2023年度 フィリピンの労働事情(フィリピン・マレーシアチーム)
本労働事情については、招へいプログラム「フィリピン・マレーシア」チーム参加者から行ったヒアリング結果を基にまとめたものである。
参加者情報
フィリピン全国労働組合(NTUC Ph1)
フィリピン全国労働組合(NUCP)
基本情報
- 人口
1億903万5,343人 <外務省 令和5年3月1日更新情報>
- 宗教
ASEAN唯一のキリスト教国。
国民の83%がカトリック、その他のキリスト教が10%。
イスラム教は5%(ミンダナオではイスラム教徒が人口の2割以上)<外務省 令和5年3月1日更新情報>
- 政体
共和制(外務省 令和5年3月1日更新情報)
- 主要産業
ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業を含むサービス業(GDPの約6割)、
鉱工業(GDPの約3割)、農林水産業(GDPの約1割)(2021年)<外務省 令和5年3月1日更新情報>
- 名目GDP
3,936億ドル <外務省 令和5年3月1日更新情報>
- GDP成長率
5.7% <外務省 令和5年3月1日更新情報>
- 物価上昇率
3.9% <外務省 令和5年3月1日更新情報>
- 失業率
7.8% <外務省 令和5年3月1日更新情報>
労働事情
フィリピンの貧困の状況
フィリピンの貧困問題は地域格差も大きく、特に自然災害の被害が大きい地域、治安で問題がある地域では開発が遅れ、貧困が蓄積している。一部は都会に流れ、マニラでもスラム街があちこちに見られる。2021年のフィリピンの貧困率は18.1%(5人家族で月1万2,082ペソ=約3万1,000円)。ILOによるとフィリピンの平均年収は23万ペソ(約59万3,400円)となった。非正規労働者は多くの場合、6カ月毎で期間満了となり、新しい職を探さねばならない。正規職を希望する労働者は多いが、正規であっても問題は多い。例えば、ザンボアンガの缶詰工場では、法定禁漁期間は強制的に失業状態となる。その期間は2カ月であったが、この度期間を4カ月に延ばすということが決定された。環境問題が原因とは言え、労働者にとっては過酷である。ザンボアンガでは定職に就くことが難しいため、厳しい状況禍であっても辞める労働者はほとんどいない。
フィリピンの労働運動の特徴
マニラの最低賃金は、今年7月から非農業部門で610ペソ(約2.6円)となった。これは平均賃金と比べても相当高い。このように労働組合ALU-TUCP、NTUC Phlともに、基本は労働者の地位の経済的向上に置いている。(これに対し左派KMUなどは政治的要求が強い)企業レベルの組合リーダーが上部組織への加盟を選択する時、上部組織から何らかの見返りを受けるのが普通だという。勿論感情的なもつれから上部組織を変えることもある。例えば、NUBE(銀行職員労組=産別)からBOD労組(バンコデオロ労組=単組)が抜け、ALUに加盟した時、原因はBOD労組内の内紛であった。