定書の恩恵を受けるに至っているが、課題はまだある。中央官庁の指揮下で働く者の内訳(概数)は、「公務員」350万人(病院関係、教員、消防職員、警察官、軍人など)、「労働者」70万人(ガードマン、清掃、その他)、半官半民の「公共企業体職員」8万人(公共放送、電気事業など)となっている。また、地方自治体の指揮下で働く者の内訳は、「自治体職員(公務員)」と「労働者」約70万人である。今回の議定書の対象となった「労働者」は中央官庁の指揮下で働く者に限定され、地方自治体の指揮下で働く「労働者」は対象外である。労働組合としては、地方自治体の指揮下で働く「労働者」についてもその社会的・経済的権利が改善されるべきであり議定書が適用される必要があると考えているが、様々な議論があり結論には至っていない。

  •  直面する諸課題

①TURK-ISが取り組んでいる重要課題

・税の公正化(累進制の改善により、低所得層への税率引き下げ)

・組織化

・不安定な下請け労働の廃止

②HAK-ISが取り組んでいる重要課題

・不安定な下請け労働者の正規化

・全ての公務「労働者」が公共枠組議定書の恩恵を受けられるようにすること

・税の公正化のための税体系の構築

・社会対話メカニズムの実効性向上

・組織化支援