アルゼンチン次期大統領の改革に労働組合が反対
11月23日のワシントン・ポスト(WP)、20日のトロント・スター(TS)などが「アルゼンチンの労働組合がミレイ次期大統領による国有・民間企業の人員整理政策への反対を強めている」と報じた。
11月19日のアルゼンチン大統領の決選投票で、親中国左派の現経済相、マッサ候補を56%対44%という予想以上の大差で勝ち抜いた親米右派野党、自由前進(LLA)のミレイ次期大統領だが「年間インフレが140%にあるアルゼンチン経済を正常に戻すには公共事業等へのラジカルな改革が必要だ。民間に任せられる事業はすべて民間に任せる。国有報道、石油・ガス、水道・鉄道、公共事業などすべてだ」と訴えている。
これに反対を強めているのが全国労働組合のアルゼンチン労働総同盟(CGT)で、ディア事務局長は「我々労働組合が目指す経済政策は生産性向上と雇用の創出だ。ミレイの民営化や予算削減ではない」と語気を強める。
反対の先頭に立つのはアルゼンチン航空のパイロット組合だが、公務員組合も「次期大統領に期待するものは何もない」と述べるなど、強硬姿勢にある。しかし多くの労働組合は警戒感を強めながらも、次期大統領の舵取りを見極める構えが強い。
これに対しミレイ次期大統領は以前から「国には金がない。6か月は我慢の時が続くだろうが、これはアルゼンチンが上昇に転じる基礎となる時期だ」と述べて、経済政策に多くの抗議活動を予期しながら「政策は断行する。脅迫に屈することはない」と断言する。
南米・カリビアン経済情報研究所も「ミレイ次期大統領は経済政策を早期に断行するだろう。各種の抗議活動は避けがたい事態だ」と指摘する。
アルゼンチンは長い歴史の中で、政府政策に反対する労働組合や社会団体などが多くのストライキや道路閉鎖などを行ったが、殆どの政府は伝統的に抗議活動の権利を尊重してきた。また反省として1976年~1983年の軍事独裁政権時代の抗議活動への弾圧で多数の女性や子供が死亡した経験からも、警察当局が実力行使を躊躇う場合が多い。
他方、ミレイ次期大統領についてTSは「ミレイ氏はテレビなどでの過激な言動で注目を集め、性教育は家族を崩壊させるマルクス主義の陰謀、さらには、人は身体器官を他人に売却する権利があると発言。また、経済政策では、アルゼンチン・ペソの米国ドルへの連動と中央銀行の廃止、労働法の緩和、経済成長のための小さな政府と半数の省庁の廃止、そしてトランプ前米国大統領を称賛している。
自身は、多数の空港を運営するアルゼンチンの大企業、コーポレーション・アメリカのチーフ・エコノミストを務め、2021年に国会議員となった。また、女性優遇政策や妊娠中絶に反対、地球温暖化への人類の責任を否定、さらには同国出身のローマ法王に対して”地上の毒物の代表”とまで酷評した」と報じている。現在、ミレイ氏率いる自由前進(LLA)は未だ少数与党である。