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ハリウッド俳優などの組合(SAG-AFTRA) のストライキに暫定合意

2023.11.23掲載

11月10日のニューヨーク・タイムズ(NYT)、12日のワシントン・ポスト(WP)などが「90年来最長の118日に及んだ俳優組合のストライキだが、76執行役員の86%の賛成でスタジオ側提案を受け入れることに合意、12月第1週までの組合員批准投票にかけられるが、組合員は直ちに職場復帰する」と報じた。
妥結についてSAG-AFTRA労組ドレッシャー会長は記者会見で「3年間で10億ドル以上の収入が確保された。AIの乱用からの保護、契約初年度の最低賃金の7%引き上げ、医療保険の改善、自分撮影のオーディション画像へのスタジオ側の譲歩、髪型やメークアップ・サービス改善、セクシーシーンへの取り扱い注意事項なども盛り込まれた。
交渉に勝ち得たかどうかよりも、少なくともお金を手にして、新たな収入の道を開いた。ポケットを増やしたことが大事だ」と説明した。

数十万人の俳優やスタッフを巻き込んだ俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)のストライキは5月から9月まで続いた脚本家組合のストライキと同時並行で行われたが、エンターテインメント業界を荒廃に曝して、数十万人が失業、多くが食料を求めてフード・バンクに頼り、関連の洗濯事業や各種施設、ケータリング等では再起不能の企業も出ており、経済損失は100億ドルに達するとみられる。

最後まで残された問題は実際の俳優から虚像を造り出すAIを使ったシンセティック・フェイクだったが、この点で組合側はスタジオ側から一定の譲歩を引き出し、報酬を確約させたと言われる。
NYTが紹介する或る組合役員は「例えばジュリア・ロバーツの笑顔などを、AIシステムのデジタル俳優に取り込み、代役にした場合、今までは何等の契約的ないし法的同意の必要はなかったが、これに歯止めをかけた。暫定合意は最低部分であり、一般俳優をカバーするが、ジェニファー・ローレンスやブラッド・ピットなどのスタークラスは自分自身のエージェントを通じて契約を基に権利の上積みが出来る」と語る。
しかし、AIが加速度的に進歩する現実に対応できるのかどうかの問題も残されており、労使が半年毎に会談することも約束された。

他方、ストリーミング(配信)サービスについては、当初要求の収入の2%を1%(約5億ドル)に減額したが、最終的には購読料の一部(約4千万ドル)という条件しか獲得できなかった。その代わりにスタジオ側はストリーミングの再配信についての新たなロイヤルティとして、購読者の20%以上を勝ち得た俳優にボーナスを出すとした。その上で、脚本家組合にはなかった、そのボーナスの25%を基金化して、配信サービスの少ない俳優に配分することにした。