スターバックスの労組連合が取締役会の議席を要求
11月16日のワシントン・ポスト(WP)、21日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が「スターバックスの少数株主でもあるサービス従業員国際労働組合 (SEIU)などが結成する”戦略組織化センター(SOC)”が同社の労働者待遇に問題があるとして、2024年の同社役員改選に当たり、労働組合側の役員候補3人を擁立した」と報じた。
株主送付の委任状によると、来年役員選挙への立候補は10月25日に受付開始で11月24日が締切りだが、大株主の動向と委任状の議決に影響する委任状諮問サービス機関(事業取引についての勧告、金融機関や少数株主への企業情報の提供、株主総会委任状判断への諮問サービスを行う金融グループ)からの評価が重要となる。
過去2年間、スターバックスの9,380店舗でSEIUが支援する統一スターバックス労働組合(SWU)の下に組織化されたのは360店であるが、SWUは全国労働関係委員会(NLRB)に600件以上の苦情を提出している。
上記のSOCは2005年、SEIUなどがアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)を脱退して、新ナショナル・センターとして発足させた ” 勝利のための変革(CTW)”が姿を変えた組織だが、アップルやウーバーなどに対して取締役会議席を要求することはあったが、実際の立候補は今回が初めてとなる。これにはスターバックスの株式所有制度により、従業員の多くが株主という背景もある。
3名の立候補者はクリントン時代のエカベスト元大統領上級補佐官、経済政策専門のゴットバウム氏、オバマ時代のNLRBのリーブマン元委員長である。
スターバックスでのSWU労働組合員数は未だ少数だが、2021年にニューヨークで最初の労組を結成以来、着実に力を付けつつあり、今月16日のレッド・カップ・デイと呼ばれる同社の年次記念セール日には、各地の200労働組合5,000人が労使交渉の開催を要求して一斉にストライキを展開した。
これに対し会社は、賃金諸手当の引き上げに10億ドルを予算化し、会社規則の順守や環境整備に取締役委員会を創設すると発表、「会社指導部は株主と協力して会社の将来的価値を高めるため建設的対話に取り組んでゆく」と声明した。
今年3月に前任のハワード・シュルツ氏を引き継いだナラシマンCEOは、伝統を引き継いで各地店舗のバリスターと呼ばれる従業員との直接対話を重視しているが、SWUは結成した労働組合との労使交渉に時間を割くべきだとの要求を強めており、株主の中からも労組対策に懸念の声が出ている。
またWSJは大手2社の委任状諮問サービス機関が「1)今年3月の年次株主総会における労働権独立調査委員会設置の会社提案に賛同したこと。2)昨年、全般委任状カードの使用が認められたことで、会社推薦取締役候補も労組推薦候補も同一投票用紙に記載されることになり、どちらか一方でなく、株主が個々に選択ができることが労働グループには有利に働き、社会問題に取り組む立候補を容易にする。との諮問を行った」と報じた。
なお、上述のCTWにはAFC-CIO の新規組合員獲得努力を不満とするサービス従業員国際労組(SEIU)、全米農業労組(UFW)、チームスターズ労組、アメリカ通信労組(CWA)、全米大工友愛組合(UBC)、国際北米労働者組合(LIUNA)、全米食品商業労組(UFCW)などが加入、2009年には縫製・繊維労組・ホテル・レストラン従業員組合(UNITEHERE) の3分の1が加入した。
しかしその後、労働運動の分裂を嫌う多くの労働組合がAFL-CIOに復帰、CTWから名称を変えたSOCには現在SEIU、UFWが残留し、CWAはSOCとAFL-CIOに同時加盟している。
最近のSOCはAmazon組織化に大きな力を発揮したが、SOC投資グループは投資力を背景にAmazonやマクドナルドなどの民間企業株主を対象に労働保護の活動を強めている。