2023年度 ベトナムの労働事情(タイ・ベトナムユースチーム)
以下の情報は招へいプログラム「タイ・ベトナムユースチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。
参加者情報
ベトナム労働総同盟(VGCL)
基本情報
- 人口
約9,946万人(2022年、 ベトナム統計局)
- 宗教
仏教、カトリック、カオダイ教、他
- 政体
社会主義共和国
- 主要産業
林水産業、鉱工業、建築業、サービス業
- 名目GDP
約4,138億米ドル(9,324兆ドン)<外務省令和6年1月10日更新>
- GDP成長率
8.02%(2022年)
- 失業率
2.32%(都市部:2.79%、農村部:2.03%)<外務省令和6年1月10日更新>
はじめに
近年、あらゆるレベルの労働組合、特にベトナム労働総同盟(中央レベル)は、労働者に関連する政策や法律に対する問題を積極的に革新し改善してきている。労働者の権利、特に雇用、賃金、労働者の住居、労働者の労働条件、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けた労働者を支援する政策の問題をより適切に配慮・保護するための法律制定に向けた多くの勧告や提案を行った。ベトナム労働総同盟は、5年間(2018年から2023年)で最低賃金を25.34%引き上げ、組合員と労働者の生活向上に貢献し、最低賃金と最低生活水準との格差を縮めることを提案してきている。さらに、社会経済管理に対し、恒常的に政府と連携し積極的に参加してきた。労働者の権利と義務に関する問題に関する国家機関、組織、部隊、企業の活動のチェック、検査を実施している。
以下、本レポートは今回の参加者からの報告要旨をまとめたものである。
ベトナムの労働事情
社会保障制度
過去数年間にわたり、ベトナムの社会保障制度は基本的に公平性、包括性を確保し、国際基準に近づき、基本的に安全に対する国民の権利を満たし、経済発展、政治的安定、社会秩序の国際基準の発展に貢献してきた。ベトナムの社会保障制度は、次の3つの機能【①リスク予防、②リスクの最小限抑制、③リスクの克服】を備えて形成されている。労働市場制度は徐々に改善され、雇用を創出するための基本的な解決策となっている。社会保険は、すべての人が社会保険に加入するという目標に向けて、社会保障制度の主要な柱としての役割を徐々に推進してきた。また、雇用保険は、労働契約の終了や失業の際に企業と従業員の双方を効果的にサポートする体制が整い失業保険の適用範囲は拡大している。
現状の問題意識とナショナルセンターの取り組み
現在、ベトナムでは社会保険法の改正が進められている。国会会期(2024年5月~6月)において、国会はこの法律プロジェクトを可決すると予想されている。さらに、健康保険法、雇用法などの法律も改正が検討されている。
社会保障制度の見直しの動向
第1に、社会保障に関する法制度の改善を継続し、国民保護政策を構築する基礎となる社会保障の基礎を構築する。第2に、健全で同期的な、近代的で統合された労働市場を発展させる。第3に、すべての国民の社会保険を目指し、柔軟かつ多様で重層的かつ現代的な社会保険制度を整備する。第4に、柔軟性があり、迅速に調整でき、危険にさらされている人々の基本的なニーズを満たす支援プログラムを設計すること。これらに対しての、リスクをフォローするために脆弱なグループやコミュニティへのタイムリーなサポートも確保している。
- 直近発生した問題視されている労働争議
ベトナムにおける労働争議には、集団労働争議と個別労働争議の2種類がある。個別労働紛争に関して最高人民法院のデータによると、2019年には全国で同裁判所が受理した紛争件数は2,722件であった。この数は2020年に3,367件と急増したが、2021年には2,849件強に減少し、2022年には3,131件と再び増加傾向にある。
- 労働争議の原因と経過
ほとんどの個別労働紛争は以下に関連している。
①賃金の支払い問題
②労働者の権利に関連する制度や規制の実施
③雇用主が労働法(特に保険、賃金、労働時間、休憩など)に違反した疑い
紛争の一因は、新型コロナウイルス感染症流行の影響により、対話や交渉のメカニズムが通常ほど安定して維持されないことによるものである。感染症の影響により、職場では多くの新たな問題が発生し、意見の相違が生じたが、企業にはそれらを迅速に検出し解決するための十分効果的なプロセスや方法がなかった。
発生した事件のうち、労働契約の解除、懲戒、解雇に関する内容が最も多く(平均約32%)、次いで雇用・給与に関する事件(平均約24%)となっている。保険制度(社会保険、健康保険、雇用保険、労災保険、職業病保険)に関する事件もかなりの割合を占めている(平均約21%)。労働契約の解除に伴う損害賠償や給付金をめぐる労働紛争は、事件の約1割を占めている。
- 労働争議の結果
ほとんどの個別労働紛争は、地区レベルで管理される労働調停者により、第一段階で解決される。個別の労働紛争を解決するための要求は、多くの場合、労働者から苦情の形で地区レベルの労働・戦傷病兵・社会局または労働局(工業団地管理委員会傘下)に送られる。懲戒解雇、労働契約の一方的解除、損害賠償、保険などに関する個別労働紛争は、調停の仕組みでは解決しないことが多い。 訴訟が発生した場合、当事者は人民法院での解決を選択する傾向がある。